
コラム
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症例
犬の皮膚トラブルは梅雨が原因?|自宅でできる予防とケア
じめじめとした空気が続く梅雨の季節。
この時期になると、「なんだか最近よく掻いている」「皮膚が赤くなってきたかも」といったご相談が増えてきます。
高温多湿な環境は犬の皮膚にとって大きな負担となり、皮膚トラブルのリスクを高めます。気づかないうちに症状が進行してしまうこともあるため、日頃からのケアと予防がとても大切です。
今回は、梅雨時期に増えやすい犬の皮膚トラブルについて、家庭でできる予防ケアや生活環境の整え方を解説します。
梅雨時期に犬の皮膚病が増える理由
梅雨の時期は湿度が高く、蒸し暑い日が続きます。このような高温多湿の環境は、犬にとって過ごしにくく、皮膚トラブルが起こりやすくなる原因のひとつです。
特に、脇の下や股、耳の後ろ、首まわりといった湿気がこもりやすい部位では、皮膚のバリア機能が低下し、細菌やマラセチア(カビの一種)が繁殖しやすくなるため、皮膚炎などの症状を引き起こすリスクが高まります。
実際に当院でも、梅雨の時期になると皮膚に関するご相談が増加します。
かゆみや赤みといった軽い症状にとどまらず、膿が出ていたり、広い範囲で毛が抜けたりするケースも見られます。
代表的な皮膚病としては、以下のようなものが挙げられます。
・皮膚真菌症(マラセチア性皮膚炎など)
・細菌性皮膚炎
・膿皮症
これらの皮膚病は放置すると悪化しやすく、再発もしやすいため、早めの対処と継続的な予防が大切です。
梅雨時期に注意したい犬の皮膚病の症状と見分け方
飼い主様がご自宅で気づきやすい初期症状としては、以下のようなものがあります。
・体を頻繁に掻く、舐める、噛む
・皮膚が赤くなっている、あるいは腫れている
・特定の部位に脱毛が見られる
・フケが増える
・皮膚がベタつく、においが強くなる
・かさぶたができている、またはジュクジュクした部分がある
これらの症状は皮膚病の初期段階で見られることが多く、放置すると悪化する可能性があります。
特に、短期間で急激に症状が悪化している場合や、触れられるのを嫌がるなど痛がる様子が見られる場合は、速やかに動物病院を受診してください。
また、犬種によってはもともと皮膚トラブルを起こしやすい傾向があり、梅雨時期は特に注意が必要です。代表的な犬種には以下のようなタイプがあります。
・ポメラニアンやゴールデンレトリバーなどの長毛種
・パグやブルドッグなど皮膚にしわが多い犬種
・アレルギー体質の犬
このような犬種は、皮膚が蒸れやすく、細菌や真菌が繁殖しやすい環境になりやすいため、日頃から丁寧なケアが欠かせません。
梅雨時期の皮膚病予防
梅雨の時期に皮膚トラブルを防ぐためには、日常的なケアが非常に重要です。次のようなケアを意識して取り入れましょう。
◆散歩後のケア
雨の日の散歩後は、足先だけでなく、お腹や股、脇の下などの見落としがちな部分もタオルでしっかり拭き取りましょう。湿った状態が続くと雑菌が繁殖しやすくなり、皮膚トラブルの原因になります。
◆ブラッシング
ブラッシングは、被毛の通気性を保つうえで大切なケアです。さらに、皮膚の異常にも早く気づくことができるため、毎日の習慣として取り入れるのがおすすめです。
◆シャンプー
適切なシャンプーの頻度は犬種や皮膚の状態によって異なりますが、梅雨時期は特に汚れが付きやすいため、2〜3週間に1回を目安に行うとよいでしょう。皮膚の乾燥を防ぐために、低刺激で保湿効果のあるシャンプーを選ぶことが大切です。
※シャンプーの頻度については、かかりつけの動物病院でご相談ください。
◆獣医師推奨のケア用品を使用する
当院では、皮膚トラブルの予防として、薬用シャンプーや保湿スプレーの使用を推奨しています。製品によって成分や効果が異なるため、愛犬の状態に合ったものを選ぶことが重要です。気になる場合は、お気軽にご相談ください。
室内環境の整え方
皮膚病を予防するためには、体のケアだけでなく、生活環境を清潔に保つことも非常に重要です。特に梅雨の時期は、湿気によるカビやダニの繁殖が起こりやすくなるため、以下の点に注意して室内環境を整えましょう。
◆湿度管理
快適に過ごすためには、湿度の調整もとても大切です。
特に梅雨や夏場は湿度が高くなりがちですので、除湿器やエアコンの除湿機能を活用し、室内の湿度を40〜50%程度に保つように心がけましょう。
