
コラム
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症例
犬の慢性腎臓病について|静かに進行する病気
腎臓病は犬で発生の多い疾患です。特に、ゆっくりと時間をかけて進行していくものを「慢性腎臓病」と呼び、中〜高年齢の動物で多く発生します。
腎臓は体液中の老廃物を除去する働きを担っており、腎機能の維持は愛犬の健康維持のために非常に重要です。
今回は犬の慢性腎臓病について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
原因
慢性腎臓病に至る直接の原因は多岐にわたります。
・加齢による腎機能の自然な低下
・遺伝的要因
・細菌感染やウイルス感染による腎炎
・中毒物質の誤飲、腎臓の血流の低下
・尿路閉塞 等
特に、コッカー・スパニエル、サモエド、ドーベルマン、シー・ズー、ヨーキーなどで発症しやすいことが知られていますが、全ての犬種で慢性腎臓病にかかる可能性があります。
症状
慢性腎臓病は、進行状況によって症状が変化します。
初期の慢性腎臓病では、目立った症状が出ないことがほとんどです。
しかし病態が進行すると、水をたくさん飲み、尿をたくさん排泄する多飲多尿や元気ではあるものの痩せていくなどの症状が出始めます。
さらに症状が進行すると、通常は尿として体外に排出されるべき老廃物が血中に蓄積し尿毒症が起こり、食欲低下、元気消失、嘔吐、下痢、便秘などが見られます。
診断方法
慢性腎臓病の診断には、血液検査や尿検査、血圧検査、腹部超音波検査などの画像診断が行われます。特に腎数値や尿比重、尿中の蛋白質の検査を行うことで、腎臓の機能低下や損傷の程度を評価することが可能です。
腎機能が大きく損なわれると、リンやカリウムなどのミネラルのバランスが崩れます。リンやカリウムが体内に蓄積すると、腎臓やその他の臓器に悪影響が出るため、これらの値も調べておくことが重要です。
最近では、FGF23(線維芽細胞成長因子23)の検査も重要な要素となっています。FGF23は血液中のリンの濃度上昇と関連することがわかっているため、食事療法の開始時期の目安となります。
治療方法
慢性腎臓病を完治させる方法は、残念ながらありません。
そのため、慢性腎臓病の治療では食事療法や点滴などを行い、症状の緩和と腎臓の負担軽減が目的となります。吐き気や食欲不振などの症状が強い場合は、吐き気止めなどの薬物療法を行うこともあります。
また当院では、高カリウム血症治療薬であるロケルマを使用しています。カリウム値が高い場合、従来は点滴を行うしかありませんでしたが、ロケルマを使用することで効果的に管理できるようになりました。
加えて、腎機能が弱まっている中で老廃物の排出を促すには、可能な限りたくさん排尿させる必要があります。そのため、積極的な水分補給が重要です。
予防法やご家庭での注意点
慢性腎臓病の予防には、適切な食事管理やストレスの少ない環境づくりを心がけ、腎臓への負担を最小限にすることが重要です。また水は常に清潔なものを用意し、腎臓に悪影響を与えるような物質の誤飲には注意しましょう。
初期の慢性腎臓病では症状がほとんど出ないため、定期的に健康診断を受け、腎臓の健康状態を確認することも重要です。
まとめ
犬の慢性腎臓病は進行性の疾患であり、早期の発見と適切な管理が重要です。
当院では高カリウム結晶治療薬やFGF23の検査など最新の治療法を取り入れ、愛犬の健康をサポートしていますので、慢性腎臓病でお困りのことがあれば、当院までご相談ください。
■当院の泌尿器科に関連する病気はこちらで解説しています。
・犬の膀胱腫瘍
・猫の尿道閉塞について|尿が出なくなったら非常に危険千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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症例
猫の尿道閉塞について|尿が出なくなったら非常に危険
尿道閉塞とは、固形物(主に尿道栓子、膀胱の炎症によって産生される膿や粘液や結晶のこと)が尿道に詰まることで尿が正常に出なくなってしまう病気で、下部尿路疾患(膀胱炎)に関連して発症することが多く、オス猫ではよくみられます。
結石が尿とともに自然に外へと流れ出てくれればよいのですが、完全に詰まってしまうと急性腎障害や尿毒症といった病気に発展し、一刻を争う事態となってしまいます。
今回は猫の尿道閉塞について、当院での治療方針を中心にまとめました。
原因
尿の元は腎臓で作られて、尿管、膀胱、尿道を経て排尿されます。尿道閉塞は、その中の尿道という尿を体外に排泄する管が詰まってしまうことで引き起こされます。
一般的には尿道栓子が詰まることが多く、特にオスはメスよりも尿道が細いため、発生しやすいといわれています。
また、稀ではありますが、それ以外にも膀胱に腫瘍があると、その一部が尿道に移動して詰まることもあります。
症状
尿道閉塞になるとほとんど尿が出なくなるため、非常に危険です。そのため、
・頻繁にトイレに行くものの尿が出ない
・尿に血が混じる
・尿がぽたぽたとしか出ない
といった尿に関する症状が現れます。
また、尿を出したいのに出せないため、苦しさや痛みからウロウロとして落ち着かない、元気・食欲がない、といった様子もみられます。
こうした状態が続くと、急性腎障害や尿毒症にまで発展してしまいます。
急速に全身の状態が悪化することで、最終的に発作や不整脈を起こして命を落としてしまう危険性もあります。
診断方法
問診、身体検査、血液検査やエコー、レントゲン、尿検査などを組み合わせて診断します。
治療方法
治療には内科療法と外科療法がありますが、尿道閉塞の猫は生死をさまよっているケースも多いため、まずは緊急の処置として尿道にカテーテルを挿入し、排尿を促す必要があります。
