
コラム
愛犬の認知症サインに気づいている?|症状の見分け方と対処法を徹底解説
「最近、夜中に愛犬が頻繁に鳴く」「トイレの失敗が増えてきた」など、これまでとは違う高齢犬の行動に戸惑っている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
こうした変化は、認知機能不全症(犬の認知症)のサインである可能性があります。
近年、犬の寿命が延びていることにより愛犬と長く一緒に暮らせる喜びが増える一方で、高齢化に伴う健康問題に直面することも多くなっています。
認知機能不全症もその一つで、適切なケアを行うことで症状を緩和し、愛犬との生活をより快適にすることができます。
今回は、認知機能不全症の早期発見のポイントと、症状に合わせたケア方法を詳しく解説します。
犬の認知機能不全症とは?
認知機能不全症とは、脳の老化によって記憶力や認知力、行動に変化が表れる疾患です。人間の認知症に似た特徴を持ちますが、犬の場合は特に行動や生活習慣の変化として表れることが多いのが特徴です。
<発症しやすい年齢と犬種>
認知機能不全症は7~8歳以上の高齢犬で発症リスクが高まり、特に12歳以上になると顕著に表れる傾向があります。
また、認知機能不全症は、特定の犬種で発症しやすい傾向が報告されています。
特に柴犬や秋田犬などの日本犬で多いとされていますが、小型犬ではトイプードルやチワワ、ダックスフンド、大型犬ではゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーなど、犬種を問わず注意が必要です。
しかし、どの犬種でも高齢になると発症リスクが高まるため、愛犬の行動や生活習慣の変化を見逃さず、早めに対応することが大切です。
認知機能不全症の主な症状
認知機能不全症の症状は日常生活の中で徐々に表れるため、「加齢による変化」と見過ごされがちです。
以下では代表的な症状とその理由、正常な加齢現象との違いについて解説します。
・夜鳴き
認知機能不全症の犬は、昼夜の区別がつきにくくなるため、不安や混乱を感じて夜中に突然吠えたり、理由もなく鳴いたりすることがあります。この症状は、脳内のホルモンバランスの変化も影響していると考えられています。
■正常な加齢との違い
加齢による夜鳴きは、物音や外部からの刺激に反応して吠えることが多いのに対し、認知機能不全症では静かな環境でも理由なく鳴き続けることが特徴です。
・トイレの失敗が増える
認知機能不全症の犬は、トイレの場所を忘れてしまったり、いつもと違う場所で排泄してしまったりすることがあります。これは記憶力の低下や、排泄を我慢する能力の衰えが原因です。また、身体の感覚が鈍くなることも影響しています。
■正常な加齢との違い
加齢によるトイレの失敗は「トイレに行くまでに間に合わない」ことが多いですが、認知機能不全症ではトイレの場所を認識できなくなったり、使い方を忘れてしまったりすることが特徴です。
・反応が鈍くなる
名前を呼んでも振り向かない、撫でても反応が薄いといった変化が見られる場合があります。記憶力の低下により、飼い主様や家族を認識しにくくなることが原因です。
■正常な加齢との違い
加齢の場合は一時的に気づかないことがある程度ですが、認知機能不全症では常に反応が鈍い状態が続きます。
・徘徊や混乱
認知機能不全症の犬は、周囲の環境や状況を認識できなくなり、不安感から部屋の中を無目的に歩き回ったり、普段とは違う方向に進んでしまったりすることがあります。これらの行動は、脳の認知機能の低下が主な原因です。
・食事の変化
食事に興味を示さなくなることがあります。これは、食欲や食事への認識が低下しているためで、嗅覚や味覚の変化とも関連しています。
早期発見のためのチェックリスト
認知機能不全症は、早期に発見し適切なケアや治療を行うことで、愛犬の生活の質を大きく向上させることができます。日常的に以下の項目をチェックし、愛犬の行動や生活リズムに変化がないか確認してみましょう。

愛犬の行動記録で分かる小さなサイン
