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症例
犬のリンパ腫|症状・診断・QOL重視の治療
「下痢がなかなか治らない」「元気がなさそう」「体を触ったらしこりに気づいた」――そんな変化を感じたことはありませんか?
犬のリンパ腫は、がん(悪性腫瘍)の一種ですが、症状の出方が一つに決まらず、最初は消化器の不調のように見えることもあります。一方で、早めに原因を見極めることで、治療の選択肢が広がり、つらさを和らげる手立ても見つけやすくなります。
今回は、犬のリンパ腫で見られやすい症状や、動物病院での診断の考え方、治療を進めるときにQOL(生活の質)をどう守るかを、飼い主様向けに分かりやすく解説します。
犬のリンパ腫とは?|起こりやすいタイプと症状
リンパ腫は、免疫に関わるリンパ球が増えることで起こる腫瘍で、体のさまざまな場所に生じる可能性があります。
腫瘍ができる場所によって症状の出方が変わり、体表のしこりよりも下痢や食欲低下が先に目立つことも少なくありません。
・体表に関わるタイプ:首・脇・膝のうらなどのリンパ節が腫れて、しこりとして気づく
・全身の変化が先に出るタイプ:食欲低下や元気の低下、体重減少が見られる
・胸の中に変化が起きるタイプ:呼吸が苦しそうに見えたり、胸水がたまったりして、「急に体調が崩れた」と感じられることがある
・消化器に関わるタイプ:下痢や嘔吐、便の回数が増えるなど、お腹の不調が先に目立つ
<「下痢=お腹の病気」とは限らない理由>
特に下痢が続くと「お腹の調子が悪いのかな」とまず考える方が多いでしょう。しかし、下痢は腸だけの問題で起きるとは限らず、リンパ腫が背景に隠れているケースもあります。たとえば、リンパ腫が消化管に関わると、腸の働きが乱れて下痢が続く場合があります。くわえて、膵臓や肝臓、胆道にも影響が及ぶと消化のバランスが崩れ、便がゆるくなることもあるでしょう。
さらに、病気が進んで全身状態が落ちてくると腸が過敏になり、下痢が長引きやすくもなります。下痢は脱水につながることもあるため、半日〜1日以上続くときは早めに動物病院へ相談しましょう。その際は「いつから」「回数」「便の状態」にくわえて、食欲・元気・体重の変化も併せて伝えていただけると、原因を探る手がかりになります。
▼犬の下痢についてはこちらで解説しています
診断の流れ|検査とステージの判定
最初に飼い主様からお話を伺い、最近の様子や症状の全体像をつかみます。元気・食欲・体重の変化やしこりの有無を押さえたうえで、下痢や嘔吐があるときは、始まった時期と回数、便の状態を具体的に確認していきます。
検査は「できることをすべて行う」のではなく、今の状態から必要性に合わせて選びます。主な検査と、飼い主様が知っておきたいポイントは次のとおりです。
◆細胞診(さいぼうしん)
しこりや腫れたリンパ節から細胞を採って確認し、リンパ腫の可能性が高いかを判断する手がかりになります。結果によっては、より詳しく調べる検査(組織検査など)を検討します。
◆画像検査(レントゲン検査/超音波検査)
体のどこに変化があるか、臓器の形や大きさに異常がないかを確認します。消化器症状がある場合は、腸の状態や周囲の臓器もあわせて見ていきます。
◆血液検査
貧血や炎症のサイン、内臓の働き、脱水の程度などを把握します。治療を考える場面では、体の土台となるコンディションを確認する意味も大きい検査です。
その上で、進行度(ステージ)を把握します。ステージは「重い・軽い」を一言で決めるためのものではなく、病気がどこまで広がっているか、どの臓器が関わっているかを整理する考え方です。
これにより、治療の選択や通院の頻度、生活の中で優先したいことを話し合いやすくなります。
治療の選択肢と進め方|抗がん剤治療だけではない選択肢
治療を考えるとき、大切にしたいのが「ゴール設定」です。
完全寛解を目指す方針もあれば、症状を抑えて「普段の生活を守る」ことを中心に据える考え方などもあります。
犬の状態と飼い主様の希望をすり合わせながら、納得できる向き合い方を考えていきます。
<治療①抗がん剤治療>
抗がん剤治療(化学療法)は、リンパ腫で選択肢になりやすい治療の一つです。反応が期待できるタイプがある一方、効き方や副作用は個体差があります。
そのため、一定の計画をもとにしつつ、経過を見ながら内容を調整する進め方が基本になります。
通院ペースや投与方法は病状と治療内容で変わるため、生活の中で続けられる形を一緒に考えていきましょう。
<治療②補助療法・対症療法>同時に、補助療法・対症療法の役割も大きくなります。下痢や食欲低下、痛み、脱水に対しては、薬による症状のコントロールに加えて、点滴での水分補給や食事内容・与え方の調整などを組み合わせ、負担を減らしていきます。