◆寝床やマットの管理
布製のベッドやマットは湿気がこもりやすく、雑菌やダニの温床となることがあります。通気性の良い素材を選ぶとともに、カバー類はこまめに洗濯・乾燥を行い、清潔な状態を保つようにしましょう。
◆清掃と換気
室内を清潔に保つことは、皮膚病を防ぐための基本です。
床は拭き掃除を取り入れて清潔を保ち、掃除機や空気清浄機を使用する際は、HEPAフィルター付きの製品を選ぶと、より効果的にハウスダストやアレルゲンを取り除くことができます。合わせて、定期的な換気も忘れずに行いましょう。
食事とサプリメントによる皮膚の健康維持
皮膚の健康を保つためには、外側からのケアだけでなく、体の内側からのサポートも非常に大切です。特に、湿度が高く皮膚のバリア機能が乱れやすい梅雨の時期には、日頃の食生活が皮膚の状態に大きく影響します。
まず注目したいのが、「オメガ3脂肪酸」「ビタミンE」「亜鉛」といった栄養素です。これらは皮膚や被毛の健康維持に欠かせない成分であり、日々の食事を通してしっかり摂取することが推奨されます。中でもオメガ3脂肪酸には抗炎症作用があり、皮膚の赤みやかゆみを和らげる働きが期待できます。
当院では、こうした栄養素を効率よく補える皮膚サポート用のサプリメントをご案内しています。たとえば、皮膚にやさしい設計のオメガ脂肪酸配合サプリメントや、消化吸収に優れた低アレルゲン処方のフード・おやつなどを、愛犬の体質や症状に合わせてご提案しております。
また、見落とされやすいポイントとして、食事アレルギーが皮膚トラブルの原因となる場合もあります。特に、新しいフードに切り替えた直後から皮膚の赤みやかゆみ、脱毛などの症状が見られた場合は、食物アレルギーが関係している可能性があります。
そのような場合には、アレルギーに配慮した療法食への切り替えや、必要に応じて食物アレルギー検査を行うことで、原因を明確にし、適切な対応につなげていくことが大切です。
治療法
万が一、皮膚病を発症してしまった場合でも、適切な治療を行うことで多くのケースで改善が期待できます。
治療方法は皮膚の状態や原因によって異なりますが、主に以下のような手段が用いられます。
◆薬浴
薬用シャンプーを使って皮膚を洗浄し、皮膚表面の汚れや余分な皮脂を取り除きます。皮膚を清潔に保つことで、治療効果を高めることが期待できます。
◆飲み薬・塗り薬
抗生物質や抗真菌薬を用いて原因となる細菌や真菌(カビ)の増殖を抑えます。さらに、抗炎症薬や外用薬、保湿剤などを症状に応じて組み合わせて使用します。
<治療期間>
症状の程度によって異なりますが、一般的には数週間から1ヶ月程度が目安となります。ただし、皮膚病の治療は改善が見られてもすぐに中断せず、獣医師の指示に従い、完治まで根気強く続けることが非常に大切です。
なお、皮膚病は再発しやすい傾向があるため、治療後も日常的な予防ケアや定期的な健康チェックを欠かさないようにしましょう。
まとめ
梅雨は高温多湿の環境により、皮膚トラブルが起こりやすい季節です。細菌やカビの繁殖を防ぐためには、早めの対策が欠かせません。
日々のスキンチェックや湿度管理、正しいケアを続けることで、多くのトラブルを防ぐことができます。
当院では、皮膚病の診察・検査はもちろん、日常ケアやサプリメント選びのご相談にも対応しております。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
■皮膚トラブルに関連する記事はこちらです
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夏の危険症状「犬の水中毒」を防ぐ!|安全な水遊びと正しい水分補給法
水遊びは夏の楽しみのひとつ。川や海、プールで愛犬と涼を楽しむ光景も多く見られます。
ところが、楽しいはずのその時間が、体調不良の引き金になることがあるのをご存じでしょうか? その代表例が「水中毒」と呼ばれる症状です。
水分補給は大切ですが、摂りすぎると命に関わることもあります。
一方で、水分が足りないと「脱水」につながり、体温調節がうまくいかず、熱中症のリスクが高まります。
つまり、「水分が足りなくても危険」「摂りすぎても危険」。このバランスをうまく保つことが、夏の健康管理では非常に重要です。
この記事では、あまり知られていない「犬の水中毒」について詳しく解説するとともに、正しい水分補給の方法や、安全に水遊びを楽しむための工夫についてご紹介します。
犬の水中毒とは?
