コラム
犬や猫の口臭に隠された理由と対策|歯周病以外の病気にも注意!
「最近、口のニオイが気になる」「前から少し臭っている気がする」——愛犬・愛猫の口臭について、気になりつつも様子を見てしまっていませんか?
口臭は、単なる体質や一時的なものと思われがちですが、お口の中のトラブルだけでなく、体の不調を知らせるサインとして現れることもあります。特に、以前と比べてニオイが強くなった場合や、独特なニオイが続く場合は注意が必要です。
今回は、犬や猫の口臭について、よくある原因から歯以外の病気の可能性、自宅でできるチェックポイントまでを整理して解説します。
口臭のよくある原因|もっとも多いのは歯周病
犬や猫の口臭でもっとも多い原因は歯周病です。歯の表面に付着した歯垢や歯石には多くの細菌が含まれており、これが増えることで歯ぐきに炎症が起こり、強いニオイの原因になります。特に、犬歯や奥歯は食べかすが溜まりやすく、注意が必要な部位です。
歯周病が進行すると、次のような変化が現れやすくなります。
・歯肉炎・歯周炎による強い口臭
・「魚臭い」「生ゴミのようなニオイ」と感じる口臭
・歯ぐきの腫れや出血
▼犬や猫の歯周病についてはこちらで詳しく解説しています
また、歯周病以外にも、口内炎、歯の破折、乳歯遺残などの口腔内トラブルが原因となり、口臭が強くなるケースもあります。
▼猫の口内炎についてはこちらで詳しく解説しています
▼犬や猫の乳歯遺残についてはこちらで詳しく解説しています
歯以外が原因の場合も|病気が隠れている可能性
口臭というと歯や歯ぐきの問題を思い浮かべがちですが、お口の状態に大きな異常が見られない場合でも、体の内側の不調が影響していることがあります。
代表的な例として、次のようなケースが挙げられます。
◆消化器疾患(胃腸のトラブル)
胃の不調や吐き気、逆流があると、胃の内容物の影響で酸っぱいようなニオイを感じることがあります。
▼犬や猫の腸活についてはこちらで詳しく解説しています
◆腎臓病
老廃物をうまく排出できなくなることで体内にアンモニア成分が蓄積し、ツンと鼻をつくようなニオイが口から感じられることがあります。
▼犬の慢性腎臓病についてはこちらで詳しく解説しています
◆糖尿病
体内でエネルギーがうまく使えない状態が続くと、甘いような独特のニオイ(ケトン臭)を発することがあります。
▼猫の糖尿病についてはこちらで詳しく解説しています
◆口腔内腫瘍
腫瘍によって組織が傷んだり、壊死が起こったりすると、強く不快なニオイが生じる場合があります。
▼犬や猫の口腔内腫瘍についてはこちらで詳しく解説しています
◆アレルギー性皮膚炎や口まわりの炎症
よだれが増え、口の周囲が湿った状態が続くことで雑菌が繁殖し、口臭が強まることがあります。
▼犬のアレルギー性皮膚炎についてはこちらで詳しく解説しています
口臭は、毎日一緒に過ごしているからこそ「こんなものかな」と見過ごしてしまうことも少なくありません。ですが、検査をしてみると病気が見つかるケースもあるため、気になる変化がある場合は、一度動物病院で原因を確認してみると安心です。
自宅でチェックできるポイント|受診のタイミングを判断する材料に
口臭が気になるとき「すぐ病院に行くべきか」「もう少し様子を見てもいいのか」と迷われる飼い主様も多いかと思います。そんなときは、日常の中で確認できるポイントをいくつかチェックしてみましょう。
<チェックしたいポイント>
次のような変化が見られる場合は、お口の中や体調に何らかのトラブルが起きている可能性があります。
・歯ぐきが赤くなっている、出血している
・歯がぐらついている
・口を触られるのを嫌がるようになった
・よだれが増えた、口の周りを気にするしぐさが増えた
・片側だけで噛む、硬いフードを嫌がるようになった