また、感染への備えや栄養の考え方も含め、健やかな日々を送れるサポートを行っていきます。
治療の進め方は、様子を見ながら丁寧に調整をしていきます。効き方と副作用、日常生活への影響をその都度見直しながら「続ける」「いったん休む」「内容を変える」といった選択がとられます。
当院では、ご家族で無理なく続けられる形を一緒に考え、飼い主様が納得して進められることを大切にしています。愛犬にとってより良い方法を一緒に考えていきましょう。
トイレ・食事・副作用と上手に付き合い、普段の生活を守る
治療を開始してからは、定期的に確認する検査の数値だけでなく日々の様子が大切です。ご家庭での変化は、治療を調整するうえで大きな手がかりになります。
たとえば、次のような基本のポイントを押さえていきましょう。
✓食べられているか
✓眠れているか
✓歩けているか
✓呼吸が安定している
✓排便が落ち着いているか
さらに「体調が安定している日が増えているか」「いつも通りに過ごせる時間が増えているか」という視点でもチェックができると、今の治療が生活に合っているかを確認しやすくなります。
<下痢への向き合い方>
これまでもお伝えした通り、下痢の症状は消化化器型リンパ腫の影響に加えて、抗がん剤の影響や食事の切り替えが影響することもあります。
次のような変化が見られたときは、特に早めに動物病院への相談が安心です。
✓血が混じる便が出る
✓下痢の回数が増えた状態が続く
✓食欲が落ちる
✓活力が下がる
✓水分が取れず、脱水が心配になる
早めに動物病院へ相談して下痢を落ち着かせる対策につなげましょう。
<食事の考え方>
食事は「特別なものに切り替えること」よりも、まず「食べられること」と体重維持を優先します。
胃腸が不安定な時期は、消化に配慮した内容や与え方を検討し、急な変更は避けた方が落ち着きやすい場合があります。量を一度に増やさず、回数を分けたり、状態に合わせて形状を変えたりして、無理のない範囲で調整していきましょう。
また、サプリメントや療法食は、合う/合わないがあります。自己判断せず、治療内容や便の状態と合わせて動物病院と相談しながら選ぶことが大切です。
<抗がん剤の副作用>
抗がん剤治療では、次のような変化が見られることがあります。
・吐き気
・下痢
・食欲低下
・だるさ
こうした変化が出たときは、薬の種類や投与間隔・量を調整して負担を減らすことができます。気になる様子があれば早めにご相談ください。
まとめ|リンパ腫は“治療と生活”をセットで考える
犬のリンパ腫は、しこりだけでなく下痢などの消化器症状から始まることもあります。早めに検査を進めることで、治療の選択肢が広がる場合があります。
薬や在宅でのケアを組み合わせながら、生活の質(QOL)を守り、無理なく続けられる計画に整えていきましょう。
治療中は、ご家族の負担も大きくなりがちです。当院は飼い主様のお気持ちにも寄り添いながら親身に相談をお受けし、院内滞在を短くするための来院時期・時間の調整、在宅ケアの提案まで含めてトータルにサポートします。ぜひ一人で抱え込まずにご相談ください。
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症例
猫の喘息|「ゼーゼー」「ヒューヒュー」する発作時の症状と対策
愛猫が「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と息をしているように聞こえて、飼い主様は不安を感じたことがあるかもしれません。
このような呼吸音や咳の背景にはいくつかの原因があり、その一つとして注意したいのが「喘息」です。猫の喘息は、気道が過敏になって発作的に狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。
今回は、猫の喘息で見られやすい「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音の特徴や発作時のサインから日常でできる環境の整え方まで分かりやすくお伝えします。

猫の喘息とは|気道が狭くなる仕組み
猫の喘息は、気管支(空気の通り道)に慢性的な炎症が起こり、刺激に敏感になってしまうことで発作が起こりやすくなる状態です。炎症が続くと、普段は問題にならない程度の刺激でも反応しやすくなります。
発作が起こると、気道がギュッと収縮して空気が通りにくくなり、さらに粘液が増えて息苦しさが強まります。その結果、呼吸のたびに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音が聞こえたり、咳が続いたりします。
悪化のきっかけは一つとは限りません。たとえば、以下のような要因が関係することがあります。
