
コラム
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症例
犬や猫の「肛門腺絞り」は本当に必要?|その理由と注意点【獣医師が解説】
「最近、うちの子がよくお尻を床にこすりつけている」「肛門のあたりをしきりに舐めていて、なんだかにおいも気になる」
もしかすると肛門腺のトラブルが原因かもしれません。
そのまま放置すると炎症を起こすだけでなく、細菌感染によって「膿瘍(のうよう)」と呼ばれる膿の溜まった腫れに進行することもあるため注意が必要です。
今回は、肛門腺の意外な役割や肛門腺絞りが必要になるタイミング、そして見逃してはいけない注意サインについて解説します。
肛門腺とは?|その働きと気をつけたいトラブル
犬や猫の「肛門腺(こうもんせん)」とは、お尻の左右(時計の文字盤でいうと4時と8時の位置)にある分泌腺のことを指します。
肛門のすぐ内側には、「肛門嚢(こうもんのう)」という小さな袋状の器官があり、そこに強いにおいを持つ分泌液が溜まります。
この分泌液には、それぞれの動物が持つ特有のにおいが含まれており、もともとは縄張りを主張したり、自分の存在を他の動物に知らせたりするための大切な「においのサイン」として使われてきました。
注意したい肛門腺のトラブル
現代の家庭で暮らす犬や猫たちは、自然界に比べて運動量が少なかったり、排便の刺激が十分でなかったりすることで、分泌液がうまく排出されなくなることがあります。
すると、肛門腺の中に液がどんどん溜まり、以下のようなトラブルにつながります。
・肛門腺うっ滞(分泌液が溜まって詰まりやすくなる状態)
・肛門腺炎(溜まった液に細菌が入り、炎症を起こす)
・肛門腺膿瘍(のうよう)(腫れて膿が溜まり、破裂することもある)
このような状態になるとお尻に強い違和感や痛みを感じ、排便を嫌がったり、元気がなくなったり、食欲が落ちてしまうこともあります。
ただし、肛門腺のトラブルはすべての犬や猫に起こるわけではありません。まったく問題なく過ごせる場合もあれば、何度も肛門腺が詰まりやすい体質の犬や猫もいます。
とくに注意が必要なのは、小型犬(チワワ、トイプードル、パピヨンなど)や、肥満傾向のある犬猫、高齢の犬や猫です。
こうした傾向が見られる場合は、日頃からお尻の様子や排便後のしぐさをよく観察し、少しでも異変を感じたら、早めに対処してあげましょう。
肛門腺絞りは必要?|タイミングと気をつけたいサイン
すべての犬や猫に「肛門腺絞り」が必要かというと、必ずしもそうではありません。
排便の際にしっかりと肛門腺液が自然に排出できている場合は、無理に絞る必要はありませんし、過剰な肛門腺絞りはかえって皮膚に炎症を起こしてしまうこともあります。
肛門腺絞りが必要かどうかを判断するためには、以下のような行動やサインをチェックしてみてください。
・お尻を床にこすりつける
・肛門のあたりをしきりに舐めたり、噛んだりする
・お尻が気になる様子で、落ち着かない
・肛門の周囲から独特なにおいがする
・座るときに違和感を示す(斜めに座る、頻繁に立ち上がる など)
こうした様子が頻繁に見られる場合は、肛門腺液が溜まっている可能性がありますので、早めに動物病院に相談しましょう。
動物病院での肛門腺ケア
ご自宅で肛門腺絞りに挑戦される飼い主様もいらっしゃいますが、力加減や方向を誤ると肛門腺を傷つけることや、炎症を引き起こす原因になることがあります。初めての場合や不安がある場合は、動物病院で処置してもらうのが安心です。