その後、内科療法を選択する場合は、状態に応じて入院下での治療を行い、状態が安定したら自宅で再発を予防する治療(尿路結石用の療法食を与えるなど)、といった方法で管理します。
ただし、こうした治療をしても尿道閉塞を何度も繰り返す場合は、手術が必要になる場合が多いです。
当院では2〜3回、尿道閉塞を繰り返すようであれば手術による治療をお勧めしています。その術式は会陰尿道造瘻術と呼ばれるもので、この手術を行うことで尿道閉塞が再発しづらくなりますが、尿道が陰茎を通らずに皮膚へと開口するため、術後は細菌性膀胱炎を始めとする合併症が起こりやすくなることが知られており、およそ2割で発症し、再発も多いといわれています。
ご家庭での注意点と予防法
具体的な対策としては、新鮮な水を常に飲める状態にしておく、食事中の水分を多くする、トイレは猫の頭数プラス1台用意する、トイレを清潔に保つ、トイレの形状や砂の材質などをお気に入りのものに変えてみる、といったことが挙げられます。
まとめ
尿道閉塞は特にオス猫に多くみられ、放置すると腎障害や尿毒症に進行する恐れがあります。
今回ご紹介したような様子がみられたら、早めに動物病院を受診しましょう。
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<参考文献>
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症例
犬や猫の子宮蓄膿症について|避妊手術による予防が有効
子宮蓄膿症とは、陰部から細菌が侵入し子宮内で増殖することで、子宮に膿が溜まる疾患です。多くが発情後2か月以内の黄体期と呼ばれる期間に発症します。9歳以上の未避妊のメス犬では発生率が66%と言われており、非常に多く見られる疾患です。
一方、猫では発症率は高くありませんが、未避妊であれば発症リスクがあります。今回は、そんな犬や猫の子宮蓄膿症の原因や予防法について詳しく解説していきます。
原因
発情後に分泌されるプロゲステロンという性ホルモンは、子宮内膜の増殖や子宮内の免疫低下など、細菌の増殖に適した環境を作ってしまいます。そのため、肛門や陰部付近に存在する大腸菌が子宮内に侵入し感染することで、本疾患を発症します。原因菌は他にもサルモネラ菌やブドウ球菌のこともあります。
症状
子宮蓄膿症の症状は下記が挙げられます。
・元気消失
・食欲低下や食欲喪失
・陰部から血膿のようなものが出る
・多飲多尿
・発熱
・虚脱 など
陰部からおりものや膿が出ている開放型の場合は気がつきやすいものの、閉鎖型といって子宮から膿を排出できない病態の場合、発見は困難です。
また、開放型でも、排出された膿を犬猫が舐め取ってしまい何もないように見えることもあります。しきりに陰部付近を舐めている場合は注意しましょう。
診断方法
エコー検査で膿が貯留している子宮を確認し診断されます。
あわせて、全身状態の把握のために血液検査やレントゲン検査を行います。
血液検査では多くの場合、白血球数や炎症性マーカーの上昇が見られます。
治療方法
子宮蓄膿症の治療は、内科治療と外科治療の2つがあります。
抗生剤を中心とした内科的治療が選択される場合もありますが、一時的に状態が改善しても再発することが多く、根本的な解決にはなりません。
外科治療では、膿の溜まっている子宮と卵巣を摘出します。
子宮を取るので再発することはなく、根本的な完治が望めますが、早期に手術を行ってもその後の死亡率は5~8%とされています。発見が遅れると手術を行ったとしても救命率が下がりますので、早期発見、早期治療が重要です。
予防法や注意点
子宮蓄膿症の確実な予防方法は、避妊手術を行うことです。
健康で若い体にメスを入れることに躊躇する飼い主様も多いですが、病気になってから手術を行うよりも低リスクで、体への負担も軽度です。
また、早期の避妊手術により、子宮蓄膿症だけでなく乳腺腫瘍の発症率を下げることもできます。
まとめ
子宮蓄膿症は、子宮内の細菌由来の毒素が全身に回り敗血症を起こしたり、膿の貯留により子宮が破裂したりと、緊急性が高い病気です。大切なペットの命を危険に晒さないためにも、病気になる前に避妊手術を受ける選択を検討することをお勧めします。
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症例
犬の喉頭腫瘍について|原因や症状、治療法について解説
喉頭は口の奥の気管の入り口で、食べたものが気管に入らないように蓋をする役目の部分です。この喉頭に腫瘍が生じると、喉頭内腔が狭くなり、呼吸困難などの症状を引き起こします。
今回は、犬の喉頭腫瘍の原因や予防法について詳しく解説していきます。
原因
犬の原発性喉頭腫瘍は稀で、扁平上皮癌といわれる悪性腫瘍が最も多いといわれています。原発性ではなく、全身性あるいは転移性の腫瘍が喉頭に発生することもあります。
症状
喉頭腫瘍の症状としては、鳴き声が変わる、食べ物を飲み込む際に辛そうにするといった嚥下障害などの症状が見られます。
さらに進行すると、喘鳴や努力性呼吸、呼吸困難(酸欠からチアノーゼ)、意識喪失などがみられるようになります。
急性の呼吸困難を引き起こし、最悪の場合は死に至るケースもあります。診断方法
喉頭腫瘍は主にX線、超音波検査 、CT検査により、喉頭部分に腫瘍が存在することを画像上で確認することにより診断されます。
また、場合によっては内視鏡検査が必要になるケースもあります。
さらに、腫瘍が良性か悪性か、悪性度などを確認するには、病理組織診断が必要です。治療方法
治療方法は主に外科治療であり、喉頭全摘出術により喉頭を丸ごと除去するか、腫瘍のみを取り除く手術が選択されます。