水中毒とは、短時間に大量の水を摂取することで体内の電解質バランス(特に血液中のナトリウム濃度)が大きく低下した状態を指します。
その結果、細胞の中に水分が過剰に取り込まれ、特に脳の細胞に影響が及ぶと、神経症状や命に関わる合併症を引き起こすことがあります。
この症状は、プールや川、海などで長時間遊ぶ中で、犬が無意識に水を飲み込み続けてしまうことや、暑さによって水をがぶ飲みしてしまうことなどが原因となります。
特に、ホースの水を追いかけるような遊びが好きな犬や、興奮しやすい若い犬では、リスクが高くなる傾向があります。
水中毒は見た目で判断しづらく、初期症状が軽い違和感程度にとどまることもあるため、飼い主様が小さな変化に気づくことが、予防や早期対応の鍵になります。
また、水中毒は熱中症とは異なる症状です。
熱中症は体温の上昇や脱水が主な原因であるのに対し、水中毒は水を摂りすぎることで体内の塩分濃度が薄まることが原因となります。
▼熱中症についてはこちらで詳しく解説しています
水中毒の主な症状と発症するケース
水中毒の初期には、以下のような症状が見られることがあります。
・よだれが増える
・歩き方がふらつく
・嘔吐
・無気力でぼんやりとした表情になる
・呼びかけに対する反応が鈍くなる
これらの症状が進行すると、以下のような重い症状へと発展することがあります。
・筋肉のけいれん
・意識がもうろうとする
・昏睡状態になる
いずれも、命に関わる危険な状態です。
<発症しやすい場面>
発症しやすい場面としては、以下のようなケースが挙げられます。
・炎天下で長時間、水辺(川・海・プール)で遊ぶ
・水中に投げたおもちゃやボールを繰り返し回収させる
・ホースの水やスプリンクラーの水を勢いよく飲む
・暑さ対策として、水を過剰に飲ませてしまう
これらはいずれも「楽しい時間」の中で起こりやすく、まさか危険が潜んでいるとは思いにくい点が、水中毒の怖さでもあります。
水中毒を予防するための対策
水中毒を防ぐためには、日頃の工夫や遊び方の見直しが大切です。以下のような対策を意識しましょう。
◆遊びの時間を区切る
水遊びは1回あたり30分を目安にし、こまめに休憩を取りましょう。
◆水を飲む量をコントロールする
遊びの合間に意識的に休憩を挟み、落ち着いた状態で水を飲ませるようにしましょう。無意識に大量の水を飲んでしまうのを防げます。
◆陸上での遊びも取り入れる
いつも水遊びばかりにならないように、陸上での遊びや知育トイなど、頭を使う遊びも取り入れるとよいでしょう。
◆安全な遊び場所を選ぶ
水の深さが浅く、流れが緩やかな場所を選び、飼い主様が常に見守れる環境で遊ばせましょう。
◆普段から飲み方を見直す
水をがぶ飲みしやすい犬には、少量ずつゆっくり飲む練習を日頃から行っておくと、急激な水の摂取を防ぐことにつながります。
犬の体に必要な水分量と与え方
水分補給は、水中毒を防ぐためにも重要なポイントです。水の摂りすぎを避けながら、適切な水分をしっかりと補うことが、健康管理の基本となります。
以下のポイントを意識しましょう。
◆1日に必要な水分量の目安
一般的には、体重1kgあたり約50〜60mlが目安です。たとえば、体重10kgの犬であれば、1日あたり約500〜600mlの水分が必要とされます。