・粉塵(ホコリや猫砂の舞い上がり)
・たばこの煙
・香りの強い製品
・急な温度変化
・ストレス(環境の変化や留守番時間の長時間化など)
こうしたきっかけが分かれば、治療の方針やご家庭での環境づくりを検討しやすくなります。
<間違いやすい「毛玉吐き」の動作>
毛玉を吐く前のえづきと、咳の発作は似て見えることがあります。そのため「毛玉吐きかな?」と様子を見ているうちに、咳を放置してしまいやすい点に注意が必要です。
・毛玉吐きの場合:えづいたあとに口を開けて「オエッ」と吐き出す動きに移り、毛や胃液が実際に出ることが多い。(生理的な現象)
・喘息の咳の場合:乾いた咳が続く。息を吐くときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音が混じることや、胸やお腹を大きく動かす呼吸になることがある。
しかしこのような様子だけでは判断がつきにくいこともあるので、少しでも心配なときは動物病院へご相談ください。
▼抜け毛対策についてはこちらで詳しく解説しています
発作時の症状|咳だけでなく呼吸の変化も
喘息は「咳だけの病気」と思われがちですが、呼吸の仕方の変化も重要な手がかりになります。
発作が疑われるときは、まず飼い主様が落ち着いて、猫が興奮しない環境を整えることが大切です。無理に抱き上げたり、口の中を触って確かめたりすると、呼吸が乱れることがあります。煙や香りの強いものから離し、静かな場所で刺激を減らしましょう。
猫が落ち着いているようなら、咳だけでなく「呼吸の様子にも変化がないか」を併せて見ておくことが大切です。
<よく見られるサイン>
次のような様子が見られないか、まず観察してみましょう。
・乾いた咳が続く
・うずくまるような姿勢で咳き込む
・呼吸のたびに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音が混じる
・呼吸が速く浅い
・胸やお腹を大きく動かして息をする
発作の直後に普段通りに戻る場合もあれば、違和感が長引くこともあります。
「いつもと違う」と感じる状態が続くときは、「いつからか続いているか」や咳の様子を記録しておくと受診時に役立ちます。
<急いで受診したいサイン>
次のような様子が見られる場合は、早めの受診が安心です。
・口を開けて呼吸する
・横になれず座ったまま動かない
・ぐったりして反応が鈍い
・舌や歯ぐきが青紫っぽく見える
こうしたサインは、猫にとって呼吸の苦しさの表れです。早めの対応が必要なので、速やかに動物病院へ相談してください。
診断と治療の流れ|似た病気も含めて見極め、発作と炎症を管理
「ゼーゼーする」「咳が出る」という症状は、喘息以外でも起こります。心臓の病気、感染症、気管支炎や肺の病気などでも似た様子が見られるため、検査で見極めることが欠かせません。
<検査>
まず問診で、症状の頻度、起こりやすい時間帯、きっかけになりそうな出来事を伺います。生活環境が影響していることもあるため、猫砂の種類、芳香剤やスプレーの使用、喫煙環境、掃除の頻度などの情報もとても重要です。
また、咳の回数をメモしたものや呼吸の様子を撮影した動画があると、状況の把握に役立ちます。
続いて聴診を行い、呼吸音に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった異常な音が混じっていないか、肺や気道の音に左右差がないかなどを確認します。
必要に応じてレントゲン検査や血液検査などを組み合わせて評価します。
<治療>
動物病院での治療は「発作を落ち着かせて呼吸を楽にすること」そして「気道の炎症を抑えて再発を減らすこと」の二つが中心です。発作の程度や頻度に応じて、気管支を広げる治療や、炎症を抑える治療が選択されます。
吸入治療が選択肢になることもあり、全身への影響を抑えつつ気道に作用させることを狙います。霧状の薬を吸入して気道に届けるため、内服や注射に比べて全身への負担を減らしつつ、気道の炎症を抑えられます。
その後は症状の変化を見つつ、薬の種類や量を段階的に見直していくことが一般的です。安定してきたら、症状の波に合わせて継続管理を行い、発作が起きにくい状態を目指します。
生活で気をつけること|発作を起こしにくい環境づくり
喘息は、治療だけでなく生活環境の見直しが発作予防に直結します。以下のヒントを参考に、できることから実践していきましょう。
◆刺激を減らす
たばこの煙、線香やお香、アロマ、消臭スプレーなどは、気道を刺激する原因になりえます。刺激になりやすいものは、できる範囲で避けていきましょう。
・香りの強い製品の使用を控える
・使用する場合は猫のいない場所で行い、十分に換気する
・スプレー類を噴霧した後の空間に猫を入れない
◆ホコリ・塵の対策