しかし、良性腫瘍であれば、このような外科的治療により根治が可能ですが、悪性腫瘍では多くの場合症状を緩和する目的で行われます。予防法や注意点
喉頭腫瘍に予防法はありません。
犬の喉頭腫瘍は緩やかに進行するため、早期発見が難しく、進行して重度な呼吸困難などが生じた段階で気付くケースが大半です。
そのため、日頃から愛犬をしっかり観察し、気になる様子があれば早めに動物病院を受診するようにしましょう。まとめ
喉頭腫瘍などの腫瘍は、早期発見で治療やその後の経過も良好になる可能性が高くなります。
日常的に愛犬をしっかり観察し、早期発見・早期治療に努めましょう。千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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症例
犬や猫の皮膚のできもの(体表腫瘤)について
犬や猫の身体に体表腫瘤ができている場合には、要注意です。
本記事では、当院でも症例がある、犬や猫の体表腫瘤の症状、診断・治療方法について詳しく解説していきます。
犬や猫の体表腫瘤の症状
犬や猫の体表腫瘤では、腫瘤の種類によってさまざまな症状がみられます。
脂肪腫や組織球腫のような良性の腫瘍では、無症状のケースも多くみられますが、悪性腫瘍の場合、自壊により化膿したり、痛みを伴ったりすることもあります。
良性腫瘍でもあまりにも大きすぎると、生活に支障が出ることもあるので注意が必要です。
犬や猫の体表腫瘤の種類
犬や猫の体表にできる腫瘤には、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
ここからは、良性腫瘍と悪性腫瘍に分けて詳しく解説していきます。
【良性腫瘍】
犬や猫の良性腫瘍には以下のような腫瘍が考えられます。
・脂肪腫
脂肪組織の良性腫瘍であり、中高齢の犬の体表に良くみられる腫瘤です。
ほとんどが無症状であり、生活にも支障をきたさないため経過観察をとることが多いものの、大きくなりすぎると外科手術を行い取り除く必要があります。
・組織球腫
組織球腫は、若齢の犬でよくみられる良性の腫瘍です。
赤く腫れた丸い腫瘤を体表に作り、急速に大きくなることもあります。
ほとんどの組織球腫は1〜2ヶ月ほどで自然に退縮していきます。
【悪性腫瘍】
悪性腫瘍では、以下のような腫瘍が考えられます。
・軟部組織肉腫
繊維肉腫や脂肪肉腫、末梢神経肉腫、血管周皮腫などの軟部組織肉腫と呼ばれる悪性腫瘍は、皮下に硬く触れる腫瘤として発見されるケースが多いと考えられます。
手術によって切除することが推奨されますが、筋肉に腫瘍細胞が固着している場合もあり、再発や転移が起きることもあります。
・乳腺腫瘍
中高齢の未避妊メスでは、乳腺腫瘍に気をつけなければいけません。
乳腺にできる腫瘤のうち、犬では約5割、猫ではほとんどが悪性の乳腺腫瘍であると言われています。転移も起こりやすい腫瘍であるため早期の対処が必要です。
・肥満細胞腫
体表に赤いしこりを見つけた場合には、肥満細胞腫を疑う必要があります。
特にパグやフレンチ・ブルドックといった犬種では好発する腫瘍であるため注意が必要です。生検を行い悪性度に合わせた治療が適用されます。
・肛門嚢腺癌
肛門にできる悪性腫瘍としては、肛門嚢腺癌があります。
体内のリンパ節に転移し便秘や嘔吐などの消化器症状を引き起こす場合や、自壊することもあるため早期の対処が必要な腫瘍です。
犬や猫の体表腫瘤の診断方法
体表腫瘤を診断する場合には、針を使っての生検や手術による切除生検を行う必要があります。
それぞれの診断方法の特徴は以下の通りです。
・針生検
腫瘤に針を刺すことにより細胞を採取する。無麻酔下で行える。
・切除生検
麻酔をかけて腫瘤を切除し組織を採取する。小さな腫瘤ならば全て切除可能。
針生検は無麻酔下でも行えますが、細胞が採取できない場合もある点がデメリットです。
切除生検は、細胞を採取することは可能ですが、麻酔リスクなどもあるため術前検査が必要です。
犬や猫の体表腫瘤の治療方法
犬や猫の体表腫瘤の治療方法は、腫瘤の種類や転移の有無などによってさまざまです。
悪性腫瘍では、手術後も再発や転移防止のために化学療法や放射線治療が適応となることもあります。
また、すでに他の臓器へ転移している場合は手術が適応とならない場合もあるため、術前検査時の画像検査(レントゲン、エコー)や麻酔下CT検査での判定が重要です。
まとめ
犬や猫の体表腫瘤は、良性腫瘍と悪性腫瘍があり、治療も腫瘍の種類や転移の有無などの状態によってさまざまですので、それぞれの個体に合った治療方法を選択していく必要があります。
悪性腫瘍の場合には、転移する前に早めに対処する必要があるでしょう。
体表腫瘤がある犬を診察する際には、しっかりと検査を行い適切な治療を行うようにしてください。
姉ヶ崎どうぶつ病院は一緒に働く仲間を募集しています
姉ヶ崎どうぶつ病院は1.5次診療施設で質の高いジェネラリストを目指し、地域獣医師医療を担う動物病院です。
獣医師、動物看護師ともに育成プログラムが充実しており、「獣医師や動物看護師として経験を積んで成長しやすい環境」が整っています。
目の前の課題に対し、しっかり取り組む方、誠意をもってコミュニケーションを取る方、
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症例
犬や猫の口腔内腫瘍について
犬や猫の口の中にできものができている場合には、口腔内腫瘍の可能性も考えなければなりません。
悪性腫瘍である場合には、積極的な治療を行わないと動物の生活の質(QOL)を著しく低下させます。
本記事では、当院でも症例がある、犬や猫の口腔内腫瘍の症状、診断方法、治療・予防方法について解説します。
口腔内腫瘍の症状