また、トリミングの際に肛門腺絞りもお願いしているという飼い主様も多いかもしれません。日常のケアとしてトリマーに任せる方法もありますが、腫れやしこりなどの異常が見られる場合には獣医師による診察が必要です。
動物病院での肛門腺処置では、単に分泌液を出すだけでなく、腫れや痛み、しこり、出血の有無などを獣医師が丁寧に確認します。
とくに、肛門腺の中にしこりが見つかった場合、腫瘍(肛門周囲腺腫や肛門嚢アポクリン腺癌など)が隠れている可能性もあるため、視診と触診での見極めがとても重要です。
さらに、肛門腺の出口が詰まっている場合や感染を起こしている場合は、通常の方法では膿が排出されないこともあります。そのようなときは、抗生剤による治療や、膿瘍の切開・洗浄といった処置が必要になるケースもあります。
このように、肛門腺のトラブルを繰り返す体質の犬や猫や、肛門腺絞りをしてもすぐに再び溜まってしまうような場合には、月に1回程度の定期通院をおすすめしています。
ご家庭での肛門腺ケアに不安がある場合は、いつでも当院へご相談ください。
肛門腺トラブルを防ぐために|毎日のケアでできること
肛門腺の健康を保つには、日常生活の中でのちょっとした心がけが大切です。
まず注目したいのは「便の質」。
適度に硬さのある便は排便時に肛門腺の出口を自然に刺激し、中に溜まった分泌液を押し出す助けになります。そのため、食物繊維を適度に含んだバランスの良い食事は、肛門腺の自然な排出を促すうえでとても効果的です。
また、日頃の運動も欠かせません。
肥満は肛門腺トラブルの大きな原因のひとつです。運動不足になると便が柔らかくなりやすく、排泄力も落ちてしまうため、適度な運動で体重を管理することが大切です。
さらに、定期的な獣医師によるチェックも予防には欠かせません。
見た目ではわからない炎症や腫れが進行していることもあるため、ワクチン接種や健康診断の際に、肛門腺の状態も一緒に確認してもらうと安心です。
ご家庭でのケアと動物病院でのチェックをうまく組み合わせて、愛犬・愛猫の肛門腺トラブルをしっかり予防していきましょう。
まとめ
肛門腺は、普段あまり意識することのない小さな器官かもしれませんが、犬や猫の健康と快適な暮らしにとって実はとても大切な部分です。
分泌液が溜まりすぎると不快感や痛みだけでなく、炎症や感染などのトラブルにつながることもありますが、適切なタイミングでのケアや食事・運動といった日常の心がけによって、トラブルは予防することができます。
当院では、肛門腺に関するご相談にも対応しており、それぞれの体質や暮らしに合わせたケアをご案内しています。
「少し気になるかも」と感じた際には、お気軽にご相談ください。
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症例
春に多い猫の食欲不振、放っておいても大丈夫?|見逃したくないサインとご自宅でできる対処法
春になって気温が上がってくると、「なんだか最近、愛猫のごはんの食いつきが悪いかも…」と心配になる飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。実はこの時期、猫の食欲が落ちやすくなることがあります。
「季節の変わり目だから、そのうち元に戻るかな?」と様子を見ているうちに、実は体調不良や病気が隠れていた、というケースも決してめずらしくありません。
今回は、春に猫の食欲が落ちる理由や、飼い主様がご自宅でできる対処法について解説します。
春に猫の食欲が落ちる主な原因とは?