室内のホコリや猫砂は、舞い上がると咳や呼吸音のきっかけになることがあります。このような粉塵が舞いにくい工夫を取り入れてみてください。
・粉立ちの少ない猫砂を検討する
・砂の補充や入れ替えはゆっくり行う
・掃除機の排気が気になる場合は拭き掃除も組み合わせる
◆室内環境
空気が乾燥しすぎると咳が出やすいことがある一方、過度の加湿はカビの原因にもなります。負担を増やしにくい室内環境を目指しましょう。
・室温と湿度を急激に変えない
・加湿はしすぎず、換気や清掃も意識する
・冷え込みやすい時間帯は寝床の場所を工夫する
症状は「その日だけ」で落ち着くこともあれば、環境の変化や時間帯、季節によって出やすさが変わることがあります。
猫砂を変えた日や香りの強い製品を控えた期間など、環境を変えたタイミングと咳・呼吸の様子の変化を一緒にメモしておくと良いでしょう。何が発作のきっかけになりやすいかを振り返りやすくなり、治療や環境づくりにも役立ちます。
まとめ|「ゼーゼーする呼吸」「発作」は早めの相談が安心につながる
喘息は、発作を抑える治療と、生活環境の見直しを組み合わせることで、発作の頻度や苦しさを減らしていくことが目標になります。
「いつもと違うかも」「毛玉吐きと見分けがつかない」と迷ったときに相談いただくと、早期に猫の呼吸の負担を軽くすることにつながります。
当院では、喘息に似た病気も含めて丁寧に見極め、猫に合った治療とご家庭での工夫を一緒に考えていきます。気になる点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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症例
犬・猫の進行性網膜萎縮(PRA)とは?ダックスなど好発犬種で知っておきたいポイント
夜間や薄暗い場所で、愛犬や愛猫が立ち止まったり、動きづらそうにしたりする様子を見て「少し怖がりになったのかな」「年齢のせいかもしれない」と感じたことはありませんか。
実は、犬や猫の中には、時間をかけてゆっくりと視力が低下していく眼の病気があります。その代表的なものが「進行性網膜萎縮(PRA)」です。PRAは、日常生活の中で少しずつ変化が表れるため、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。
今回は、進行性網膜萎縮(PRA)とはどのような病気なのか、どんな症状から気づかれることが多いのか、またダックスフンドなどの好発犬種で特に知っておきたいポイントや、早めに知ることでできる備えについて解説します。
進行性網膜萎縮(PRA)とは|視力がゆっくり低下していく病気
進行性網膜萎縮(PRA)とは、網膜と呼ばれる、光を感じ取る組織が少しずつ変性・萎縮していく病気です。網膜の働きが低下することで、視力が徐々に落ちていきます。
PRAの特徴として、次のような点が挙げられます。
・進行はゆっくりで、急激な変化は起こりにくい
・痛みやかゆみなどの症状はほとんどない
・最終的には視力を失うことが多い
犬に多く見られる病気ですが、猫でも報告されています。また、遺伝性の病気であることもPRAの大きな特徴です。
初期の段階では、見た目に大きな異常が出にくいため、飼い主様が「様子の変化」に気づけるかどうかが重要になります。
どんな症状が出る?|最初は夜に見えづらくなることも
PRAの症状は、最初は暗い場所での見えづらさとして表れることが多いとされています。
<初期に見られやすい変化>
たとえば、次のような様子が見られることがあります。
・暗い場所で動きづらそうにする
・夜の散歩を嫌がるようになる
・段差や階段を怖がる
この段階では日中の生活に大きな支障が出ないことも多く、「性格の変化かな」「慎重になったのかも」と見過ごされがちです。
<進行すると見られる変化>
病気が進行すると、次のような変化が見られるようになります。
・明るい場所でも物にぶつかる
・おもちゃや動くものを目で追わなくなる
・環境の変化に対して強い不安を示す
PRAは、見た目では分かりにくく、行動や仕草の変化から気づく病気です。「なんとなく様子が違う」と感じた直感が、早期発見につながることもあります。
原因と好発犬種|遺伝が関係する病気
PRAは、多くの場合、遺伝子の異常が原因で起こります。そのため、特定の犬種で発症しやすいことが知られています。
好発犬種の一例としては、
・ミニチュア・ダックスフンド
・トイ・プードル
・コッカー・スパニエル
・ラブラドール・レトリーバー
などが挙げられます。
ただし、犬種によって発症しやすい年齢や進行のスピード、発症率には差があります。また、これらの犬種であっても、すべての犬が必ず発症するわけではありません。