犬や猫の口腔内腫瘍でよくみられる症状は以下の通りです。
・よだれ
・顔面の腫脹
・出血
・潰瘍
・口臭
・食欲不振
口内炎や歯周病の症状とも似ているため、獣医師はしっかりと口腔内を確認して腫瘍を見逃さないようにしなければなりません。
腫瘍が大きくなると、食欲不振だけでなく、呼吸困難などの症状もみられる場合もあるため、進行する前に早期の対処が必要です。
また腫瘍が大きくなってくると、採食ができなくなる以外にも呼吸困難を引き起こす症例も存在します。
口腔内腫瘍の種類
悪性の口腔内腫瘍として、以下のような腫瘍が多くみられます。
・悪性黒色腫
・扁平上皮癌
・線維肉腫
・棘細胞性エナメル上皮腫
猫においては、口の中にできる腫瘍の悪性度は高く、扁平上皮癌が特に多くみられます。
良性の腫瘍も存在しますが、悪性腫瘍の場合には局所浸潤や他の臓器への転移を引き起こすため、注意が必要です。
口腔内腫瘍の診断方法
犬や猫の口腔内腫瘍の診断方法には、基本的に生検が必要です。
口腔内腫瘍に対して無麻酔で針生検を行うのは困難なため、麻酔や鎮静下の安全な状況で、パンチ生検や切除生検を行う必要があります。
見た目での判定は難しく、悪性黒色腫は、黒いカリフラワー状のしこりのように見えることが多いとされていますが、黒色の色素を持たない悪性黒色腫も存在します。また良性腫瘍でも同様の見た目のものが存在します。
猫で多い扁平上皮癌は、赤いカリフラワー状、繊維肉腫は硬く膨らんでくるように増殖するのが特徴ですが、その限りではありません。
犬や猫の口腔内腫瘍の治療方法
犬や猫の口腔内腫瘍の治療は、主に外科手術による腫瘍の切除です。
積極的な外科手術は骨を削るような侵襲性の強い手術(実施の場合は紹介となります)になることも多いため、術後の見た目の変化、動物への負担、術後のケアについて、手術前にご家族と獣医師がよく話し合うことが重要です。
進行して外科適応とならない症例や、術後悪性腫瘍が判明した場合、進行を遅くしたり、再発や転移防止を目的とした化学療法や放射線治療が適応になることもあります。
また転移の有無は予後の判定や治療方針を決定するために重要です。
術前検査時の画像検査(レントゲン、エコー)や麻酔下CT検査、転移が疑われる組織の細胞診、組織診断にて相対的に評価します。
犬や猫の口腔内腫瘍の予防方法
犬や猫の口腔内腫瘍に対する予防方法は、残念ながらありません。
しかし歯肉炎や歯周病からくる炎症が腫瘍の発生に関与しているという見方もあり、日常的なデンタルケアや口腔内のチェックをこまめに行うことが腫瘍の早期発見・早期治療につながります。
まとめ
本記事では、犬や猫の口腔内腫瘍の症状、診断方法、治療方法について解説してきました。
犬や猫の口腔内腫瘍は、進行して大きくなるとさまざまな症状を引き起こしQOLの低下につながります。
早期に発見治療を行うことが大切です。診察においても口腔内のチェックをしっかりと行うようにしましょう。
日常的なデンタルケアと、早期発見・早期治療が大切です。
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獣医内科学 第2版 p193-194続きを読む > -
症例
犬や猫の肛門周囲腫瘍について
犬猫の肛門周囲腫瘍は、良性のものから悪性のものまでさまざまです。
それぞれ病態や治療方法も変わってくるため、しっかりと病気について理解する必要があるでしょう。
本記事では、当院でも症例がある、犬猫の肛門周囲腫瘍の症状、診断・治療方法について解説します。
肛門周囲腫瘍の種類
肛門周囲の腫瘍は主に以下の3つが考えられます。
・肛門周囲腺腫
・肛門周囲腺癌
・肛門嚢アポクリン腺癌
肛門周囲腺腫は、良性腫瘍です。
肛門周囲腺癌や肛門嚢アポクリン腺癌は悪性腫瘍であり遠隔転移や周辺臓器、リンパ節への浸潤が見られます。
猫では、肛門周囲腺が存在していないため、肛門周囲の腫瘍は稀です。
肛門周囲腫瘍の症状
肛門周囲腫瘍の症状は、以下の通りです。
・お尻にしこりができる
・腫瘍から出血する
・お尻を地面に擦り付ける
・便秘
・食欲不振
・嘔吐
初期段階では、お尻にしこりができているだけで無症状のケースも多く見られます。
病状が進行すると、腫瘍から出血したり便秘が見られたりします。
肛門周囲腫瘍の診断方法
肛門周囲腫瘍の診断方法は、以下の通りです。
・身体検査
・血液検査
・画像検査(レントゲン、エコー、CT検査)
・FNA検査、生検
身体検査では、肛門周囲の腫瘤を確認します。
また、リンパ節への転移や便秘の状態を調べるために直腸検査を行う必要もあります。
血液検査では、高カルシウム血症の有無を確認します。
肛門嚢アポクリン腺癌では、腫瘍随伴症候群として、高カルシウム血症を示すことがあるので、腫瘍の鑑別に有効です。
そのほか、転移や浸潤を確認するために、画像検査を行います。
腫瘍をより高精度に診断するためにFNA検査や生検を行うことも必要でしょう。
肛門周囲腫瘍の治療方法
肛門周囲腫瘍の治療は、腫瘍の種類によって変わります。
【肛門周囲腺腫】
性ホルモンが関与しており、去勢手術により腫瘍の縮小化が期待できます。
縮小後に手術により腫瘤を摘出したり、手術が必要ないほどのサイズになったりすることもあります。
縮小しないものや再発したものに関しても外科的処置が必要になるでしょう。
【肛門周囲腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌】
外科的手術を行い、腫瘍や浸潤したリンパ節の切除を行う必要があります。
再発や転移することも多い腫瘍であるため、手術後の抗がん剤や放射線治療などの治療を行うことも必要です。
肛門周囲腫瘍の予防法
肛門周囲腺腫は去勢手術により予防可能です。
その他の肛門周囲腫瘍については、原因がはっきりわかっていないため、予防することは困難です。