猫の食欲は、気温や日照時間の変化に影響を受けることがあります。
特に冬から春にかけては、寒暖差が大きくなるため、体温調節にエネルギーを使い、結果としてごはんの量が減ってしまうこともあるのです。
さらに、以下のような理由も関係していると考えられます。
◆換毛期による影響
春は冬毛が抜け落ちる「換毛期」にあたります。このタイミングで体の代謝バランスが変化し、それが一時的な食欲の低下につながることがあります。
特に長毛種の猫は抜け毛の量が多いため、換毛期の影響を受けやすい傾向があります。
◆活動量の変化
春になると日照時間が長くなり、それに合わせて猫の行動パターンにも変化が見られます。
日中にのんびりと日向ぼっこをする時間が増えると、体を動かす機会が減り、それにともなって食欲が落ちてしまうことがあります。
◆発情期の影響(避妊・去勢をしていない猫の場合)
避妊や去勢をしていない猫は、春に発情期を迎えることが多く、このホルモンバランスの変化が食欲に影響することもあります。
特にオス猫は、発情中のメスのにおいなど外の刺激に敏感になり、ごはんよりも外への興味やマーキング行動に意識が向いてしまうことがあります。
このように、春に見られる猫の食欲低下は、季節的な要因による一時的なものの場合もありますが、なかには病気のサインである場合もあります。
自宅でできる猫の食欲不振対策
もし猫が春に食欲を落としてしまった場合、自宅で簡単にできる対策を試してみましょう。
◆食事の温度を少しだけ調整する
冷たいフードよりも、ほんのり温めたごはんのほうが香りが引き立ちやすく、猫の食欲を刺激してくれることがあります。
特にウェットフードは、電子レンジで人肌程度に温めてあげると、香りが増して食べやすくなることがあります。
※温めすぎには注意し、熱くなりすぎないように手で温度を確認してから与えましょう。
◆食器を変えてみる
実は、使っている食器の素材や形状が食欲に影響することもあります。
プラスチック製の食器を嫌がる猫も多いため、陶器やステンレス製の器に替えてみるのも一つの方法です。
また、ひげが器のふちに当たるのを嫌がる猫もいます。そのような場合は、浅めで広めの器を選んであげましょう。目安としては、深さが3〜5cm程度のお皿を好む猫が多いようです。
◆食事の場所を見直してみる
騒がしい場所や人の出入りが多い環境では、落ち着いてごはんが食べられないこともあります。静かで安心できる場所にごはんを置いてあげることで、食欲が戻ることがあります。
また、他の猫や犬と一緒に暮らしている場合は、少し距離を取って別々に食べさせると良いでしょう。
◆少量ずつ、こまめに与える
「一度にたくさんは食べられない」という猫には、1日に何回かに分けて、少しずつごはんをあげるのが効果的です。
春は気温の変化で体調を崩しやすいため、こまめな給餌が食欲維持につながります。
◆水分をしっかり摂れるように工夫する
食欲が落ちているときは、同時に水分も摂りにくくなりがちです。
脱水を防ぐためにも、水分補給はとても大切です。
ウェットフードや缶詰を取り入れたり、ドライフードにぬるま湯をかけたりすることで、自然に水分を摂る工夫ができます。
お皿に入れたお水があまり減らない場合は、猫用の給水器や場所を変えるなどの工夫も試してみましょう。
見逃さないで!猫の食欲不振が教えてくれる体のSOS
猫の食欲不振には、ただの気まぐれや一時的な体調不良ということもありますが、病気が隠れている場合も少なくありません。
まずは、次のような症状が見られないかチェックしてみましょう。
・急に体重が減ってきた
・吐いたり下痢をしたりしている
・元気がなく、ぐったりしている
・水をほとんど飲まない、または異常にたくさん飲む
・食べたそうにするのに、口を気にして食べられない
・呼吸が荒くなったり、速くなったりしている
・毛づくろいをしなくなった、または毛並みがボサボサしてきた
こうした症状が見られる場合、単なる季節の変わり目や気分の問題ではなく、病気が関係している可能性があります。
例えば、腎臓病・口内炎・甲状腺機能亢進症・消化器の疾患などが原因として考えられます。
特に、食欲不振が2〜3日以上続く場合や、体重の減少、嘔吐や下痢、元気がないといった症状が一緒に見られる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
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診断方法
動物病院では、まず問診からスタートします。
