コラム
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症例
犬や猫の皮膚のできもの(体表腫瘤)について
犬や猫の身体に体表腫瘤ができている場合には、要注意です。
本記事では、当院でも症例がある、犬や猫の体表腫瘤の症状、診断・治療方法について詳しく解説していきます。
犬や猫の体表腫瘤の症状
犬や猫の体表腫瘤では、腫瘤の種類によってさまざまな症状がみられます。
脂肪腫や組織球腫のような良性の腫瘍では、無症状のケースも多くみられますが、悪性腫瘍の場合、自壊により化膿したり、痛みを伴ったりすることもあります。
良性腫瘍でもあまりにも大きすぎると、生活に支障が出ることもあるので注意が必要です。
犬や猫の体表腫瘤の種類
犬や猫の体表にできる腫瘤には、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
ここからは、良性腫瘍と悪性腫瘍に分けて詳しく解説していきます。
【良性腫瘍】
犬や猫の良性腫瘍には以下のような腫瘍が考えられます。
・脂肪腫
脂肪組織の良性腫瘍であり、中高齢の犬の体表に良くみられる腫瘤です。
ほとんどが無症状であり、生活にも支障をきたさないため経過観察をとることが多いものの、大きくなりすぎると外科手術を行い取り除く必要があります。
・組織球腫
組織球腫は、若齢の犬でよくみられる良性の腫瘍です。
赤く腫れた丸い腫瘤を体表に作り、急速に大きくなることもあります。
ほとんどの組織球腫は1〜2ヶ月ほどで自然に退縮していきます。
【悪性腫瘍】
悪性腫瘍では、以下のような腫瘍が考えられます。
・軟部組織肉腫
繊維肉腫や脂肪肉腫、末梢神経肉腫、血管周皮腫などの軟部組織肉腫と呼ばれる悪性腫瘍は、皮下に硬く触れる腫瘤として発見されるケースが多いと考えられます。
手術によって切除することが推奨されますが、筋肉に腫瘍細胞が固着している場合もあり、再発や転移が起きることもあります。
・乳腺腫瘍
中高齢の未避妊メスでは、乳腺腫瘍に気をつけなければいけません。
乳腺にできる腫瘤のうち、犬では約5割、猫ではほとんどが悪性の乳腺腫瘍であると言われています。転移も起こりやすい腫瘍であるため早期の対処が必要です。
・肥満細胞腫
体表に赤いしこりを見つけた場合には、肥満細胞腫を疑う必要があります。
特にパグやフレンチ・ブルドックといった犬種では好発する腫瘍であるため注意が必要です。生検を行い悪性度に合わせた治療が適用されます。
・肛門嚢腺癌
肛門にできる悪性腫瘍としては、肛門嚢腺癌があります。
体内のリンパ節に転移し便秘や嘔吐などの消化器症状を引き起こす場合や、自壊することもあるため早期の対処が必要な腫瘍です。
犬や猫の体表腫瘤の診断方法
体表腫瘤を診断する場合には、針を使っての生検や手術による切除生検を行う必要があります。
それぞれの診断方法の特徴は以下の通りです。
・針生検
腫瘤に針を刺すことにより細胞を採取する。無麻酔下で行える。
・切除生検
麻酔をかけて腫瘤を切除し組織を採取する。小さな腫瘤ならば全て切除可能。
針生検は無麻酔下でも行えますが、細胞が採取できない場合もある点がデメリットです。
切除生検は、細胞を採取することは可能ですが、麻酔リスクなどもあるため術前検査が必要です。
犬や猫の体表腫瘤の治療方法
犬や猫の体表腫瘤の治療方法は、腫瘤の種類や転移の有無などによってさまざまです。
悪性腫瘍では、手術後も再発や転移防止のために化学療法や放射線治療が適応となることもあります。
また、すでに他の臓器へ転移している場合は手術が適応とならない場合もあるため、術前検査時の画像検査(レントゲン、エコー)や麻酔下CT検査での判定が重要です。
まとめ
犬や猫の体表腫瘤は、良性腫瘍と悪性腫瘍があり、治療も腫瘍の種類や転移の有無などの状態によってさまざまですので、それぞれの個体に合った治療方法を選択していく必要があります。
悪性腫瘍の場合には、転移する前に早めに対処する必要があるでしょう。
体表腫瘤がある犬を診察する際には、しっかりと検査を行い適切な治療を行うようにしてください。
