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症例
春に多い猫の食欲不振、放っておいても大丈夫?|見逃したくないサインとご自宅でできる対処法
春になって気温が上がってくると、「なんだか最近、愛猫のごはんの食いつきが悪いかも…」と心配になる飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。実はこの時期、猫の食欲が落ちやすくなることがあります。
「季節の変わり目だから、そのうち元に戻るかな?」と様子を見ているうちに、実は体調不良や病気が隠れていた、というケースも決してめずらしくありません。
今回は、春に猫の食欲が落ちる理由や、飼い主様がご自宅でできる対処法について解説します。
春に猫の食欲が落ちる主な原因とは?
猫の食欲は、気温や日照時間の変化に影響を受けることがあります。
特に冬から春にかけては、寒暖差が大きくなるため、体温調節にエネルギーを使い、結果としてごはんの量が減ってしまうこともあるのです。
さらに、以下のような理由も関係していると考えられます。
◆換毛期による影響
春は冬毛が抜け落ちる「換毛期」にあたります。このタイミングで体の代謝バランスが変化し、それが一時的な食欲の低下につながることがあります。
特に長毛種の猫は抜け毛の量が多いため、換毛期の影響を受けやすい傾向があります。
◆活動量の変化
春になると日照時間が長くなり、それに合わせて猫の行動パターンにも変化が見られます。
日中にのんびりと日向ぼっこをする時間が増えると、体を動かす機会が減り、それにともなって食欲が落ちてしまうことがあります。
◆発情期の影響(避妊・去勢をしていない猫の場合)
避妊や去勢をしていない猫は、春に発情期を迎えることが多く、このホルモンバランスの変化が食欲に影響することもあります。
特にオス猫は、発情中のメスのにおいなど外の刺激に敏感になり、ごはんよりも外への興味やマーキング行動に意識が向いてしまうことがあります。
このように、春に見られる猫の食欲低下は、季節的な要因による一時的なものの場合もありますが、なかには病気のサインである場合もあります。
自宅でできる猫の食欲不振対策
もし猫が春に食欲を落としてしまった場合、自宅で簡単にできる対策を試してみましょう。
◆食事の温度を少しだけ調整する
冷たいフードよりも、ほんのり温めたごはんのほうが香りが引き立ちやすく、猫の食欲を刺激してくれることがあります。
特にウェットフードは、電子レンジで人肌程度に温めてあげると、香りが増して食べやすくなることがあります。
※温めすぎには注意し、熱くなりすぎないように手で温度を確認してから与えましょう。
◆食器を変えてみる
実は、使っている食器の素材や形状が食欲に影響することもあります。
プラスチック製の食器を嫌がる猫も多いため、陶器やステンレス製の器に替えてみるのも一つの方法です。
また、ひげが器のふちに当たるのを嫌がる猫もいます。そのような場合は、浅めで広めの器を選んであげましょう。目安としては、深さが3〜5cm程度のお皿を好む猫が多いようです。
◆食事の場所を見直してみる
騒がしい場所や人の出入りが多い環境では、落ち着いてごはんが食べられないこともあります。静かで安心できる場所にごはんを置いてあげることで、食欲が戻ることがあります。
また、他の猫や犬と一緒に暮らしている場合は、少し距離を取って別々に食べさせると良いでしょう。
◆少量ずつ、こまめに与える
「一度にたくさんは食べられない」という猫には、1日に何回かに分けて、少しずつごはんをあげるのが効果的です。
春は気温の変化で体調を崩しやすいため、こまめな給餌が食欲維持につながります。
◆水分をしっかり摂れるように工夫する
食欲が落ちているときは、同時に水分も摂りにくくなりがちです。
脱水を防ぐためにも、水分補給はとても大切です。
ウェットフードや缶詰を取り入れたり、ドライフードにぬるま湯をかけたりすることで、自然に水分を摂る工夫ができます。
お皿に入れたお水があまり減らない場合は、猫用の給水器や場所を変えるなどの工夫も試してみましょう。
見逃さないで!猫の食欲不振が教えてくれる体のSOS