「いつ頃から食欲が落ちたのか」「他に気になる症状はあるか」など、飼い主様からのお話を丁寧にうかがいながら、原因の手がかりを探っていきます。
そのうえで、必要に応じて以下のような検査が行われることがあります。
◆身体検査
猫の全身状態を確認し、発熱や脱水がないか、口の中に炎症や痛みがないかなどを丁寧にチェックします。
歯の痛みや口内炎は、食欲が落ちる大きな原因となることがあるため、口腔内の観察はとても大切です。
◆血液検査
内臓の働きや体内の炎症の有無などを調べるために行います。
腎臓や肝臓の数値をはじめ、感染症やホルモンバランスの異常が隠れていないかも確認します。
特に高齢の猫では、腎臓病や甲状腺機能亢進症といった病気が原因で食欲が落ちていることもあります。
◆画像検査(レントゲン・超音波検査)
食欲不振の背景に、胃腸の働きの低下やお腹の中の異常(腫、しこり、異物など)がないかを確認するために、レントゲンやエコー検査を行うことがあります。
◆尿検査
腎臓の状態や糖尿病の兆候を調べるために、尿検査が行われることもあります。
治療法
治療は、食欲不振の原因に応じて方法が変わるため、まずは検査によってしっかりと状態を把握することが大切です。
そのうえで、一般的には以下のような治療が行われます。
<点滴治療(皮下点滴・静脈点滴)>
脱水の症状が見られる場合には、体に必要な水分や電解質を補うために点滴が行われます。
皮下点滴は比較的軽度の脱水時に、静脈点滴は状態が重い場合や入院が必要なときに用いられます。点滴によって体のバランスが整うと、すぐに食欲が戻る猫もいます。
<投薬治療>
原因となっている症状や病気に合わせて、以下のような薬が処方されます。
・胃腸の動きをサポートする薬
・炎症を抑える薬
・痛みや不快感を和らげる薬
<食事療法>
高カロリーのフードや療法食を取り入れ、少量でも効率よく栄養を摂れるように工夫します。どうしても自力で食べられない場合には、強制給餌を行うこともありますが、これは猫にとって大きなストレスになることもあるため、必ず獣医師の指導のもとで慎重に行うことが大切です。
春の食欲不振を防ぐために|日頃からできるケアと注意点
以下のようなポイントを意識して過ごすことで、春の食欲不振を予防しましょう。
◆日々の食事量を記録する
毎日の食事量をメモしておくことで、少しの変化にも早く気づくことができます。特に多頭飼いの場合は、どの猫がどれだけ食べているかを把握することが大切です。
◆定期的な健康診断を受ける
春先の食欲低下が病気のサインではないかをチェックするためにも、年に1回以上の健康診断を受けることをおすすめします。
特に7歳以上のシニア猫は、半年に1回の定期健診が理想的とされています。
◆食事環境を整える
猫が落ち着いてごはんを食べられるように、食事スペースの環境を見直すことも大切です。
例えば、静かな場所に食器を置く、他の猫と距離を取る、食器の高さを調整するといった工夫を取り入れてみましょう。
◆換毛期のケアをする
春は換毛期の真っ只中。たくさんの毛が抜けるこの時期は、体への負担も大きくなりがちです。
そのため、こまめなブラッシングで抜け毛を取り除いてあげましょう。
また、毛玉をスムーズに排出できるように、毛玉ケア用のフードやサプリメントを取り入れるのもおすすめです。
◆ストレスを減らす工夫をする
気温の変化や生活環境のちょっとした変化が、猫にとってはストレスになることもあります。
そのため、春は特に心のケアも意識してあげましょう。
急な環境変化を避ける、適度に遊んで気分転換をさせる、フェロモン製品を活用するなど、穏やかに過ごせる環境を整えることが食欲の安定にもつながります。
まとめ
春は、気温や環境の変化により、猫の食欲が落ちやすい季節です。
ですが、「きっと季節の影響だろう」と決めつけてしまうのではなく、日頃から愛猫の様子をしっかり観察することが大切です。
猫は、体調が悪くてもそれを隠そうとする習性があります。
そのため、「少し様子を見よう」と思っているうちに、症状が進んでしまうことも少なくありません。だからこそ、食欲の変化は小さなサインとして見逃さないことが大切です。
食欲が落ちる原因をしっかり突き止め、適切なケアを行うことで、愛猫が快適に春を過ごせるようにサポートしていきましょう。
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症例
犬のフィラリア予防|始める時期・予防期間・薬のタイプを解説