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獣医師、動物看護師ともに育成プログラムが充実しており、「獣医師や動物看護師として経験を積んで成長しやすい環境」が整っています。
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症例
犬や猫の口腔内腫瘍について
犬や猫の口の中にできものができている場合には、口腔内腫瘍の可能性も考えなければなりません。
悪性腫瘍である場合には、積極的な治療を行わないと動物の生活の質(QOL)を著しく低下させます。
本記事では、当院でも症例がある、犬や猫の口腔内腫瘍の症状、診断方法、治療・予防方法について解説します。
口腔内腫瘍の症状
犬や猫の口腔内腫瘍でよくみられる症状は以下の通りです。
・よだれ
・顔面の腫脹
・出血
・潰瘍
・口臭
・食欲不振
口内炎や歯周病の症状とも似ているため、獣医師はしっかりと口腔内を確認して腫瘍を見逃さないようにしなければなりません。
腫瘍が大きくなると、食欲不振だけでなく、呼吸困難などの症状もみられる場合もあるため、進行する前に早期の対処が必要です。
また腫瘍が大きくなってくると、採食ができなくなる以外にも呼吸困難を引き起こす症例も存在します。
口腔内腫瘍の種類
悪性の口腔内腫瘍として、以下のような腫瘍が多くみられます。
・悪性黒色腫
・扁平上皮癌
・線維肉腫
・棘細胞性エナメル上皮腫
猫においては、口の中にできる腫瘍の悪性度は高く、扁平上皮癌が特に多くみられます。
良性の腫瘍も存在しますが、悪性腫瘍の場合には局所浸潤や他の臓器への転移を引き起こすため、注意が必要です。
口腔内腫瘍の診断方法
犬や猫の口腔内腫瘍の診断方法には、基本的に生検が必要です。
口腔内腫瘍に対して無麻酔で針生検を行うのは困難なため、麻酔や鎮静下の安全な状況で、パンチ生検や切除生検を行う必要があります。
見た目での判定は難しく、悪性黒色腫は、黒いカリフラワー状のしこりのように見えることが多いとされていますが、黒色の色素を持たない悪性黒色腫も存在します。また良性腫瘍でも同様の見た目のものが存在します。
猫で多い扁平上皮癌は、赤いカリフラワー状、繊維肉腫は硬く膨らんでくるように増殖するのが特徴ですが、その限りではありません。
犬や猫の口腔内腫瘍の治療方法
犬や猫の口腔内腫瘍の治療は、主に外科手術による腫瘍の切除です。
積極的な外科手術は骨を削るような侵襲性の強い手術(実施の場合は紹介となります)になることも多いため、術後の見た目の変化、動物への負担、術後のケアについて、手術前にご家族と獣医師がよく話し合うことが重要です。
進行して外科適応とならない症例や、術後悪性腫瘍が判明した場合、進行を遅くしたり、再発や転移防止を目的とした化学療法や放射線治療が適応になることもあります。
また転移の有無は予後の判定や治療方針を決定するために重要です。
術前検査時の画像検査(レントゲン、エコー)や麻酔下CT検査、転移が疑われる組織の細胞診、組織診断にて相対的に評価します。
犬や猫の口腔内腫瘍の予防方法
犬や猫の口腔内腫瘍に対する予防方法は、残念ながらありません。
しかし歯肉炎や歯周病からくる炎症が腫瘍の発生に関与しているという見方もあり、日常的なデンタルケアや口腔内のチェックをこまめに行うことが腫瘍の早期発見・早期治療につながります。
まとめ
本記事では、犬や猫の口腔内腫瘍の症状、診断方法、治療方法について解説してきました。
犬や猫の口腔内腫瘍は、進行して大きくなるとさまざまな症状を引き起こしQOLの低下につながります。
早期に発見治療を行うことが大切です。診察においても口腔内のチェックをしっかりと行うようにしましょう。
日常的なデンタルケアと、早期発見・早期治療が大切です。
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症例
犬や猫の肛門周囲腫瘍について
犬猫の肛門周囲腫瘍は、良性のものから悪性のものまでさまざまです。
それぞれ病態や治療方法も変わってくるため、しっかりと病気について理解する必要があるでしょう。
本記事では、当院でも症例がある、犬猫の肛門周囲腫瘍の症状、診断・治療方法について解説します。