猫の食欲不振には、ただの気まぐれや一時的な体調不良ということもありますが、病気が隠れている場合も少なくありません。
まずは、次のような症状が見られないかチェックしてみましょう。
・急に体重が減ってきた
・吐いたり下痢をしたりしている
・元気がなく、ぐったりしている
・水をほとんど飲まない、または異常にたくさん飲む
・食べたそうにするのに、口を気にして食べられない
・呼吸が荒くなったり、速くなったりしている
・毛づくろいをしなくなった、または毛並みがボサボサしてきた
こうした症状が見られる場合、単なる季節の変わり目や気分の問題ではなく、病気が関係している可能性があります。
例えば、腎臓病・口内炎・甲状腺機能亢進症・消化器の疾患などが原因として考えられます。
特に、食欲不振が2〜3日以上続く場合や、体重の減少、嘔吐や下痢、元気がないといった症状が一緒に見られる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
▼口内炎についてはこちら
診断方法
動物病院では、まず問診からスタートします。
「いつ頃から食欲が落ちたのか」「他に気になる症状はあるか」など、飼い主様からのお話を丁寧にうかがいながら、原因の手がかりを探っていきます。
そのうえで、必要に応じて以下のような検査が行われることがあります。
◆身体検査
猫の全身状態を確認し、発熱や脱水がないか、口の中に炎症や痛みがないかなどを丁寧にチェックします。
歯の痛みや口内炎は、食欲が落ちる大きな原因となることがあるため、口腔内の観察はとても大切です。
◆血液検査
内臓の働きや体内の炎症の有無などを調べるために行います。
腎臓や肝臓の数値をはじめ、感染症やホルモンバランスの異常が隠れていないかも確認します。
特に高齢の猫では、腎臓病や甲状腺機能亢進症といった病気が原因で食欲が落ちていることもあります。
◆画像検査(レントゲン・超音波検査)
食欲不振の背景に、胃腸の働きの低下やお腹の中の異常(腫、しこり、異物など)がないかを確認するために、レントゲンやエコー検査を行うことがあります。
◆尿検査
腎臓の状態や糖尿病の兆候を調べるために、尿検査が行われることもあります。
治療法
治療は、食欲不振の原因に応じて方法が変わるため、まずは検査によってしっかりと状態を把握することが大切です。
そのうえで、一般的には以下のような治療が行われます。
<点滴治療(皮下点滴・静脈点滴)>
脱水の症状が見られる場合には、体に必要な水分や電解質を補うために点滴が行われます。
皮下点滴は比較的軽度の脱水時に、静脈点滴は状態が重い場合や入院が必要なときに用いられます。点滴によって体のバランスが整うと、すぐに食欲が戻る猫もいます。
<投薬治療>
原因となっている症状や病気に合わせて、以下のような薬が処方されます。
・胃腸の動きをサポートする薬
・炎症を抑える薬
・痛みや不快感を和らげる薬
<食事療法>
高カロリーのフードや療法食を取り入れ、少量でも効率よく栄養を摂れるように工夫します。どうしても自力で食べられない場合には、強制給餌を行うこともありますが、これは猫にとって大きなストレスになることもあるため、必ず獣医師の指導のもとで慎重に行うことが大切です。
春の食欲不振を防ぐために|日頃からできるケアと注意点
以下のようなポイントを意識して過ごすことで、春の食欲不振を予防しましょう。
◆日々の食事量を記録する
毎日の食事量をメモしておくことで、少しの変化にも早く気づくことができます。特に多頭飼いの場合は、どの猫がどれだけ食べているかを把握することが大切です。
◆定期的な健康診断を受ける
春先の食欲低下が病気のサインではないかをチェックするためにも、年に1回以上の健康診断を受けることをおすすめします。
特に7歳以上のシニア猫は、半年に1回の定期健診が理想的とされています。
◆食事環境を整える
猫が落ち着いてごはんを食べられるように、食事スペースの環境を見直すことも大切です。
例えば、静かな場所に食器を置く、他の猫と距離を取る、食器の高さを調整するといった工夫を取り入れてみましょう。
◆換毛期のケアをする
春は換毛期の真っ只中。たくさんの毛が抜けるこの時期は、体への負担も大きくなりがちです。
そのため、こまめなブラッシングで抜け毛を取り除いてあげましょう。