◆季節や活動量による調整
夏場や運動量が多い日には、通常より1.2〜1.5倍程度の水分が必要になることもあります。愛犬の様子を見ながら、飲水量を少しずつ調整していきましょう。
◆水を与えるタイミングを工夫する
朝の散歩前後、食後、寝る前など、決まった時間にこまめな水分補給を習慣化すると、飲みすぎや飲み忘れを防ぐことができます。
◆補助的な水分補給方法を活用する
水分が不足しがちなときは、ウェットフード、犬用経口補水液、ゼリー飲料などを取り入れるのも効果的です。愛犬の好みや体調に合わせて活用しましょう。
◆水の管理を徹底する
水は常に清潔な状態で用意しましょう。ボウルは毎日洗い、複数の場所に設置することで、自然と水を飲む機会が増えます。
こんなときはすぐ受診を!対処のポイントと判断基準
「なんとなく様子がおかしいかも?」と感じたときは、迷わず早めに対応することが大切です。以下のような対処を行い、すぐに動物病院にご連絡ください。
<すぐに受診が必要なサイン>
以下のような症状が見られた場合は、一刻も早く動物病院を受診してください。
✅けいれんを起こしている
✅意識がもうろうとしている
✅呼吸が荒く苦しそう
✅呼びかけに反応しない
<応急処置>
まずは水を飲むのを中止させ、安静に保ちます。
体が濡れている場合はタオルなどでしっかり拭き取り、体温が下がりすぎないように注意しましょう。
<症状の観察と記録>
ふらつき・嘔吐・けいれんなどの症状が出ていないかを落ち着いて確認しましょう。
動物病院での診察をスムーズに進めるために、以下のような情報をできるだけ詳しくメモしておくと安心です。
・水遊びをした時間や場所、遊びの内容
・飲んだ水の量やタイミング
・気づいた症状とその経過
・これまでの体調や持病の有無
小さな情報でも、獣医師にとっては重要な手がかりになります。思い出せる範囲で記録しておきましょう。
まとめ
季節を問わず、水分管理は愛犬の健康を守るうえでとても大切ですが、水の摂り方や量を間違えると、命に関わる事態を招くこともあります。
特に夏は「水中毒」と「脱水症状」という、相反するリスクの両方に注意が必要です。
「水分は多すぎても、少なすぎてもいけない」ということを、ぜひ心に留めておいてください。
愛犬の体調の変化にいち早く気づけるのは、いつもそばにいる飼い主様だけです。
「なんとなくいつもと違うかも」と感じたときには、迷わず早めに動物病院にご相談ください。
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犬と猫の熱中症を防ぐ|家庭でできる温度管理と応急処置のポイント
近年の日本の夏はもはや「猛暑」を通り越して、「命に関わる危険な暑さ」と言われるようになっています。
人にとってさえ厳しいこの暑さは、犬や猫にとってさらに過酷な環境です。
電気代を気にしてエアコンを止めてしまったり、「自分で涼しい場所へ移動できるから大丈夫」と油断してしまったりすることで、わずか数時間のうちに熱中症になり、命の危険が生じることもあります。
そこで今回は、犬や猫が熱中症になりやすい理由と、室温を適切に保つことでリスクをどのように減らせるのかについてご紹介します。
なぜ犬や猫は熱中症になりやすいの?