一方で、遺伝性疾患であるため、症状が出てから対応するのではなく、犬種特性を踏まえて定期的に眼の状態を確認することが、安心につながります。
診断と治療|早く知ることでできる備え
PRAが疑われる場合、大切になるのは「いま、どの程度視力に影響が出ているのか」「今後どのように進んでいきそうか」を把握することです。そのため、動物病院ではいくつかの検査を組み合わせて眼の状態を確認します。
<検査>
診察では、主に次のような検査を行います。
◆眼底検査
眼の奥を直接観察し、網膜に萎縮や変化が起きていないかを確認します。PRAの特徴的な変化が見られることもあります。
◆網膜の状態評価
視細胞の状態や、視力低下の進行具合を総合的に評価します。症状が軽い段階では、行動の変化より先に異常が見つかることもあります。
◆遺伝子検査(必要に応じて)
犬種や状況によっては、遺伝子検査を行い、PRAに関連する遺伝的要因があるかを確認することもあります。
これらの検査によって「すでに進行が始まっているのか」「どのくらいのスピードで変化していきそうか」といった見通しを立てることができます。
<治療>
現時点では、PRAの進行を止める確立した治療法はありません。ただし、だからといって「何もできない病気」というわけではありません。
早い段階で診断がつくことで、
・視力低下を前提とした生活環境の調整
・突然見えなくなることによる強い不安や事故の予防
・将来を見据えたケアの準備
といった対応が可能になります。
「知らないまま進行する」よりも「分かったうえで備える」ことが、愛犬・愛猫の安心につながる病気だといえます。
<ご家庭でできる対策>
視力が低下してきた場合でも、工夫次第で生活の質を保つことができます。
たとえば、
・家具の配置をできるだけ固定する
・模様替えなど、急な物の配置変更を避ける
・声をかけてから触れるようにする
といった小さな配慮が、不安の軽減や事故防止につながります。
早めに状況を把握しておくことで、こうした対策も無理なく段階的に取り入れていくことができます。
まとめ|好発犬種は定期的な眼科チェックを
進行性網膜萎縮(PRA)は、痛みのないまま、ゆっくりと視力が低下していく遺伝性の眼の病気です。そのため、症状に気づいたときには、すでに進行しているケースも少なくありません。
特に、ミニチュア・ダックスフンドなどの好発犬種では、症状がなくても定期的に眼の状態を確認しておくことが、安心につながります。
姉ヶ崎どうぶつ病院では、眼の状態を丁寧に確認し、その子の生活や将来を見据えたご相談にも対応しています。「もしかして見えづらいのかも」と感じたときや、定期チェックを検討したいときは、どうぞお気軽にご相談ください。
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症例
犬・猫の角膜潰瘍とは?目を細める・こする症状に気づいたら
愛犬や愛猫が、目をしょぼしょぼさせていたり、前足で目をこすったりしている様子を見ると「ちょっとゴミが入っただけかな」「少し充血しているけど、そのうち治りそう」と、様子を見たくなることもあるかもしれません。
確かに目の違和感は一時的な刺激で起こることもありますが、その裏に「角膜潰瘍」という目の病気が隠れているケースもあります。角膜潰瘍は、早めに対応できるかどうかで、その後の治りやすさや経過が大きく変わることがある病気です。
今回は、犬・猫の角膜潰瘍について、どんな症状がサインになるのか、なぜ自然に治りにくいのか、そして受診の目安や治療の考え方を解説します。
角膜潰瘍とは?|目の表面にできる“治りにくい傷”
角膜とは、黒目の表面を覆っている透明な膜で、外からの刺激や細菌から目を守る役割をしています。角膜潰瘍とは、この角膜に傷ができ、表面がえぐれたような状態になってしまう病気です。
皮膚の擦り傷であれば自然に治ることもありますが、目は、常にまばたきや涙で刺激を受けたり、こすったり触ったりしやすい部位です。そのため、角膜の傷は自然に治りにくいとされています。
角膜潰瘍は犬・猫どちらにも起こる病気で、放置すると傷が深くなったり、治療に時間がかかったりすることがあります。さらに、傷が進行した場合には、角膜が濁って視界が悪くなるなど、視力に影響が出ることもあります。
「少し充血しているだけ」「そのうち治りそう」と思える段階でも、目の表面ではトラブルが進んでいることがあるため、注意が必要です。
どんな症状が出る?|白く濁る・強い痛みがサインになることも
角膜潰瘍のサインは、最初はとてもささいな変化として表れることが少なくありません。
<初期に気づかれやすい変化>
たとえば、次のような様子が見られることがあります。
・目を細めたり、しょぼしょぼさせたりする
・片目を閉じたままにすることが増える
