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犬の潜在精巣(=停留精巣、陰睾)について|放置すると精巣腫瘍の発生率が高まってしまう先天性疾患です

症例

こんにちは、獣医師の會田です。

最近潜在精巣の子犬さんの去勢手術をすることが多かったので、啓蒙の意味も含め、潜在精巣について解説していこうと思います。

 

精巣は通常、生後6ヶ月齢くらいまでに腹腔内から陰嚢に下降します。これが正常に下降せず、腹腔内や鼠径部に留まってしまう状態のことを潜在精巣、停留清掃、陰睾と言います。

小型犬に発生が多く、そのままにすることで精巣腫瘍の発生リスクが高まること、また常染色体劣勢遺伝子が関与する遺伝性の疾患であることから、若い年齢での去勢手術が望まれる疾患です。

原因

先ほども記載させていただきましたが、潜在精巣は遺伝性疾患です。

チワワやトイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズ、ミニチュア・ダックスフンド、たまに大型犬の子など、主に純血種の小型犬に多く発生します

 

症状と合併症

症状は無症状であることがほとんどです。

ただし下降していない精巣が捻転(=捻れる)したり腫瘍化すると、さまざまな症状を引き起こします。

 

精巣捻転は急性で重度の腹痛症状を引き起こし、一般状態の低下が認められます(稀な病態ですが、実際捻転を起こした子はかなり痛そうにしていました…)。気になって痛みの強い場所を舐める子もいます。

 

腫瘍化した場合は腫瘍の種類によって、起こってくる症状はさまざまです。

精巣にできる腫瘍で上位を占めるのが、セルトリ細胞腫、精上皮腫、間細胞腫です。

セルトリ細胞腫は性ホルモンのエストロジェンを産生するため、この腫瘍の25〜50%の犬に高エストロジェン血症(左右対称性脱毛、貧血等)の症状が認められると言われています。高エストロジェン血症によって骨髄毒性が起きた場合や転移を引き起こした場合は生死に関わる事態なので、去勢手術をすることで未然に防げるのであれば是非行っていただきたいという想いです。

 

診断方法

身体検査で発見されることが多いです。

陰嚢部分を触診し、片方、もしくは両方の精巣が降りてきているかどうかを確認します。

動物が小さい場合はわかりにくいこともあるので、状況によってはエコーを用いて、精巣の位置を確認することもあります。

 

治療方法

潜在精巣を内科的に治療することはできないので、治療には若い年齢での去勢手術を行う必要があります。※通常の去勢手術とは異なり、精巣の位置によっては開腹が必要になることも。

気づいた時は無症状の潜在精巣も、そのままにしてしまうと、精巣腫瘍の発生率が10倍前後も高くなることがわかっています。犬種や成長具合にもよりますが、生後6ヶ月を過ぎたら去勢手術の実施することをご検討いただきたいです。

 

当院で実施している避妊・去勢手術についての詳細はこちらのページをご覧ください

 

予防法や飼い主様が気を付けるべき点

先程もご紹介したとおり、潜在精巣は遺伝的要因が大きく関係しています。

そのため、潜在精巣の犬を繁殖犬にしないこと、ブリーダーさんから購入した子が潜在精巣だった場合は、ブリーダーさんに情報共有を行うこと、こちらが将来生まれてくる子たちの病気を予防する唯一の方法です。

そしておうちに来た子がもし潜在精巣だった場合は、将来の病気を予防する目的で去勢手術の実施を検討していただきたいです。

 

精巣は正常であれば生後1ヶ月頃から、遅くても生後2ヶ月頃までに陰嚢に降りてきます。

当院でも初診時やワクチン接種時に身体検査を行いますが、子犬をお迎えしたら精巣が降りてきているかどうか、ご自宅でも”やさしく”触って確かめてみてください

 

お気づきの点があれば、当院獣医師に治療についてご相談いただけたらと思います。

 

 

 

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