犬や猫は、人のように汗をかいて体温を下げることができません。
人は全身の汗腺から汗を出し、気化熱によって体を冷やすことができますが、犬の汗腺は足の裏に限られており、主に「ハァハァ」と口で息をする(パンティング)ことで体温調整を行っています。
ただし、このパンティングには限界があり、気温や湿度が高い環境では熱をうまく逃がすことができず、体温が急激に上がってしまいます。
特に、以下のような犬や猫は熱中症のリスクが高くなります。
・短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、シーズーなど)
気道が狭く、呼吸による体温調整がしにくい傾向があります。
・シニア(高齢)
体温調整機能が低下しており、体に熱がこもりやすくなります。
・肥満傾向がある
皮下脂肪が断熱材のように働き、体内の熱が逃げにくくなります。
・心臓や呼吸器に持病がある
もともと負担の大きい状態にあるため、熱の影響を受けやすくなります。
室内でも安心できない?|家の中に潜む熱中症の危険
「外に出なければ安全」「室内は涼しいから大丈夫」
そんなふうに思ってしまいがちですが、実は熱中症は室内でも頻繁に発生しています。
たとえば、次のような状況に心当たりはないでしょうか?
・東向き・南向きの窓から日差しが強く差し込んでいる
・エアコンを使っているものの、設定温度が高すぎる(28℃以上)
・換気が不十分で、部屋の空気がこもっている
・フローリングが熱を持ち、床にいる犬や猫の体温が上昇してしまう
・留守中にエアコンが停止していた(ブレーカーが落ちた、タイマーが切れた、停電など)
特に留守番中は飼い主様が異変にすぐ気づけないため、熱中症のリスクが高くなります。
毎日の暮らしの中でできる熱中症予防のポイント
では、実際にどのように室内環境を整えれば、愛犬・愛猫を熱中症から守ることができるのでしょうか?
ここでは、室温・湿度の目安から、エアコンの使い方、留守番時の工夫、水分補給やお散歩の注意点まで、具体的な対策をご紹介します。
◆快適な室温と湿度の目安
犬や猫にとって快適な環境は、室温:24〜26℃前後、湿度:40〜60%です。
人が「少し涼しいかな」と感じる程度が、犬や猫にはちょうどよい温度といえます。
◆エアコンはどう使う?
外出中もエアコンは切らず、タイマーは使わずに常時稼働させるのが基本です。
風が直接当たらないよう風向きを調整し、冷房がしっかり効いているかどうかを出かける前に確認しましょう。
また、外出前にはフィルターの掃除や動作確認を行い、冷房がきちんと作動しているかなど、事前の確認をしておくとより安心です。
◆エアコン以外にもできる涼しさ対策
エアコンに加えて、室内の環境をより快適に保つための工夫も大切です。
たとえば、直射日光が入る窓には遮光カーテンやすだれを活用して、室温の上昇を防ぎましょう。空気がこもらないように、扇風機を併用して空気を循環させるのも効果的です。
また、床で過ごす時間が長い犬や猫のために、冷却マットや通気性の良いベッドを用意すると、体温の上昇を防ぐのに役立ちます。
◆こまめな水分補給をしやすくする工夫
脱水を防ぐために水分補給の環境も整えておきましょう。
新鮮な飲み水はいつでも飲めるようにしておき、複数の場所に置いておくのがおすすめです。水をあまり飲まない場合は、ぬるめの水に変えるなどの工夫をすると飲みやすくなることがあります。
また、「流れる水」を好む猫には、循環式の自動給水器を使うのもおすすめです。
◆お散歩は「暑くないとき」が基本です
夏場のお散歩は、気温や地面の熱の影響を受けやすいため注意が必要です。
特にアスファルトは非常に高温になり、犬の肉球をやけどさせてしまうこともあります。
外の暑さがやわらぎ、地面も熱くなっていない時間帯を選んで出かけるようにしましょう。
熱中症のサインと応急処置
どれだけ注意していても、突然の気温上昇や体調の変化により、犬や猫が熱中症を起こしてしまうことがあります。