・前足で目をこする、顔を床や物にこすりつける
・涙がいつもより多く出る
・白目が赤く充血している
どれも一見すると「ちょっとした違和感」に見えるかもしれません。しかし、これらの仕草は、目に痛みや強い不快感があることを示すサインである場合も多く、注意が必要です。
<症状が進むと見られる変化>
角膜潰瘍が進行すると、次のように見た目にも分かりやすい変化が表れることがあります。
・黒目が白く、または青白く濁って見える
・目やにが増える
・明らかに痛そうな様子が続く
一方で角膜潰瘍は、一時的に症状が落ち着き「治ったように見える」ことがある病気でもあります。ですが、その間にも角膜の傷が完全に治っていなかったり、再び悪化したりするケースも少なくありません。
なぜ悪化・再発しやすい?|自然に治らない理由
角膜は、目の表面を覆うとても薄く、デリケートな組織です。そのため、私たちが思っている以上に、日常の動きや刺激の影響を受けやすい場所でもあります。
たとえば、
・まばたき
・涙が目の表面を流れること
・違和感から目をこする仕草
こうしたごく普通の動作だけでも、角膜の傷が広がってしまうことがあるのです。
さらに、角膜にできた傷から細菌が入り込むと、傷が治りにくくなったり、潰瘍が深くなることで治療に時間がかかったりといったリスクも高まります。「少し良くなったように見える」状態でも、内部では回復が追いついていないケースがある点には注意が必要です。
<目の形や特徴によって繰り返しやすい子も>
犬や猫の中には、次のような目の形や特徴から、角膜潰瘍を繰り返しやすい子もいます。
・目が大きく前に出ている
・まぶたやまつ毛が角膜に当たりやすい
たとえば犬では、シーズー、パグ、フレンチ・ブルドッグ、ペキニーズなど、目が前に出ているタイプの犬種で角膜トラブルが起こりやすい傾向があります。ただし、こうした特徴がない犬や猫でも、外傷や感染がきっかけとなり角膜潰瘍を起こすことは珍しくありません。
角膜潰瘍は、一度きちんと状態を確認し、その子に合ったケアや治療を続けることが、悪化や再発を防ぐうえで大切になります。違和感が続く場合や、何度も同じ症状を繰り返している場合は、早めに相談することが安心につながります。
診断と治療|早めの治療で守れる視力がある
角膜潰瘍が疑われる場合、まず大切になるのは「いま角膜がどんな状態にあるのか」を正しく把握することです。目の症状は見た目だけでは判断が難しく、一見軽そうに見えても、内部で傷が広がっていることもあります。
<目の状態を確認するための検査>
角膜潰瘍が疑われる場合、主に次のような検査を行います。
・眼科検査:目の表面やまぶたの状態、充血や涙の量などを確認
・染色検査:特殊な染料を使い、角膜に傷があるかどうかや、その深さ・広がりを確認
これらの検査によって「点眼治療で経過観察できる状態か」「より注意深い治療が必要な状態か」といった判断ができるようになります。
<「状態に合わせて」進める治療>
角膜潰瘍の治療は、すべての子に同じ方法を行うわけではありません。傷の深さや原因、その子の様子に合わせて治療内容を調整していきます。
基本となるのは、点眼治療や原因に応じた内服や処置ですが、傷が深い場合や治りにくい場合には、より集中的な治療が必要になることもあります。
<早期治療で守れるものがあります>
角膜潰瘍は、早めに治療を始めることで、
・強い痛みを早く和らげられる
・傷の悪化を防ぎやすくなる
・視力への影響や、手術が必要になるリスクを下げられる
といったメリットがあります。
「もう少し様子を見よう」と迷っている間に悪化してしまうより、早い段階で状態を確認することが、結果的に負担の少ない治療につながることも少なくありません。まずはいまの状態を知ることが、愛犬・愛猫の目を守る第一歩になります。
まとめ|「目の違和感」は早めの相談が安心につながる
角膜潰瘍は、最初は目を細める、こするといった小さな仕草から始まることが多く、つい様子を見たくなる病気です。しかし、目の表面はとてもデリケートなため、見た目以上に傷が進んでいたり、知らないうちに悪化や再発を繰り返してしまうこともあります。
また、状態によっては、視力に影響が出るケースもあるため「これくらいで受診していいのかな」と迷う段階こそが、実は大切な判断のタイミングになることも少なくありません。
姉ヶ崎どうぶつ病院では、角膜の状態を丁寧に確認したうえで、その子に合った治療や、再発を防ぐためのケアについても一緒に考えていきます。目の違和感に気づいたときは、どうぞお早めにご相談ください。
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症例
犬や猫の口臭に隠された理由と対策|歯周病以外の病気にも注意!