肛門周囲腫瘍の種類
肛門周囲の腫瘍は主に以下の3つが考えられます。
・肛門周囲腺腫
・肛門周囲腺癌
・肛門嚢アポクリン腺癌
肛門周囲腺腫は、良性腫瘍です。
肛門周囲腺癌や肛門嚢アポクリン腺癌は悪性腫瘍であり遠隔転移や周辺臓器、リンパ節への浸潤が見られます。
猫では、肛門周囲腺が存在していないため、肛門周囲の腫瘍は稀です。
肛門周囲腫瘍の症状
肛門周囲腫瘍の症状は、以下の通りです。
・お尻にしこりができる
・腫瘍から出血する
・お尻を地面に擦り付ける
・便秘
・食欲不振
・嘔吐
初期段階では、お尻にしこりができているだけで無症状のケースも多く見られます。
病状が進行すると、腫瘍から出血したり便秘が見られたりします。
肛門周囲腫瘍の診断方法
肛門周囲腫瘍の診断方法は、以下の通りです。
・身体検査
・血液検査
・画像検査(レントゲン、エコー、CT検査)
・FNA検査、生検
身体検査では、肛門周囲の腫瘤を確認します。
また、リンパ節への転移や便秘の状態を調べるために直腸検査を行う必要もあります。
血液検査では、高カルシウム血症の有無を確認します。
肛門嚢アポクリン腺癌では、腫瘍随伴症候群として、高カルシウム血症を示すことがあるので、腫瘍の鑑別に有効です。
そのほか、転移や浸潤を確認するために、画像検査を行います。
腫瘍をより高精度に診断するためにFNA検査や生検を行うことも必要でしょう。
肛門周囲腫瘍の治療方法
肛門周囲腫瘍の治療は、腫瘍の種類によって変わります。
【肛門周囲腺腫】
性ホルモンが関与しており、去勢手術により腫瘍の縮小化が期待できます。
縮小後に手術により腫瘤を摘出したり、手術が必要ないほどのサイズになったりすることもあります。
縮小しないものや再発したものに関しても外科的処置が必要になるでしょう。
【肛門周囲腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌】
外科的手術を行い、腫瘍や浸潤したリンパ節の切除を行う必要があります。
再発や転移することも多い腫瘍であるため、手術後の抗がん剤や放射線治療などの治療を行うことも必要です。
肛門周囲腫瘍の予防法
肛門周囲腺腫は去勢手術により予防可能です。
その他の肛門周囲腫瘍については、原因がはっきりわかっていないため、予防することは困難です。
腫瘍の早期発見・治療が大切になるため、身体検査をしっかり行う必要があります。
まとめ
本記事では、犬の肛門周囲腫瘍の症状、治療・予防法について解説してきました。
肛門周囲腫瘍には、良性や悪性のものがあり、治療方法もさまざまです。
正確な診断を行い、適切な治療方法を選択するようにしましょう。
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獣医内科第2版 p236続きを読む > -
症例
犬や猫の消化管間質腫瘍(GIST)について
犬猫の消化管間質腫瘍は、消化管筋層の細胞が腫瘍化した腫瘍です。
症状としては、嘔吐や食欲不振、体重減少が認められます。
本記事では、犬猫の消化管間質腫瘍の原因、症状、診断・治療方法について解説します。
消化管間質腫瘍とは
消化管間質腫瘍は、GISTとも呼ばれ、消化管腫瘍の1つです。
犬猫の消化管間質腫瘍は、盲腸、小腸、胃などに発生し巨大な腹腔内腫瘍を形成します。
猫での発生は稀であり、犬によく認められる疾患です・
転移率は報告されていませんが、腹腔内に播種したり術後に再発したりする場合もあります。
消化管間質腫瘍の原因
消化管間質腫瘍は、消化管筋層に存在するカハール介在細胞が腫瘍化したものです。
遺伝子の突然変異が原因として考えらえており、特にc-kit遺伝子の変異が関与していると考えられています。
消化管間質腫瘍の症状
消化管間質腫瘍の症状は以下の通りです。
・嘔吐
・下痢
・食欲不振
・体重減少
初期段階では、無症状であるケースも多く見られます。
進行すると腸穿孔による腹膜炎、腫瘍からの出血などが見られる場合もあります。
消化管間質腫瘍の診断方法
消化管間質腫瘍の診断方法は、以下の通りです。
・血液検査
・画像検査(レントゲン、エコー、CT検査)
・切除生検