愛犬の行動の変化は、飼い主様が最も早く気づけるポイントです。その変化を日記やアプリに記録することで、獣医師に正確な情報を伝えられるだけでなく、症状の進行や改善をモニタリングする際にも役立ちます。
<記録するべき内容>
・行動や症状が始まった日時
例:〇月〇日、夜中に初めて理由もなく鳴き始めた。
・具体的な症状や頻度
例:夜鳴きが週に3回、トイレの失敗が毎日見られる。
・日常生活での変化
例:食欲が低下し、好きだった遊びへの興味を失った。
疑わしい症状が出た場合の対応方法
愛犬に認知機能不全症の可能性が疑われる症状が見られたときは、早急かつ適切に対応することが重要です。
・まずは冷静に観察
突然の行動の変化に驚くかもしれませんが、焦らず冷静に愛犬の様子を観察してください。行動や症状の内容、頻度、発生した日時を記録することで、獣医師に状況を正確に伝えることができます。
・獣医師に相談
観察と記録を基に、かかりつけの獣医師に相談しましょう。電話で事前に症状を説明し、診察が必要か確認するのも効果的です。
記録に基づいて症状を具体的に伝えることで、適切な診断と治療につながります。
診断方法
認知機能不全症の診断では、他の疾患(脳腫瘍や甲状腺疾患など)との区別が重要です。そのため、以下のような流れで診断が進められます。
1.問診
飼い主様が記録した愛犬の行動の変化や症状を基に、詳細な問診が行われます。この段階で、日常の行動や生活リズムの変化について具体的に伝えましょう。
2.身体検査
神経学的検査や身体全体の健康状態を確認します。認知機能不全症に似た症状を引き起こす他の疾患がないかを調べます。
3.血液検査・尿検査
内分泌系や代謝異常の有無を調べるため、血液検査や尿検査を行います。甲状腺疾患や糖尿病など、類似の症状を引き起こす疾患を除外する目的があります。
4.画像診断(CT、MRI)
必要に応じて、脳腫瘍や脳内の構造的異常がないかを確認するため、CTやMRI検査を実施します。
治療法
認知機能不全症に特効薬はありませんが、適切な治療を行うことで症状を緩和し、進行を遅らせることが可能です。
国内ではあまり使用例がないものの、米国では人間用のパーキンソン病治療剤であるセレギリンが治療に用いられるケースもあります。
また、抗酸化作用を持つ成分を含んだサプリメントが治療の補助になる場合もあります。例えば、オメガ3脂肪酸やビタミンEなどは、脳の健康をサポートすると考えられています。これらの成分は、認知機能を維持するための補助的な手段として活用されています。
治療効果や予後
認知機能不全症は進行性の疾患ですが、適切な治療とケアを行うことで症状が緩和されるケースが多く見られます。
特に、夜鳴きやトイレの失敗といった困難な症状が軽減されることで、愛犬と飼い主様双方の生活の質が大きく向上することがあります。また、治療によって愛犬の混乱や不安が和らぎ、より穏やかに過ごせるようになるでしょう。
認知機能不全症は完全に治癒する疾患ではありませんが、早期発見と治療の継続により、症状の進行を遅らせることが可能です。適切なケアを続けることで、愛犬がより快適で穏やかな日々を送ることが期待できます。
日常生活でのケア方法
認知機能不全症を持つ犬でも、適切なケアや工夫を行うことで症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させることが可能です。
ここでは、環境整備、食事と運動、認知機能を維持するためのケアに分けて具体的な方法を解説します。
<環境整備の具体的な方法>
・生活環境をシンプルに整える
愛犬が迷わずに移動できるよう、家具の配置は固定しておきましょう。環境の変化は愛犬にとって大きなストレスや混乱の原因となるため、必要以上の模様替えはできるだけ避けるのがおすすめです。
・段差や滑りやすい床の対策
滑りやすい床には滑り止めマットを敷いたり、階段やソファなど高い場所へのアクセスを制限したりする工夫が効果的です。こうした対策は、足腰への負担を減らし、愛犬が安心して移動できる環境づくりにつながります。