腫瘍の早期発見・治療が大切になるため、身体検査をしっかり行う必要があります。
まとめ
本記事では、犬の肛門周囲腫瘍の症状、治療・予防法について解説してきました。
肛門周囲腫瘍には、良性や悪性のものがあり、治療方法もさまざまです。
正確な診断を行い、適切な治療方法を選択するようにしましょう。
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獣医内科第2版 p236続きを読む > -
症例
犬や猫の消化管間質腫瘍(GIST)について
犬猫の消化管間質腫瘍は、消化管筋層の細胞が腫瘍化した腫瘍です。
症状としては、嘔吐や食欲不振、体重減少が認められます。
本記事では、犬猫の消化管間質腫瘍の原因、症状、診断・治療方法について解説します。
消化管間質腫瘍とは
消化管間質腫瘍は、GISTとも呼ばれ、消化管腫瘍の1つです。
犬猫の消化管間質腫瘍は、盲腸、小腸、胃などに発生し巨大な腹腔内腫瘍を形成します。
猫での発生は稀であり、犬によく認められる疾患です・
転移率は報告されていませんが、腹腔内に播種したり術後に再発したりする場合もあります。
消化管間質腫瘍の原因
消化管間質腫瘍は、消化管筋層に存在するカハール介在細胞が腫瘍化したものです。
遺伝子の突然変異が原因として考えらえており、特にc-kit遺伝子の変異が関与していると考えられています。
消化管間質腫瘍の症状
消化管間質腫瘍の症状は以下の通りです。
・嘔吐
・下痢
・食欲不振
・体重減少
初期段階では、無症状であるケースも多く見られます。
進行すると腸穿孔による腹膜炎、腫瘍からの出血などが見られる場合もあります。
消化管間質腫瘍の診断方法
消化管間質腫瘍の診断方法は、以下の通りです。
・血液検査
・画像検査(レントゲン、エコー、CT検査)
・切除生検
消化管腫瘍の場合には、低アルブミン血症になっている場合も多く血液検査で、全身状態を把握しておくことが必要です。
画像検査では、腫瘍の大きさと位置や転移の有無を確認します。
消化管間質腫瘍は切除した組織で病理学的検査を行い確定診断していきます。
FNA検査を行う場合もありますが、腫瘍からの出血や消化管穿孔のリスクがあることに留意しておかなければなりません。
消化管間質腫瘍の治療方法
消化管間質腫瘍の治療方法は、外科手術で腫瘍を切除することが第一選択です。
※全身状態の把握と術前検査を目的に、血液検査や画像検査等が必要です。
転移している場合や再発予防のために、手術後に分子標的薬のイマチニブを使用することもあります。
消化管間質腫瘍の予後
消化管間質腫瘍の予後は明確になっていない部分が多いものの、完全切除し転移もない状態ならば、予後は良い傾向にあります。
しかし、転移があったり、腫瘍の悪性度が高かったりすると術後に死に至る可能性もあるため注意が必要です。
まとめ
本記事では、犬猫の消化管間質腫瘍の原因や症状、診断・治療法について解説してきました。
消化管間質腫瘍は、放置していると腹膜炎や消化管穿孔を引き起こし死に至る場合もあります。
消化器症状や体重減少など非特異的な症状として現れることが多いため、当院ではこういった所見がある犬猫を診察する際には慎重に検査を進めています。
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姉ヶ崎どうぶつ病院は1.5次診療施設で質の高いジェネラリストを目指し、地域獣医師医療を担う動物病院です。
獣医師、動物看護師ともに育成プログラムが充実しており、「獣医師や動物看護師として経験を積んで成長しやすい環境」が整っています。
目の前の課題に対し、しっかり取り組む方、誠意をもってコミュニケーションを取る方、そして動物はもちろん、飼い主様やスタッフ同士の気持ちを理解しようと努力する方の応募を心からお待ちしています。
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獣医内科学p209
犬と猫の治療ガイドp851-853続きを読む > -
症例
犬や猫の前十字靭帯断裂について
膝関節内に存在する前十字靭帯断裂が損傷した状態を、前十字靭帯損傷と呼びます。特に中年齢以降の犬において非常に一般的な跛行の原因疾患です。
本記事では、犬や猫の前十字靭帯損傷の原因、症状、診断方法、治療方法について解説します。
犬や猫の前十字靭帯断裂の原因
犬の前十字靭帯損傷の背景には、加齢等に伴う靭帯の変性(劣化)が存在することがほとんどです。人のように、交通事故や運動などで急性に靭帯が断裂することは比較的稀です。
靭帯変性が生じる原因は解明されておらず、大型犬から小型犬まで、ありとあらゆる犬種で前十字靭帯の損傷が生じ得ます。
猫の前十字靭帯損傷の原因はよくわかっていませんが、犬同様に靭帯の変性は先行している可能性が指摘されています。
犬や猫の前十字靭帯断裂の症状
前十字靭帯の症状は以下の通りです。
・患肢の挙上
・患肢の負重性跛行
犬や猫の前十字靭帯の診断方法
前十字靭帯損傷の確定診断は関節鏡もしくは関節切開での前十字靭帯の確認となりますが、ほとんどの場合は触診やレントゲン検査で臨床診断することが可能です。
情報量を増やすために、超音波検査や関節液検査が有用であることもあります。
触診では、関節液の増量を示唆する膝の腫脹を確認した上で、膝を伸ばしたときの痛み(過伸展痛)や、大腿脛関節の不安定を検出する試験(脛骨圧迫試験や脛骨前方引き出し試験)を行います。
レントゲン検査では、脛骨と大腿骨の位置関係や、骨関節炎の程度を確認します。
また、関節内の液体貯留により膝蓋下脂肪体が圧排される所見である「ファットパッドサイン」も前十字靭帯損傷の早期から認められる所見です。