・体重減少や飲水量の変化、嘔吐など、口まわり以外の症状がみられる
<受診を考える目安>
口臭の感じ方には個体差がありますが、次の様子がみられる場合は、早めに動物病院に相談することをおすすめします。
・口臭が1週間以上続いている
・急にニオイが強くなった
・魚臭い・ドブ臭いと感じるような変化がある
「これくらいで受診していいのかな」と感じるような小さな変化でも、早めに確認しておくことで、重症化を防げることも少なくありません。
治療・対策|原因に応じたケアが大切
口臭への対応では、まず原因を正しく把握することが重要です。診察や必要な検査を通して原因を見極め、その結果に応じた治療やケアを行っていきます。
◆歯周病が原因の場合
歯石除去(スケーリング)を行い、状態によっては抜歯が必要になることもあります。処置後は、ご家庭での口腔ケアを続けながら、お口の環境を整えていきます。
▼犬や猫のスケーリングについてはこちらで詳しく解説しています
◆全身疾患が関係している場合
腎臓病や消化器疾患、糖尿病などが背景にある場合は、それぞれの病気に対する治療が必要です。こうした治療の経過とともに、口臭が徐々に改善していくケースもあります。
<ご家庭でできるケア>
治療とあわせて、日常の中で取り入れられるケアや食事の工夫も、口臭対策では大切なポイントです。
◆毎日の歯みがき習慣
いきなり歯ブラシを使う必要はありません。まずは口元や口の中に触れられることに慣れるところから始め、ガーゼや指で歯に軽く触れる練習をしていきましょう。無理なく触れることに慣れてきたら、少しずつ歯の表面を拭うようにし、最終的には歯ブラシでのケアを目指していくのが理想的です。段階を踏んで進めることで、嫌がりにくく、継続しやすくなります。
◆デンタルガムやデンタルケア用品の活用
歯みがきが難しい場合には、噛むことで歯垢の付着を抑えるデンタルガムや、口腔ケア用品を取り入れる方法もあります。毎日のケアが負担にならないよう、愛犬・愛猫の性格や生活リズムに合ったものを選ぶことが大切です。
◆フードの見直しによるサポート
口臭の原因によっては、フードを見直すことで改善がみられることもあります。歯石が付きにくい設計のフードや、アレルギーが背景にある場合の食事管理など、体質に合わせた選択が重要です。
口腔ケアや食事管理は「毎日完璧に行うこと」よりも、その子に合った方法を無理なく続けていくことが大切です。うまく進まない場合や、フード選びに迷うときは、どうぞお気軽にご相談ください。状態や生活に合わせて、無理のない方法を一緒に考えていきます。
<定期的なチェックの大切さ>
口臭やお口の状態は、日々の生活の中で少しずつ変化していくことも少なくありません。定期的に口腔チェックを行うことで、目立った症状が出る前の小さな変化に気づけることがあります。その結果、愛犬・愛猫が痛みや違和感を抱える時間を最小限に抑え、状態に応じた治療の選択肢を広げることにもつながります。
特に気になる様子がない場合でも、ご家庭でのケアと、動物病院での定期的なチェックをうまく組み合わせながら、愛犬・愛猫のお口の健康を無理なく守っていきましょう。
まとめ
犬や猫の口臭は、歯周病や体の内側の不調といった病気のサインとして現れていることもあります。しかし、毎日一緒に過ごしているからこそ、変化に気づきにくかったり「少し様子を見よう」と後回しになってしまうことも少なくありません。
姉ヶ崎どうぶつ病院では、歯科診療はもちろん、全身の状態も含めた総合的な視点で原因を確認し、その子に合った対応をご提案しています。「少し気になる」「これくらいで相談していいのかな」と迷われたときも、どうぞ遠慮なくご相談ください。
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