「最近、口のニオイが気になる」「前から少し臭っている気がする」——愛犬・愛猫の口臭について、気になりつつも様子を見てしまっていませんか?
口臭は、単なる体質や一時的なものと思われがちですが、お口の中のトラブルだけでなく、体の不調を知らせるサインとして現れることもあります。特に、以前と比べてニオイが強くなった場合や、独特なニオイが続く場合は注意が必要です。
今回は、犬や猫の口臭について、よくある原因から歯以外の病気の可能性、自宅でできるチェックポイントまでを整理して解説します。
口臭のよくある原因|もっとも多いのは歯周病
犬や猫の口臭でもっとも多い原因は歯周病です。歯の表面に付着した歯垢や歯石には多くの細菌が含まれており、これが増えることで歯ぐきに炎症が起こり、強いニオイの原因になります。特に、犬歯や奥歯は食べかすが溜まりやすく、注意が必要な部位です。
歯周病が進行すると、次のような変化が現れやすくなります。
・歯肉炎・歯周炎による強い口臭
・「魚臭い」「生ゴミのようなニオイ」と感じる口臭
・歯ぐきの腫れや出血
▼犬や猫の歯周病についてはこちらで詳しく解説しています
また、歯周病以外にも、口内炎、歯の破折、乳歯遺残などの口腔内トラブルが原因となり、口臭が強くなるケースもあります。
▼猫の口内炎についてはこちらで詳しく解説しています
▼犬や猫の乳歯遺残についてはこちらで詳しく解説しています
歯以外が原因の場合も|病気が隠れている可能性
口臭というと歯や歯ぐきの問題を思い浮かべがちですが、お口の状態に大きな異常が見られない場合でも、体の内側の不調が影響していることがあります。
代表的な例として、次のようなケースが挙げられます。
◆消化器疾患(胃腸のトラブル)
胃の不調や吐き気、逆流があると、胃の内容物の影響で酸っぱいようなニオイを感じることがあります。
▼犬や猫の腸活についてはこちらで詳しく解説しています
◆腎臓病
老廃物をうまく排出できなくなることで体内にアンモニア成分が蓄積し、ツンと鼻をつくようなニオイが口から感じられることがあります。
▼犬の慢性腎臓病についてはこちらで詳しく解説しています
◆糖尿病
体内でエネルギーがうまく使えない状態が続くと、甘いような独特のニオイ(ケトン臭)を発することがあります。
▼猫の糖尿病についてはこちらで詳しく解説しています
◆口腔内腫瘍
腫瘍によって組織が傷んだり、壊死が起こったりすると、強く不快なニオイが生じる場合があります。
▼犬や猫の口腔内腫瘍についてはこちらで詳しく解説しています
◆アレルギー性皮膚炎や口まわりの炎症
よだれが増え、口の周囲が湿った状態が続くことで雑菌が繁殖し、口臭が強まることがあります。
▼犬のアレルギー性皮膚炎についてはこちらで詳しく解説しています
口臭は、毎日一緒に過ごしているからこそ「こんなものかな」と見過ごしてしまうことも少なくありません。ですが、検査をしてみると病気が見つかるケースもあるため、気になる変化がある場合は、一度動物病院で原因を確認してみると安心です。
自宅でチェックできるポイント|受診のタイミングを判断する材料に
口臭が気になるとき「すぐ病院に行くべきか」「もう少し様子を見てもいいのか」と迷われる飼い主様も多いかと思います。そんなときは、日常の中で確認できるポイントをいくつかチェックしてみましょう。
<チェックしたいポイント>
次のような変化が見られる場合は、お口の中や体調に何らかのトラブルが起きている可能性があります。
・歯ぐきが赤くなっている、出血している
・歯がぐらついている
・口を触られるのを嫌がるようになった
・よだれが増えた、口の周りを気にするしぐさが増えた
・片側だけで噛む、硬いフードを嫌がるようになった
・体重減少や飲水量の変化、嘔吐など、口まわり以外の症状がみられる