消化管腫瘍の場合には、低アルブミン血症になっている場合も多く血液検査で、全身状態を把握しておくことが必要です。
画像検査では、腫瘍の大きさと位置や転移の有無を確認します。
消化管間質腫瘍は切除した組織で病理学的検査を行い確定診断していきます。
FNA検査を行う場合もありますが、腫瘍からの出血や消化管穿孔のリスクがあることに留意しておかなければなりません。
消化管間質腫瘍の治療方法
消化管間質腫瘍の治療方法は、外科手術で腫瘍を切除することが第一選択です。
※全身状態の把握と術前検査を目的に、血液検査や画像検査等が必要です。
転移している場合や再発予防のために、手術後に分子標的薬のイマチニブを使用することもあります。
消化管間質腫瘍の予後
消化管間質腫瘍の予後は明確になっていない部分が多いものの、完全切除し転移もない状態ならば、予後は良い傾向にあります。
しかし、転移があったり、腫瘍の悪性度が高かったりすると術後に死に至る可能性もあるため注意が必要です。
まとめ
本記事では、犬猫の消化管間質腫瘍の原因や症状、診断・治療法について解説してきました。
消化管間質腫瘍は、放置していると腹膜炎や消化管穿孔を引き起こし死に至る場合もあります。
消化器症状や体重減少など非特異的な症状として現れることが多いため、当院ではこういった所見がある犬猫を診察する際には慎重に検査を進めています。
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獣医内科学p209
犬と猫の治療ガイドp851-853続きを読む > -
症例
犬や猫の前十字靭帯断裂について
膝関節内に存在する前十字靭帯断裂が損傷した状態を、前十字靭帯損傷と呼びます。特に中年齢以降の犬において非常に一般的な跛行の原因疾患です。
本記事では、犬や猫の前十字靭帯損傷の原因、症状、診断方法、治療方法について解説します。
犬や猫の前十字靭帯断裂の原因
犬の前十字靭帯損傷の背景には、加齢等に伴う靭帯の変性(劣化)が存在することがほとんどです。人のように、交通事故や運動などで急性に靭帯が断裂することは比較的稀です。
靭帯変性が生じる原因は解明されておらず、大型犬から小型犬まで、ありとあらゆる犬種で前十字靭帯の損傷が生じ得ます。
猫の前十字靭帯損傷の原因はよくわかっていませんが、犬同様に靭帯の変性は先行している可能性が指摘されています。
犬や猫の前十字靭帯断裂の症状
前十字靭帯の症状は以下の通りです。
・患肢の挙上
・患肢の負重性跛行
犬や猫の前十字靭帯の診断方法
前十字靭帯損傷の確定診断は関節鏡もしくは関節切開での前十字靭帯の確認となりますが、ほとんどの場合は触診やレントゲン検査で臨床診断することが可能です。
情報量を増やすために、超音波検査や関節液検査が有用であることもあります。
触診では、関節液の増量を示唆する膝の腫脹を確認した上で、膝を伸ばしたときの痛み(過伸展痛)や、大腿脛関節の不安定を検出する試験(脛骨圧迫試験や脛骨前方引き出し試験)を行います。
レントゲン検査では、脛骨と大腿骨の位置関係や、骨関節炎の程度を確認します。
また、関節内の液体貯留により膝蓋下脂肪体が圧排される所見である「ファットパッドサイン」も前十字靭帯損傷の早期から認められる所見です。
ただし、炎症性関節疾患や腫瘍などが併発していることもありますので、これらの除外診断には関節液検査やCT検査、組織検査などの追加検査が必要となることもあります。
犬や猫の前十字靭帯断裂の治療方法
前十字靭帯断裂の治療方法は、主に「内科療法」と「外科手術」の2つの治療方法が考えられます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
内科療法
内科療法では、痛み止めの内服と一定期間の安静管理を指示します。
体重の軽い小型犬や猫の場合には、明らかな跛行が消失することもありますが、関節のズレは改善しないことも多く、長期的な骨関節炎の進行などには注意を要します。体重15kg以上の大型犬では、内科治療が功をそうする可能性は低いとされています。
外科治療
これまで様々な手術方法が考案されていますが、近年は脛骨を半円形に骨切りし、関節の角度を矯正することで機能的に膝を安定化させる、TPLO法と言われる手技が犬では広く選択されています。猫に最適な外科治療の手技については未だ議論があります。