また、毛玉をスムーズに排出できるように、毛玉ケア用のフードやサプリメントを取り入れるのもおすすめです。
◆ストレスを減らす工夫をする
気温の変化や生活環境のちょっとした変化が、猫にとってはストレスになることもあります。
そのため、春は特に心のケアも意識してあげましょう。
急な環境変化を避ける、適度に遊んで気分転換をさせる、フェロモン製品を活用するなど、穏やかに過ごせる環境を整えることが食欲の安定にもつながります。
まとめ
春は、気温や環境の変化により、猫の食欲が落ちやすい季節です。
ですが、「きっと季節の影響だろう」と決めつけてしまうのではなく、日頃から愛猫の様子をしっかり観察することが大切です。
猫は、体調が悪くてもそれを隠そうとする習性があります。
そのため、「少し様子を見よう」と思っているうちに、症状が進んでしまうことも少なくありません。だからこそ、食欲の変化は小さなサインとして見逃さないことが大切です。
食欲が落ちる原因をしっかり突き止め、適切なケアを行うことで、愛猫が快適に春を過ごせるようにサポートしていきましょう。
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犬のフィラリア予防|始める時期・予防期間・薬のタイプを解説
春が近づいてくると、動物病院でも「フィラリア予防」のお話を耳にする機会が増えてきます。
フィラリア症とは、蚊に刺されることで体内に寄生虫(フィラリア)が入り込み、最終的には心臓や肺の血管に寄生してしまう怖い病気です。
進行すると、呼吸が苦しそうになる、咳が出る、元気がなくなる、運動を嫌がるといった症状が見られるようになり、放っておくと命に関わることもあります。
ですが、正しいタイミングで予防を始めて継続的に対策を行えば、フィラリア症はほぼ100%防ぐことができます。
大切な愛犬を守るために、予防の時期や方法をしっかりと確認しておきましょう。
今回は、フィラリア予防を始めるタイミングや、愛犬に合った予防薬の選び方について解説します。
フィラリア予防を始めるベストなタイミング
フィラリア予防を始める時期は、お住まいの地域の気温や蚊の発生状況によって異なります。
蚊は気温が連続して10℃以上になると活動を始めるため、地域ごとの気候に合わせて、予防のスタート時期を決めることが大切です。
一般的には、多くの地域で5月〜12月頃までが予防期間とされていますが、例えば当院のある千葉県市原市エリアのように水田や川、雑木林が多く、自然が豊かな地域では、蚊の発生期間が長く続く傾向があります。そのため、当院では12月までしっかりと予防を続けることをおすすめしています。
フィラリア予防薬は、すでに体内に入り込んだフィラリアの幼虫を駆除するタイプのお薬です。
そのため、たった1回の飲み忘れでも、幼虫がそのまま体内で成長してしまい、心臓や肺の血管に深刻なダメージを与える可能性があります。
「もう蚊を見かけなくなったから、そろそろ大丈夫かな?」と思うかもしれませんが、実はここが大切なポイントです。
蚊の活動が終わった後も1〜2ヶ月間は体内に幼虫が残っている可能性があるため、予防を継続することがとても重要です。
フィラリア予防薬の種類と特徴
フィラリア予防薬には以下のような、さまざまなタイプがあります。
<経口薬(チュアブル・錠剤)>
月に1回飲ませるタイプが主流です。
中でもチュアブルタイプ(おやつのような形状)は、比較的与えやすいことから多くの飼い主様に選ばれています。
■メリット
・おやつのように食べられるので投薬しやすい
・フィラリア予防と同時に、お腹の寄生虫(回虫・鉤虫など)も駆除できる
・「ネクスガードスペクトラ」など一部の製品では、ノミ・ダニの予防もまとめて対応可能
■注意点
・食べムラがある犬は食べないこともあり、別の方法を検討する必要あり
・飲んだあとすぐに吐いてしまった場合は、効果が十分に得られないこともある
<スポットタイプ(滴下式)>
犬の首の後ろに液体を垂らすタイプの予防薬です。
皮膚から成分が吸収され、体全体に行き渡ります。
■メリット
・経口薬が苦手な犬でも使いやすい
・フィラリアだけでなく、ノミ・ダニの予防も同時にできる製品が多い
・ご自宅で簡単に塗布できる
■注意点