ただし、炎症性関節疾患や腫瘍などが併発していることもありますので、これらの除外診断には関節液検査やCT検査、組織検査などの追加検査が必要となることもあります。
犬や猫の前十字靭帯断裂の治療方法
前十字靭帯断裂の治療方法は、主に「内科療法」と「外科手術」の2つの治療方法が考えられます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
内科療法
内科療法では、痛み止めの内服と一定期間の安静管理を指示します。
体重の軽い小型犬や猫の場合には、明らかな跛行が消失することもありますが、関節のズレは改善しないことも多く、長期的な骨関節炎の進行などには注意を要します。体重15kg以上の大型犬では、内科治療が功をそうする可能性は低いとされています。
外科治療
これまで様々な手術方法が考案されていますが、近年は脛骨を半円形に骨切りし、関節の角度を矯正することで機能的に膝を安定化させる、TPLO法と言われる手技が犬では広く選択されています。猫に最適な外科治療の手技については未だ議論があります。
まとめ
本記事では、犬と猫の前十字靭帯断裂の原因、症状、治療方法について解説しました。
前十字靭帯断裂は膝蓋骨脱臼と並んで本法で最も遭遇しやすい整形外科疾患の一つですので、よく理解しておくことが重要です。
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姉ヶ崎どうぶつ病院は1.5次診療施設で質の高いジェネラリストを目指し、地域獣医師医療を担う動物病院です。
獣医師、動物看護師ともに育成プログラムが充実しており、「獣医師や動物看護師として経験を積んで成長しやすい環境」が整っています。
目の前の課題に対し、しっかり取り組む方、誠意をもってコミュニケーションを取る方、そして動物はもちろん、飼い主様やスタッフ同士の気持ちを理解しようと努力する方の応募を心からお待ちしています。
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症例
犬と猫の膝蓋骨脱臼の原因と症状は?診断・治療方法について解説
膝蓋骨脱臼は小型犬に多くみられる疾患ですが、猫や大型犬でも発生します。
脱臼の頻度や症状の有無に応じて、個々の動物ごとに治療法を判断します。
本記事では、犬と猫の膝蓋骨脱臼の原因と症状、診断、治療方法について解説します。犬と猫の膝蓋骨脱臼の原因
犬と猫の膝蓋骨脱臼は、明らかな外傷なく自然発生的に生じることが多いとされています。様々な研究がされていますが、その正確な病態は解明されていません。稀ではありますが、急激な方向転換や落下など、外傷が原因で生じることもあります。
犬と猫の膝蓋骨脱臼の症状
犬と猫の膝蓋骨脱臼の症状は以下の通りです。
・間欠的に足を挙上する(スキップ)
・足を挙上したまま歩く
・O脚(ガニ股)で腰を落として歩く同じ脱臼の頻度でも、症状の重症度には症例ごとに大きな違いが存在します。また、重度の疼痛を示すことは少ないため、飼い主様自身が異常に気づいていないこともあります。
犬と猫の膝蓋骨脱臼の診断方法
犬と猫の膝蓋骨脱臼の診断は、触診で行います。立位・横臥位それぞれで実施し、脱臼の頻度や左右差、脱臼時の患肢機能を評価します。
レントゲン検査は、飼い主への説明や、その他疾患の除外、手術計画などに有用です。重篤な症例では、CT検査を行い3次元的に骨形態の評価を行うこともあります。脱臼の頻度は、一般的に以下の4段階に分類されます。
・グレード1:膝蓋骨を手で押すと脱臼するが、離すと元の位置に戻る。
・グレード2:膝関節の可動に伴い、自発的に脱臼と整復を繰り返す。
・グレード3:膝蓋骨は常に脱臼しているが、用手で整復可能。
・グレード4:膝蓋骨は常に脱臼しており、用手で整復不可。脱臼の頻度(グレード)は上記のように分類されますが、治療介入の有無には年齢や体重、症状の程度などグレード以外の要素も考慮する必要がありますので、個々の症例でオーダーメードに判断を行います。
また、膝蓋骨は小型犬に好発する疾患であるため、膝蓋骨は脱臼する症例でもその他の疾患が跛行の原因なっていることもあり、鑑別診断が重要です。特に中年齢以降では、前十字靭帯損傷の併発が好発します。
犬と猫の膝蓋骨脱臼の治療方法
犬と猫の膝蓋骨脱臼の治療方法は以下の通りです。
・保存治療
・外科治療それぞれについて解説します。
保存治療
手術を行わずに経過観察を行う方法です。
疼痛などが強い症例では痛み止めの使用などが検討となりますが、あくまで対症療法となり、膝蓋骨の脱臼を防ぐことはできない点に注意が必要です。外科手術
複数の手技を組み合わせて実施することが一般的です。
膝蓋骨脱臼で行われる手技には以下のようなものが挙がられます。・軟部組織の縫縮/解放:過剰に弛緩/緊張した内外側の軟部組織のバランスを調節する
・滑車溝形成術:膝蓋骨のはまるべき溝である滑車溝を深くする
・脛骨粗面転移術:膝蓋腱の付着部である脛骨粗面の位置を矯正する
・骨切り術:大腿骨や脛骨の形を矯正する犬と猫の膝蓋骨脱臼の予防方法
膝蓋骨脱臼の発生を完全に予防することはできませんが、滑りやすい生活環境はリスク因子になる可能性があります。フローリングにマットを敷く、バリカンで肢先の毛を刈るなどの生活指導をすると良いでしょう。
まとめ
膝蓋骨脱臼は頻発する関節疾患ですが、その治療方針は個々の症例ごとに判断することが必要となります。
またよく遭遇する疾患である一方、膝蓋骨が脱臼していてもその他の疾患が跛行の原因となっていることもありますので、慎重に診療に当たる必要があります。姉ヶ崎どうぶつ病院は一緒に働く仲間を募集しています
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症例
犬の膀胱腫瘍
こんにちは、獣医師の會田です!