そのとき、いち早く異変に気づき、適切に対応できるかどうかが命を守るカギとなります。
以下のようなサインが見られたら、熱中症を疑いましょう。
・激しくハァハァと呼吸をしている(パンティングが止まらない)
・よだれの量が増える
・落ち着きがなくウロウロする
・元気がなく、ぐったりして動かない
・嘔吐や下痢、ふらつきがある
このような症状が見られたら、すぐに冷房の効いた室内に移動させ、体をゆっくりと冷やしましょう。
脇の下や内股などの部分に濡れタオルを当てて冷やすのが効果的です。
氷水を直接かけるのは逆効果になることがあるため、急激な冷却は避けてください。
また、意識がはっきりしていて飲水できる場合は、常温の水を少量ずつ与えるようにします。
ただし、これらの対処はあくまで応急処置にすぎません。
見た目には落ち着いたように見えても、内臓にダメージを受けている可能性があるため、必ず動物病院で診察を受けましょう。
当院では、熱中症をはじめとする急な体調不良にも対応できるよう、診療時間外の緊急連絡体制を整えております。
お電話でのご相談や来院の判断に迷う際も、ご遠慮なくご連絡ください。
まとめ
夏の暑さは年々厳しさを増しており、熱中症は決して特別なことではなく、どのご家庭でも起こりうる身近なリスクです。
しかし、「正しい知識」と「適切な環境づくり」、そして「日頃のちょっとした気づき」があれば、防ぐことのできる病気でもあります。
この夏も、愛犬・愛猫が涼しく快適に過ごせるように、できることから無理なく始めてみましょう。
そして、少しでも不安なことや気になる変化があれば、お気軽に当院までご相談ください。
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犬や猫の「肛門腺絞り」は本当に必要?|その理由と注意点【獣医師が解説】
「最近、うちの子がよくお尻を床にこすりつけている」「肛門のあたりをしきりに舐めていて、なんだかにおいも気になる」
もしかすると肛門腺のトラブルが原因かもしれません。
そのまま放置すると炎症を起こすだけでなく、細菌感染によって「膿瘍(のうよう)」と呼ばれる膿の溜まった腫れに進行することもあるため注意が必要です。
今回は、肛門腺の意外な役割や肛門腺絞りが必要になるタイミング、そして見逃してはいけない注意サインについて解説します。
肛門腺とは?|その働きと気をつけたいトラブル
犬や猫の「肛門腺(こうもんせん)」とは、お尻の左右(時計の文字盤でいうと4時と8時の位置)にある分泌腺のことを指します。
肛門のすぐ内側には、「肛門嚢(こうもんのう)」という小さな袋状の器官があり、そこに強いにおいを持つ分泌液が溜まります。
この分泌液には、それぞれの動物が持つ特有のにおいが含まれており、もともとは縄張りを主張したり、自分の存在を他の動物に知らせたりするための大切な「においのサイン」として使われてきました。
注意したい肛門腺のトラブル
現代の家庭で暮らす犬や猫たちは、自然界に比べて運動量が少なかったり、排便の刺激が十分でなかったりすることで、分泌液がうまく排出されなくなることがあります。
すると、肛門腺の中に液がどんどん溜まり、以下のようなトラブルにつながります。
・肛門腺うっ滞(分泌液が溜まって詰まりやすくなる状態)
・肛門腺炎(溜まった液に細菌が入り、炎症を起こす)
・肛門腺膿瘍(のうよう)(腫れて膿が溜まり、破裂することもある)
このような状態になるとお尻に強い違和感や痛みを感じ、排便を嫌がったり、元気がなくなったり、食欲が落ちてしまうこともあります。
ただし、肛門腺のトラブルはすべての犬や猫に起こるわけではありません。まったく問題なく過ごせる場合もあれば、何度も肛門腺が詰まりやすい体質の犬や猫もいます。
とくに注意が必要なのは、小型犬(チワワ、トイプードル、パピヨンなど)や、肥満傾向のある犬猫、高齢の犬や猫です。
こうした傾向が見られる場合は、日頃からお尻の様子や排便後のしぐさをよく観察し、少しでも異変を感じたら、早めに対処してあげましょう。