まとめ
本記事では、犬と猫の前十字靭帯断裂の原因、症状、治療方法について解説しました。
前十字靭帯断裂は膝蓋骨脱臼と並んで本法で最も遭遇しやすい整形外科疾患の一つですので、よく理解しておくことが重要です。
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症例
犬と猫の膝蓋骨脱臼の原因と症状は?診断・治療方法について解説
膝蓋骨脱臼は小型犬に多くみられる疾患ですが、猫や大型犬でも発生します。
脱臼の頻度や症状の有無に応じて、個々の動物ごとに治療法を判断します。
本記事では、犬と猫の膝蓋骨脱臼の原因と症状、診断、治療方法について解説します。犬と猫の膝蓋骨脱臼の原因
犬と猫の膝蓋骨脱臼は、明らかな外傷なく自然発生的に生じることが多いとされています。様々な研究がされていますが、その正確な病態は解明されていません。稀ではありますが、急激な方向転換や落下など、外傷が原因で生じることもあります。
犬と猫の膝蓋骨脱臼の症状
犬と猫の膝蓋骨脱臼の症状は以下の通りです。
・間欠的に足を挙上する(スキップ)
・足を挙上したまま歩く
・O脚(ガニ股)で腰を落として歩く同じ脱臼の頻度でも、症状の重症度には症例ごとに大きな違いが存在します。また、重度の疼痛を示すことは少ないため、飼い主様自身が異常に気づいていないこともあります。
犬と猫の膝蓋骨脱臼の診断方法
犬と猫の膝蓋骨脱臼の診断は、触診で行います。立位・横臥位それぞれで実施し、脱臼の頻度や左右差、脱臼時の患肢機能を評価します。
レントゲン検査は、飼い主への説明や、その他疾患の除外、手術計画などに有用です。重篤な症例では、CT検査を行い3次元的に骨形態の評価を行うこともあります。脱臼の頻度は、一般的に以下の4段階に分類されます。
・グレード1:膝蓋骨を手で押すと脱臼するが、離すと元の位置に戻る。
・グレード2:膝関節の可動に伴い、自発的に脱臼と整復を繰り返す。
・グレード3:膝蓋骨は常に脱臼しているが、用手で整復可能。
・グレード4:膝蓋骨は常に脱臼しており、用手で整復不可。脱臼の頻度(グレード)は上記のように分類されますが、治療介入の有無には年齢や体重、症状の程度などグレード以外の要素も考慮する必要がありますので、個々の症例でオーダーメードに判断を行います。
また、膝蓋骨は小型犬に好発する疾患であるため、膝蓋骨は脱臼する症例でもその他の疾患が跛行の原因なっていることもあり、鑑別診断が重要です。特に中年齢以降では、前十字靭帯損傷の併発が好発します。
犬と猫の膝蓋骨脱臼の治療方法
犬と猫の膝蓋骨脱臼の治療方法は以下の通りです。
・保存治療
・外科治療それぞれについて解説します。
保存治療
手術を行わずに経過観察を行う方法です。
疼痛などが強い症例では痛み止めの使用などが検討となりますが、あくまで対症療法となり、膝蓋骨の脱臼を防ぐことはできない点に注意が必要です。外科手術
複数の手技を組み合わせて実施することが一般的です。
膝蓋骨脱臼で行われる手技には以下のようなものが挙がられます。・軟部組織の縫縮/解放:過剰に弛緩/緊張した内外側の軟部組織のバランスを調節する
・滑車溝形成術:膝蓋骨のはまるべき溝である滑車溝を深くする
・脛骨粗面転移術:膝蓋腱の付着部である脛骨粗面の位置を矯正する
・骨切り術:大腿骨や脛骨の形を矯正する犬と猫の膝蓋骨脱臼の予防方法
膝蓋骨脱臼の発生を完全に予防することはできませんが、滑りやすい生活環境はリスク因子になる可能性があります。フローリングにマットを敷く、バリカンで肢先の毛を刈るなどの生活指導をすると良いでしょう。
まとめ
膝蓋骨脱臼は頻発する関節疾患ですが、その治療方針は個々の症例ごとに判断することが必要となります。
またよく遭遇する疾患である一方、膝蓋骨が脱臼していてもその他の疾患が跛行の原因となっていることもありますので、慎重に診療に当たる必要があります。姉ヶ崎どうぶつ病院は一緒に働く仲間を募集しています
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