今回は犬の膀胱腫瘍について解説していきたいと思います。
犬の膀胱腫瘍は治療計画を練る際、非常に悩むポイントの多い腫瘍です。
その理由として…・膀胱腫瘍は悪性が多い
・発見時、進行した状態で見つかることが多い
・腫瘍のできた位置や大きさ進行具合で排尿障害(=尿をしたくても出しにくい、出せない)が起きた場合、QOL(生活の質)が非常に低下する
・局所浸潤が強く、手術となると侵襲的になるケースがある
・遠隔転移がよくみられ、転移の場所によってはさらにQOLが下がる
・治療の選択肢で内科治療を行うことが多いが、高齢犬は腎機能が低下している個体が多いため、治療の継続が難しくなるケースがあるしかしそんな治療の難しい膀胱腫瘍に新しい薬の選択肢ができました。
今回はその治療薬と共に、膀胱腫瘍の診断と治療について詳しく紹介していきたいと思います。当院では犬の膀胱腫瘍に関して、飼い主様と相談しながら診断・治療を行っています。
気になる症状がありましたらお気軽にお問い合わせください。※膀胱腫瘍は猫での発生が稀なため、今回は犬の膀胱腫瘍に焦点を当ててお話しします。
概要
犬の膀胱腫瘍は、犬の腫瘍全体の0.5〜1%、悪性腫瘍の2%を占めます。
一言で膀胱腫瘍といえども組織学的分類はさまざまあり、そのほとんどが膀胱・尿道の尿路上皮癌/移行上皮癌(74%)と言われています。この腫瘍は前述の通り非常に悪性度が高く、挙動が悪い腫瘍で有名です。原因や傾向
膀胱・尿道の尿路上皮癌/移行上皮癌は高齢犬での発生率が高く、オスよりもメスに多くみられます。また、スコティッシュテリアやシェットランド・シープドッグ、ビーグルなど特定の犬種に多いことから、遺伝的要因が関与していると考えられています。その他、除草剤への暴露や肥満などの関連性が示唆されています。
症状
頻尿や血尿、排尿困難、下腹部痛など、膀胱炎と同じような症状がみられます。また、尿が完全に出なくなってしまうと(尿道閉塞、尿管閉塞)尿毒症を引き起こすため、全身状態の低下が認められます。
膀胱移行上皮癌は骨への転移をすることが知られており、その場合は動物の跛行(はこう:正常な歩行ができない状態)の原因になります。腰椎に転移した場合は、神経障害も併発することが知られています。診断方法
いくつかの検査を組み合わせて総合的に診断しますが、確定診断には病理組織検査が必要です。
・画像検査(超音波検査、レントゲン検査、CT検査)
膀胱腫瘍は超音波検査を実施している時に発見することがほとんどです。
腫瘤性病変の確認、位置の特定、膀胱筋層への浸潤程度などを確認します。単純レントゲン検査では膀胱粘膜の病変を描出することは困難ですが、周囲の組織への影響(リンパ節の腫脹、骨転移等)を確認することが可能です。ただし病変が小さい場合は、進行に伴って異常が発見されることもあります。
CT検査は麻酔下で行う検査です。腫瘍の周囲組織への浸潤程度や播種、遠隔転移を評価します。また造影剤を使って腫瘍と尿管の位置関係を把握します。
・細胞診
・組織検査
細胞診をする上で一般的な検査は針生検ですが、膀胱腫瘍に関しては尿道カテーテルを介して腫瘍細胞や組織の一部を採材する方法が選択されます。
採材した細胞や組織は染色や固定を経て、診断医の元へ送られます。・遺伝子検査(BRAF遺伝子変異検査)
犬の移行上皮癌や前立腺癌では、BRAFという遺伝子の変異が認められることが多いとされています(70〜90%)。変異が確認された場合もされなかった場合も確定診断には至りませんが、上記の検査を複数組み合わせて行うことによって診断精度が上がるため、当院でもご提案しています。治療方法
腫瘍治療の三本柱は外科療法、内科療法、放射線療法と言われていますが、膀胱移行上皮癌に関しては術後の合併症や管理の問題から内科療法が選択されることが多いです。
今回は当院で行なっている内科療法をご紹介します。使用するお薬
・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
・抗がん剤
・分子標的薬今まではNSAIDsや抗がん剤を使った治療がメインでしたが、効果のあるとされる薬は腎臓への負担が大きく、すでに腎機能不全のある動物では選択しにくい治療薬でした。
しかし冒頭でも述べた分子標的薬は副作用が少なく、生存期間を延長させられる可能性のある治療薬として、2022年に論文で発表された治療法です。それがHER2阻害薬「ラバチニブ」です。
従来使われていたNSAIDsと併用により、腫瘍を完全に消失させることは難しいものの、
腫瘍のサイズを縮小させたり、維持する効果が確認されたという報告です。
高い効果、副作用の少なさ、治療の侵襲度の低さから、是非おすすめしたい治療方法ではありますが、デメリットがあるとしたら費用です。体重によって使用量は変わってくるので、治療方針は担当の獣医師とよく相談し、飼い主様と動物にとって一番良い治療を選択していければと思っております。
膀胱腫瘍の予防法や飼い主様が気を付けるべき点
腫瘍は予防が難しいものの、膀胱の移行上皮癌の危険因子に「肥満」が含まれているため、食事管理や適度な運動で適正体重の維持を目指しましょう。
また、膀胱腫瘍は発見が遅れれば遅れるほど予後も悪くなります。 高齢犬で膀胱炎のような症状がみられた場合には、なるべく早めの受診をおすすめいたします。
まとめ
犬の膀胱腫瘍自体の発生率は低いものの、その多くが移行上皮癌であるため注意が必要です。膀胱腫瘍は肉眼で見ることはできませんが、血尿や頻尿など飼い主様が気付きやすい症状が現れるため、異常がみられた場合はなるべく早めの受診をお願いします。
