コラム
猫の脂肪肝(肝リピドーシス)とは?食欲不振が続くと命に関わることも
「なんだか元気がない」「ごはんをほとんど食べない」──愛猫にそんな様子が見られても「気まぐれかな?」と様子を見てしまうことはありませんか?
しかし、猫は短期間の絶食でも深刻な病気につながることがあります。そのひとつが「脂肪肝(肝リピドーシス)」と呼ばれる病気です。食欲不振がきっかけとなり、命に関わる状態へ進行することもあるため、早めの受診がとても大切です。
今回は、猫の脂肪肝の原因・症状・治療・ご自宅でのケア方法について解説します。
猫の脂肪肝とは?短期間の絶食で肝臓に負担がかかる病気
脂肪肝とは、肝臓に脂肪が過剰にたまってしまうことで、臓器としての働きが十分に行えなくなる状態をいいます。
肝臓は栄養素を代謝したり、体内の有害物質を解毒したりと、生命維持に欠かせない役割を担っています。そこに脂肪がたまり過ぎると、肝臓の働きが弱まり、全身の健康に影響が及んでしまうのです。
とくに猫は「絶食に弱い動物」とされており、食事がとれない状態が数日続くと、エネルギー不足を補うために体内の脂肪が急速に分解されます。その脂肪が肝臓に蓄積しやすく、代謝に負担がかかることで脂肪肝が進行してしまうのです。
この状態が続くと、肝臓の機能が低下し「食べない → 体内の脂肪を分解 → 分解された脂肪が肝臓にたまる → 肝臓の働きが低下 → さらに食べられない」という悪循環に陥ってしまいます。
進行すれば命にかかわることもありますが、早期に気づいて治療を始めれば回復が見込める病気です。食べ方の変化が見られた際には「少し様子を見る」よりも、早めの相談が安心につながります。
どんな猫がかかりやすい?肥満・ストレス・環境変化が引き金に
脂肪肝は、どの猫にも起こり得る病気ですが、以下の条件に当てはまる場合特に注意が必要です。
◆肥満傾向のある猫
体内の脂肪量が多く、絶食時に肝臓に負担がかかりやすくなります。
◆ストレスや環境変化で食欲が落ちやすい猫
引っ越し・来客・多頭飼育などがきっかけになることもあります。
◆慢性疾患を抱える猫
口内炎・糖尿病・膵炎などは食欲低下につながりやすいため、注意が必要です。
◆急なダイエットを経験した猫
摂食量の急変は脂肪肝のリスクを高めます。
脂肪肝は“気づいたときには進行していた”というケースも少なくありません。だからこそ「うちの子は当てはまるかも」と感じたタイミングで、健康チェックのきっかけにしていただくことが大切です。
主な症状と受診の目安|「食べない」「黄疸」「元気がない」は要注意
脂肪肝の初期症状は見逃されやすいため、次のような変化がないか注意深く観察しましょう。
<初期にみられるサイン>
・食欲不振・食べむら
・体重減少
・毛づやが悪くなる
・少し元気がない
・嘔吐
<さらに進行するとみられるサイン>
・黄疸(白目・耳・歯ぐきが黄色くなる)
・水をあまり飲まない
・じっと動かない、反応が乏しい
もっとも危険なのは「食べない状態が続く」ことです。普段はよく食べる猫が、急に食事を残すようになったり、2日続けてほとんど食べない場合は、すぐに動物病院に相談してください。早い段階での対応が、命を守ることにつながります。
治療と食事管理|栄養サポートで回復を目指す
脂肪肝の治療では、まず血液検査やエコー検査で肝臓の状態を詳しく確認します。進行度を把握することで、必要な治療と栄養管理の方針を明確にしていきます。
<治療の基本は「栄養補給」>
脂肪肝において最も重要なのは「十分な栄養を確保すること」です。食欲が戻るまでは、以下のような方法で無理のないサポートを行います。
・チューブ給餌(鼻カテーテル・胃ろう)による栄養補給
・肝臓の働きを助ける点滴・内服治療
・嘔吐や脱水への対症療法
「チューブ」と聞くと驚かれることもありますが、負担を抑えながら必要なエネルギーを確実に届けるための治療法です。
また、脂肪肝の背景に口内炎・糖尿病・膵炎などが隠れている場合は、それらの治療も並行して行います。
<回復後の再発予防>
治療によって状態が落ち着いた後は、再発を防ぐために次のようなケアが必要です。
・肝臓に配慮した療法食・高栄養フードの継続
・急な断食や過度なダイエットを避ける
・ストレスや生活環境の見直し
・定期的な体重・健康チェック
適切な治療と栄養サポートを続ければ、回復が期待できる病気です。気になる変化があれば、ぜひ早めにご相談ください。
まとめ
猫の脂肪肝は、ごはんを食べない期間が続くことで発症しやすい病気ですが、早期に気づいて治療を始めれば回復を目指すことも可能です。
姉ヶ崎どうぶつ病院では、血液検査やエコー検査で肝臓の状態を丁寧に確認したうえで、必要な栄養管理を含めた治療プランをご提案しています。また、治療後の再発を防ぐために、食事内容や生活環境についてのサポートも行っています。
「少し食べる量が減ってきた」「元気がないように見える」──そんな小さな変化こそ、脂肪肝のサインかもしれません。気になることがあれば、どうかお早めにご相談ください。
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