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夏の危険症状「犬の水中毒」を防ぐ!|安全な水遊びと正しい水分補給法

症例

水遊びは夏の楽しみのひとつ。川や海、プールで愛犬と涼を楽しむ光景も多く見られます。

ところが、楽しいはずのその時間が、体調不良の引き金になることがあるのをご存じでしょうか? その代表例が「水中毒」と呼ばれる症状です。

 

水分補給は大切ですが、摂りすぎると命に関わることもあります。

一方で、水分が足りないと「脱水」につながり、体温調節がうまくいかず、熱中症のリスクが高まります。

つまり、「水分が足りなくても危険」「摂りすぎても危険」。このバランスをうまく保つことが、夏の健康管理では非常に重要です。

 

この記事では、あまり知られていない「犬の水中毒」について詳しく解説するとともに、正しい水分補給の方法や、安全に水遊びを楽しむための工夫についてご紹介します。

犬の水中毒とは?

水中毒とは、短時間に大量の水を摂取することで体内の電解質バランス(特に血液中のナトリウム濃度)が大きく低下した状態を指します。

その結果、細胞の中に水分が過剰に取り込まれ、特に脳の細胞に影響が及ぶと、神経症状や命に関わる合併症を引き起こすことがあります。

 

この症状は、プールや川、海などで長時間遊ぶ中で、犬が無意識に水を飲み込み続けてしまうことや、暑さによって水をがぶ飲みしてしまうことなどが原因となります。

特に、ホースの水を追いかけるような遊びが好きな犬や、興奮しやすい若い犬では、リスクが高くなる傾向があります。

 

水中毒は見た目で判断しづらく、初期症状が軽い違和感程度にとどまることもあるため、飼い主様が小さな変化に気づくことが、予防や早期対応の鍵になります。

 

また、水中毒は熱中症とは異なる症状です。

熱中症は体温の上昇や脱水が主な原因であるのに対し、水中毒は水を摂りすぎることで体内の塩分濃度が薄まることが原因となります。

 

▼熱中症についてはこちらで詳しく解説しています

 

水中毒の主な症状と発症するケース

水中毒の初期には、以下のような症状が見られることがあります。

 

・よだれが増える

・歩き方がふらつく

・嘔吐

・無気力でぼんやりとした表情になる

・呼びかけに対する反応が鈍くなる

 

これらの症状が進行すると、以下のような重い症状へと発展することがあります。

 

筋肉のけいれん

意識がもうろうとする

昏睡状態になる

 

いずれも、命に関わる危険な状態です。

 

<発症しやすい場面>

発症しやすい場面としては、以下のようなケースが挙げられます。

 

・炎天下で長時間、水辺(川・海・プール)で遊ぶ

・水中に投げたおもちゃやボールを繰り返し回収させる

・ホースの水やスプリンクラーの水を勢いよく飲む

・暑さ対策として、水を過剰に飲ませてしまう

 

これらはいずれも「楽しい時間」の中で起こりやすく、まさか危険が潜んでいるとは思いにくい点が、水中毒の怖さでもあります。

 

水中毒を予防するための対策

水中毒を防ぐためには、日頃の工夫や遊び方の見直しが大切です。以下のような対策を意識しましょう。

 

遊びの時間を区切る

水遊びは1回あたり30分を目安にし、こまめに休憩を取りましょう。

 

水を飲む量をコントロールする

遊びの合間に意識的に休憩を挟み、落ち着いた状態で水を飲ませるようにしましょう。無意識に大量の水を飲んでしまうのを防げます。

 

陸上での遊びも取り入れる

いつも水遊びばかりにならないように、陸上での遊びや知育トイなど、頭を使う遊びも取り入れるとよいでしょう。

 

安全な遊び場所を選ぶ

水の深さが浅く、流れが緩やかな場所を選び、飼い主様が常に見守れる環境で遊ばせましょう。

 

普段から飲み方を見直す

水をがぶ飲みしやすい犬には、少量ずつゆっくり飲む練習を日頃から行っておくと、急激な水の摂取を防ぐことにつながります。

 

犬の体に必要な水分量と与え方

水分補給は、水中毒を防ぐためにも重要なポイントです。水の摂りすぎを避けながら、適切な水分をしっかりと補うことが、健康管理の基本となります。

以下のポイントを意識しましょう。

 

1日に必要な水分量の目安

一般的には、体重1kgあたり約50〜60mlが目安です。たとえば、体重10kgの犬であれば、1日あたり約500〜600mlの水分が必要とされます。

 

季節や活動量による調整

夏場や運動量が多い日には、通常より1.2〜1.5倍程度の水分が必要になることもあります。愛犬の様子を見ながら、飲水量を少しずつ調整していきましょう。

 

水を与えるタイミングを工夫する

朝の散歩前後、食後、寝る前など、決まった時間にこまめな水分補給を習慣化すると、飲みすぎや飲み忘れを防ぐことができます。

 

補助的な水分補給方法を活用する

水分が不足しがちなときは、ウェットフード、犬用経口補水液、ゼリー飲料などを取り入れるのも効果的です。愛犬の好みや体調に合わせて活用しましょう。

 

水の管理を徹底する

水は常に清潔な状態で用意しましょう。ボウルは毎日洗い、複数の場所に設置することで、自然と水を飲む機会が増えます。

 

こんなときはすぐ受診を!対処のポイントと判断基準

「なんとなく様子がおかしいかも?」と感じたときは、迷わず早めに対応することが大切です。以下のような対処を行い、すぐに動物病院にご連絡ください。

 

<すぐに受診が必要なサイン>

以下のような症状が見られた場合は、一刻も早く動物病院を受診してください。

 

✅けいれんを起こしている

✅意識がもうろうとしている

✅呼吸が荒く苦しそう

✅呼びかけに反応しない

 

<応急処置>

まずは水を飲むのを中止させ、安静に保ちます

体が濡れている場合はタオルなどでしっかり拭き取り、体温が下がりすぎないように注意しましょう。

 

<症状の観察と記録>

ふらつき・嘔吐・けいれんなどの症状が出ていないかを落ち着いて確認しましょう。

動物病院での診察をスムーズに進めるために、以下のような情報をできるだけ詳しくメモしておくと安心です。

 

・水遊びをした時間や場所、遊びの内容

・飲んだ水の量やタイミング

・気づいた症状とその経過

・これまでの体調や持病の有無

 

小さな情報でも、獣医師にとっては重要な手がかりになります。思い出せる範囲で記録しておきましょう。

 

まとめ

季節を問わず、水分管理は愛犬の健康を守るうえでとても大切ですが、水の摂り方や量を間違えると、命に関わる事態を招くこともあります。

特に夏は「水中毒」と「脱水症状」という、相反するリスクの両方に注意が必要です。

「水分は多すぎても、少なすぎてもいけない」ということを、ぜひ心に留めておいてください。

 

愛犬の体調の変化にいち早く気づけるのは、いつもそばにいる飼い主様だけです。

「なんとなくいつもと違うかも」と感じたときには、迷わず早めに動物病院にご相談ください。

 

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