また当院では、治療効果が認められている分子標的薬を使った治療も行っております。
ご質問やご相談は、お気軽にお問い合わせください。千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
診療案内はこちらから<参考>
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1090023315000350?via%3Dihub
https://www.nature.com/articles/s41598-021-04229-0続きを読む > -
症例
犬の潜在精巣(=停留精巣、陰睾)について|放置すると精巣腫瘍の発生率が高まってしまう先天性疾患です
こんにちは、獣医師の會田です。
最近潜在精巣の子犬さんの去勢手術をすることが多かったので、啓蒙の意味も含め、潜在精巣について解説していこうと思います。
精巣は通常、生後6ヶ月齢くらいまでに腹腔内から陰嚢に下降します。これが正常に下降せず、腹腔内や鼠径部に留まってしまう状態のことを潜在精巣、停留清掃、陰睾と言います。
小型犬に発生が多く、そのままにすることで精巣腫瘍の発生リスクが高まること、また常染色体劣勢遺伝子が関与する遺伝性の疾患であることから、若い年齢での去勢手術が望まれる疾患です。
原因
先ほども記載させていただきましたが、潜在精巣は遺伝性疾患です。
チワワやトイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズ、ミニチュア・ダックスフンド、たまに大型犬の子など、主に純血種の小型犬に多く発生します。
症状と合併症
症状は無症状であることがほとんどです。
ただし下降していない精巣が捻転(=捻れる)したり腫瘍化すると、さまざまな症状を引き起こします。
精巣捻転は急性で重度の腹痛症状を引き起こし、一般状態の低下が認められます(稀な病態ですが、実際捻転を起こした子はかなり痛そうにしていました…)。気になって痛みの強い場所を舐める子もいます。
腫瘍化した場合は腫瘍の種類によって、起こってくる症状はさまざまです。
精巣にできる腫瘍で上位を占めるのが、セルトリ細胞腫、精上皮腫、間細胞腫です。
セルトリ細胞腫は性ホルモンのエストロジェンを産生するため、この腫瘍の25〜50%の犬に高エストロジェン血症(左右対称性脱毛、貧血等)の症状が認められると言われています。高エストロジェン血症によって骨髄毒性が起きた場合や転移を引き起こした場合は生死に関わる事態なので、去勢手術をすることで未然に防げるのであれば是非行っていただきたいという想いです。
診断方法
身体検査で発見されることが多いです。
陰嚢部分を触診し、片方、もしくは両方の精巣が降りてきているかどうかを確認します。
動物が小さい場合はわかりにくいこともあるので、状況によってはエコーを用いて、精巣の位置を確認することもあります。
治療方法
潜在精巣を内科的に治療することはできないので、治療には若い年齢での去勢手術を行う必要があります。※通常の去勢手術とは異なり、精巣の位置によっては開腹が必要になることも。
気づいた時は無症状の潜在精巣も、そのままにしてしまうと、精巣腫瘍の発生率が10倍前後も高くなることがわかっています。犬種や成長具合にもよりますが、生後6ヶ月を過ぎたら去勢手術の実施することをご検討いただきたいです。
当院で実施している避妊・去勢手術についての詳細はこちらのページをご覧ください
予防法や飼い主様が気を付けるべき点
先程もご紹介したとおり、潜在精巣は遺伝的要因が大きく関係しています。
そのため、潜在精巣の犬を繁殖犬にしないこと、ブリーダーさんから購入した子が潜在精巣だった場合は、ブリーダーさんに情報共有を行うこと、こちらが将来生まれてくる子たちの病気を予防する唯一の方法です。
そしておうちに来た子がもし潜在精巣だった場合は、将来の病気を予防する目的で去勢手術の実施を検討していただきたいです。
精巣は正常であれば生後1ヶ月頃から、遅くても生後2ヶ月頃までに陰嚢に降りてきます。
当院でも初診時やワクチン接種時に身体検査を行いますが、子犬をお迎えしたら精巣が降りてきているかどうか、ご自宅でも”やさしく”触って確かめてみてください。
お気づきの点があれば、当院獣医師に治療についてご相談いただけたらと思います。
姉ヶ崎どうぶつ病院は一緒に働く仲間を募集しています
姉ヶ崎どうぶつ病院は千葉県市原市にある1.5次診療施設です。
地域獣医医療への貢献を掲げ、飼い主様がなんでも相談できる、安心して通える病院であり続けることを理念に日々の診療にあたっています。
スタッフの育成にも力を入れており、質の高いジェネラリストの育成を目標に教育プログラムを作成し、一人一人丁寧に指導を行っています。また症例数も多いため、学んだことを実践に活かす環境が整っています。
目の前の課題に対し誠実に取り組まれる方、動物・飼い主様やスタッフの気持ちを汲んで行動できる方、そして現場のスタッフとコミュニケーションを取り、気持ちよく仕事がしたいとお考えの方、ご応募お待ちしております
千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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