肛門腺絞りは必要?|タイミングと気をつけたいサイン
すべての犬や猫に「肛門腺絞り」が必要かというと、必ずしもそうではありません。
排便の際にしっかりと肛門腺液が自然に排出できている場合は、無理に絞る必要はありませんし、過剰な肛門腺絞りはかえって皮膚に炎症を起こしてしまうこともあります。
肛門腺絞りが必要かどうかを判断するためには、以下のような行動やサインをチェックしてみてください。
・お尻を床にこすりつける
・肛門のあたりをしきりに舐めたり、噛んだりする
・お尻が気になる様子で、落ち着かない
・肛門の周囲から独特なにおいがする
・座るときに違和感を示す(斜めに座る、頻繁に立ち上がる など)
こうした様子が頻繁に見られる場合は、肛門腺液が溜まっている可能性がありますので、早めに動物病院に相談しましょう。
動物病院での肛門腺ケア
ご自宅で肛門腺絞りに挑戦される飼い主様もいらっしゃいますが、力加減や方向を誤ると肛門腺を傷つけることや、炎症を引き起こす原因になることがあります。初めての場合や不安がある場合は、動物病院で処置してもらうのが安心です。
また、トリミングの際に肛門腺絞りもお願いしているという飼い主様も多いかもしれません。日常のケアとしてトリマーに任せる方法もありますが、腫れやしこりなどの異常が見られる場合には獣医師による診察が必要です。
動物病院での肛門腺処置では、単に分泌液を出すだけでなく、腫れや痛み、しこり、出血の有無などを獣医師が丁寧に確認します。
とくに、肛門腺の中にしこりが見つかった場合、腫瘍(肛門周囲腺腫や肛門嚢アポクリン腺癌など)が隠れている可能性もあるため、視診と触診での見極めがとても重要です。
さらに、肛門腺の出口が詰まっている場合や感染を起こしている場合は、通常の方法では膿が排出されないこともあります。そのようなときは、抗生剤による治療や、膿瘍の切開・洗浄といった処置が必要になるケースもあります。
このように、肛門腺のトラブルを繰り返す体質の犬や猫や、肛門腺絞りをしてもすぐに再び溜まってしまうような場合には、月に1回程度の定期通院をおすすめしています。
ご家庭での肛門腺ケアに不安がある場合は、いつでも当院へご相談ください。
肛門腺トラブルを防ぐために|毎日のケアでできること
肛門腺の健康を保つには、日常生活の中でのちょっとした心がけが大切です。
まず注目したいのは「便の質」。
適度に硬さのある便は排便時に肛門腺の出口を自然に刺激し、中に溜まった分泌液を押し出す助けになります。そのため、食物繊維を適度に含んだバランスの良い食事は、肛門腺の自然な排出を促すうえでとても効果的です。
また、日頃の運動も欠かせません。
肥満は肛門腺トラブルの大きな原因のひとつです。運動不足になると便が柔らかくなりやすく、排泄力も落ちてしまうため、適度な運動で体重を管理することが大切です。
さらに、定期的な獣医師によるチェックも予防には欠かせません。
見た目ではわからない炎症や腫れが進行していることもあるため、ワクチン接種や健康診断の際に、肛門腺の状態も一緒に確認してもらうと安心です。
ご家庭でのケアと動物病院でのチェックをうまく組み合わせて、愛犬・愛猫の肛門腺トラブルをしっかり予防していきましょう。
まとめ
肛門腺は、普段あまり意識することのない小さな器官かもしれませんが、犬や猫の健康と快適な暮らしにとって実はとても大切な部分です。
分泌液が溜まりすぎると不快感や痛みだけでなく、炎症や感染などのトラブルにつながることもありますが、適切なタイミングでのケアや食事・運動といった日常の心がけによって、トラブルは予防することができます。
当院では、肛門腺に関するご相談にも対応しており、それぞれの体質や暮らしに合わせたケアをご案内しています。
「少し気になるかも」と感じた際には、お気軽にご相談ください。
千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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