・夜間の視覚を補助する工夫
夜間は真っ暗にしすぎず、優しい照明を使用して愛犬が安心できる空間を作りましょう。わずかな明かりでも、視覚の助けとなり不安を軽減できます。
・安心できるスペースの確保
愛犬がストレスを感じたときや疲れたときに安心して過ごせる専用のスペースを用意することも大切です。
<食事>
愛犬の健康を支えるためには、年齢や体調に合わせた適切な食事を選ぶことが大切です。高齢犬には、高齢犬用のフードや認知機能をサポートする療法食、サプリメントを検討しましょう。
・トライザ(TRIZATM):抗酸化作用や脳機能をサポートする成分を含むサプリメントです。
・ニューロケア(Pro Plan NeuroCare):認知機能をサポートするために設計された療法食です。
<認知機能を維持するための工夫やケア>
・適度な運動
短い散歩や遊びは、脳を刺激し筋力を保つだけでなく、ストレスの軽減にもつながります。
ただし、愛犬が無理をしないように、体調に合わせて運動の時間や頻度を調整することが大切です。
・ コミュニケーションの時間を大切に
飼い主様との触れ合いは、愛犬にとって何よりも安心できるひとときです。優しく撫でたり、一緒に遊んだり、話しかけることで、愛犬の脳を活性化させることができます。
・規則正しい生活リズムを整える
愛犬が穏やかで安定した毎日を過ごすには、生活リズムを整えることが大切です。食事や散歩、休息の時間を毎日同じスケジュールで行うことで、愛犬が安心して過ごせる環境が整います。
認知機能不全症を予防するためにできること
愛犬の認知機能不全症を予防するには、若い頃からのケアがとても大切です。ここでは、日常生活に取り入れやすい方法をご紹介します。
<若い頃から始めるケア>
・適度な運動を習慣にする
若い頃から運動を続けることで脳への血流が良くなり、認知機能の低下を防ぐことが期待できます。毎日の散歩や遊びなど、愛犬が楽しめる運動を取り入れてみてください。
・生活に適度な刺激をプラス
新しい環境や音、匂いを取り入れると、愛犬の脳が活性化します。新しいおもちゃで遊んだり、普段とは違う散歩コースを試してみたりするのも効果的です。
<食事やサプリメントでサポート>
・栄養バランスを意識する
DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸を含むフードは、脳の健康維持に役立ちます。栄養バランスの良い食事を心がけて、愛犬の健康をサポートしましょう。
・サプリメントや療法食の活用
トライザなどの脳の健康をサポートするサプリメントや、ニューロケアのような高齢犬向けに設計されたフードもおすすめです。これらは、認知機能の低下を防いだり、進行を遅らせたりする効果が期待できることがあります。
詳しくは獣医師に相談して、愛犬に合ったものを選んでみましょう。
・高齢期に合わせた食事管理
年齢に合ったフードや適切な体重管理も、認知機能不全症の予防に大切です。特に高齢犬には、消化に優しく栄養バランスの整ったフードを選ぶようにしましょう。
<定期的な健康診断を心がける>
・若い頃からの診断を習慣に
若い頃は年に1回、高齢犬になったら半年に1回の健康診断を受けることで、早めに異変に気づけます。
・早期発見で治療をスムーズに
認知機能不全症も、早い段階で気づくことで進行を抑える治療が可能です。普段から愛犬の様子を観察し、気になることがあれば獣医師に相談しましょう。
まとめ
認知機能不全症は高齢犬にとって避けられない課題のひとつですが、日々の工夫や適切なケアによって、その影響を最小限に抑えることができます。
生活環境を整え、バランスの良い食事や適度な運動、知的な刺激を取り入れることで、愛犬の生活の質を守りましょう。
また、若い頃から健康診断や適切な栄養を心がけることで、愛犬の健康を長く支えることができるでしょう。
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