・薬剤が乾くまでは触らないよう注意
・シャンプーのタイミングに注意が必要(塗布後2日ほどは避けるのが理想)
<注射タイプ(年に1回)>
動物病院での年1回の注射で、1年間フィラリア予防ができます。
■メリット
・毎月の投薬が不要なので、投薬の手間がかからない
・飲み忘れの心配がないため、忙しい方や多頭飼育のご家庭にもおすすめ
■注意点
・他の方法に比べて費用が高め
・副反応の可能性があるため、事前に獣医師と相談が必要
愛犬の体質・暮らし方に合わせたフィラリア予防薬の選び方
フィラリア予防薬を選ぶ際には、価格や手軽さだけで決めてしまうのではなく、愛犬の生活スタイルや体質に合った方法を選ぶことが大切です。
<外出頻度が高い場合>
お散歩の回数が多い場合や、ドッグランやキャンプなど屋外で過ごす時間が長い場合は、蚊に刺されるリスクが高くなります。
そのため、確実に予防ができる方法を選び、毎月の投薬を忘れずに行うことが大切です。<散歩コースに水辺や緑が多い場合>
水田や川、公園、雑木林など、蚊が発生しやすい環境を歩く機会があると、蚊との接触リスクも高くなります。
このような環境では、年間を通じて予防を徹底する必要があります。
<室内中心の生活の場合>
室内で過ごすことが多い場合でも、窓や玄関から蚊が入り込むことは珍しくありません。
「室内だから安心」と思わずに、蚊の活動時期にはきちんと予防を続けることが重要です。
また、「価格が安いから」「お得だから」といった理由だけで予防薬を選ぶのではなく、愛犬の健康状態や性格、生活環境に合わせて最適な方法を選ぶことが、健康を守るうえで欠かせません。ご不安な点があれば、かかりつけの動物病院で相談しながら選ぶと安心です。
さらに、フィラリア予防に加え、ノミ・ダニ対策や腸内寄生虫の駆除も同時にできる予防薬を選ぶことで、より効率的に愛犬の健康管理がしやすくなります。
フィラリア予防のよくある質問と回答
Q.室内で飼っている場合も、フィラリア予防は必要ですか?
A.はい、室内飼いでも予防は必要です。
蚊は、窓の開閉や網戸のすき間、玄関の出入りなどを通じて、室内にも入り込んでくることがあります。
マンションの高層階でも蚊の侵入が確認されているため、「室内だから安心」と思わず、しっかりと予防を続けることが大切です。
Q.予防薬の投与を忘れてしまった場合はどうすればいいですか?
A.すぐに獣医師に相談しましょう。
1回の飲み忘れでも、体内に入ったフィラリアの幼虫が成長を始める可能性があります。
予防薬は単に“先延ばし”にして与えればよいというものではなく、投与のタイミングや検査の必要性を確認することが重要です。
忘れてしまったときは、できるだけ早く動物病院にご相談ください。
Q.予防期間中に蚊に刺されてしまった場合は大丈夫ですか?
A.予防薬を正しく使用していれば、問題ありません。
フィラリア予防薬は、蚊に刺されたあと、体内に侵入したフィラリアの幼虫を駆除するしくみです。
そのため、定期的に投薬していれば、蚊に刺されてもフィラリア症の発症は防ぐことができます。
忘れずに投薬を続けることが、何よりも大切です。
Q.猫にもフィラリア予防は必要ですか?
A.はい、猫にも予防を検討することをおすすめします。
犬ほどではありませんが、猫も蚊に刺されることでフィラリアに感染するリスクがあります。
しかも猫の場合、体内にごく少数のフィラリアがいるだけでも、重い症状を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
とくに蚊が多い地域では、猫用の予防薬を使った対策をかかりつけの獣医師と相談しながら進めましょう。
まとめ
フィラリア症は一度感染してしまうと治療が難しく、進行すると命に関わることもある怖い病気ですが、適切な時期に予防薬を使用することで、ほぼ100%予防することができます。
予防薬にはいくつか種類があり、与え方や効果の範囲もさまざまです。
愛犬の体質や生活スタイルに合った方法を選ぶためにも、かかりつけの動物病院で獣医師と相談しながら決めることが大切です。
▼当院の予防医療についてはこちらから
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