<受診を考える目安>
口臭の感じ方には個体差がありますが、次の様子がみられる場合は、早めに動物病院に相談することをおすすめします。
・口臭が1週間以上続いている
・急にニオイが強くなった
・魚臭い・ドブ臭いと感じるような変化がある
「これくらいで受診していいのかな」と感じるような小さな変化でも、早めに確認しておくことで、重症化を防げることも少なくありません。
治療・対策|原因に応じたケアが大切
口臭への対応では、まず原因を正しく把握することが重要です。診察や必要な検査を通して原因を見極め、その結果に応じた治療やケアを行っていきます。
◆歯周病が原因の場合
歯石除去(スケーリング)を行い、状態によっては抜歯が必要になることもあります。処置後は、ご家庭での口腔ケアを続けながら、お口の環境を整えていきます。
▼犬や猫のスケーリングについてはこちらで詳しく解説しています
◆全身疾患が関係している場合
腎臓病や消化器疾患、糖尿病などが背景にある場合は、それぞれの病気に対する治療が必要です。こうした治療の経過とともに、口臭が徐々に改善していくケースもあります。
<ご家庭でできるケア>
治療とあわせて、日常の中で取り入れられるケアや食事の工夫も、口臭対策では大切なポイントです。
◆毎日の歯みがき習慣
いきなり歯ブラシを使う必要はありません。まずは口元や口の中に触れられることに慣れるところから始め、ガーゼや指で歯に軽く触れる練習をしていきましょう。無理なく触れることに慣れてきたら、少しずつ歯の表面を拭うようにし、最終的には歯ブラシでのケアを目指していくのが理想的です。段階を踏んで進めることで、嫌がりにくく、継続しやすくなります。
◆デンタルガムやデンタルケア用品の活用
歯みがきが難しい場合には、噛むことで歯垢の付着を抑えるデンタルガムや、口腔ケア用品を取り入れる方法もあります。毎日のケアが負担にならないよう、愛犬・愛猫の性格や生活リズムに合ったものを選ぶことが大切です。
◆フードの見直しによるサポート
口臭の原因によっては、フードを見直すことで改善がみられることもあります。歯石が付きにくい設計のフードや、アレルギーが背景にある場合の食事管理など、体質に合わせた選択が重要です。
口腔ケアや食事管理は「毎日完璧に行うこと」よりも、その子に合った方法を無理なく続けていくことが大切です。うまく進まない場合や、フード選びに迷うときは、どうぞお気軽にご相談ください。状態や生活に合わせて、無理のない方法を一緒に考えていきます。
<定期的なチェックの大切さ>
口臭やお口の状態は、日々の生活の中で少しずつ変化していくことも少なくありません。定期的に口腔チェックを行うことで、目立った症状が出る前の小さな変化に気づけることがあります。その結果、愛犬・愛猫が痛みや違和感を抱える時間を最小限に抑え、状態に応じた治療の選択肢を広げることにもつながります。
特に気になる様子がない場合でも、ご家庭でのケアと、動物病院での定期的なチェックをうまく組み合わせながら、愛犬・愛猫のお口の健康を無理なく守っていきましょう。
まとめ
犬や猫の口臭は、歯周病や体の内側の不調といった病気のサインとして現れていることもあります。しかし、毎日一緒に過ごしているからこそ、変化に気づきにくかったり「少し様子を見よう」と後回しになってしまうことも少なくありません。
姉ヶ崎どうぶつ病院では、歯科診療はもちろん、全身の状態も含めた総合的な視点で原因を確認し、その子に合った対応をご提案しています。「少し気になる」「これくらいで相談していいのかな」と迷われたときも、どうぞ遠慮なくご相談ください。
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