春が近づいてくると、動物病院でも「フィラリア予防」のお話を耳にする機会が増えてきます。
フィラリア症とは、蚊に刺されることで体内に寄生虫(フィラリア)が入り込み、最終的には心臓や肺の血管に寄生してしまう怖い病気です。
進行すると、呼吸が苦しそうになる、咳が出る、元気がなくなる、運動を嫌がるといった症状が見られるようになり、放っておくと命に関わることもあります。
ですが、正しいタイミングで予防を始めて継続的に対策を行えば、フィラリア症はほぼ100%防ぐことができます。
大切な愛犬を守るために、予防の時期や方法をしっかりと確認しておきましょう。
今回は、フィラリア予防を始めるタイミングや、愛犬に合った予防薬の選び方について解説します。
フィラリア予防を始めるベストなタイミング
フィラリア予防を始める時期は、お住まいの地域の気温や蚊の発生状況によって異なります。
蚊は気温が連続して10℃以上になると活動を始めるため、地域ごとの気候に合わせて、予防のスタート時期を決めることが大切です。
一般的には、多くの地域で5月〜12月頃までが予防期間とされていますが、例えば当院のある千葉県市原市エリアのように水田や川、雑木林が多く、自然が豊かな地域では、蚊の発生期間が長く続く傾向があります。そのため、当院では12月までしっかりと予防を続けることをおすすめしています。
フィラリア予防薬は、すでに体内に入り込んだフィラリアの幼虫を駆除するタイプのお薬です。
そのため、たった1回の飲み忘れでも、幼虫がそのまま体内で成長してしまい、心臓や肺の血管に深刻なダメージを与える可能性があります。
「もう蚊を見かけなくなったから、そろそろ大丈夫かな?」と思うかもしれませんが、実はここが大切なポイントです。
蚊の活動が終わった後も1〜2ヶ月間は体内に幼虫が残っている可能性があるため、予防を継続することがとても重要です。
フィラリア予防薬の種類と特徴
フィラリア予防薬には以下のような、さまざまなタイプがあります。
<経口薬(チュアブル・錠剤)>
月に1回飲ませるタイプが主流です。
中でもチュアブルタイプ(おやつのような形状)は、比較的与えやすいことから多くの飼い主様に選ばれています。
■メリット
・おやつのように食べられるので投薬しやすい
・フィラリア予防と同時に、お腹の寄生虫(回虫・鉤虫など)も駆除できる
・「ネクスガードスペクトラ」など一部の製品では、ノミ・ダニの予防もまとめて対応可能
■注意点
・食べムラがある犬は食べないこともあり、別の方法を検討する必要あり
・飲んだあとすぐに吐いてしまった場合は、効果が十分に得られないこともある
<スポットタイプ(滴下式)>
犬の首の後ろに液体を垂らすタイプの予防薬です。
皮膚から成分が吸収され、体全体に行き渡ります。
■メリット
・経口薬が苦手な犬でも使いやすい
・フィラリアだけでなく、ノミ・ダニの予防も同時にできる製品が多い
・ご自宅で簡単に塗布できる
■注意点
・薬剤が乾くまでは触らないよう注意
・シャンプーのタイミングに注意が必要(塗布後2日ほどは避けるのが理想)
<注射タイプ(年に1回)>
動物病院での年1回の注射で、1年間フィラリア予防ができます。
■メリット
・毎月の投薬が不要なので、投薬の手間がかからない
・飲み忘れの心配がないため、忙しい方や多頭飼育のご家庭にもおすすめ
■注意点
・他の方法に比べて費用が高め
・副反応の可能性があるため、事前に獣医師と相談が必要
愛犬の体質・暮らし方に合わせたフィラリア予防薬の選び方
フィラリア予防薬を選ぶ際には、価格や手軽さだけで決めてしまうのではなく、愛犬の生活スタイルや体質に合った方法を選ぶことが大切です。
<外出頻度が高い場合>
お散歩の回数が多い場合や、ドッグランやキャンプなど屋外で過ごす時間が長い場合は、蚊に刺されるリスクが高くなります。
そのため、確実に予防ができる方法を選び、毎月の投薬を忘れずに行うことが大切です。<散歩コースに水辺や緑が多い場合>
水田や川、公園、雑木林など、蚊が発生しやすい環境を歩く機会があると、蚊との接触リスクも高くなります。
このような環境では、年間を通じて予防を徹底する必要があります。
<室内中心の生活の場合>
室内で過ごすことが多い場合でも、窓や玄関から蚊が入り込むことは珍しくありません。
「室内だから安心」と思わずに、蚊の活動時期にはきちんと予防を続けることが重要です。
また、「価格が安いから」「お得だから」といった理由だけで予防薬を選ぶのではなく、愛犬の健康状態や性格、生活環境に合わせて最適な方法を選ぶことが、健康を守るうえで欠かせません。ご不安な点があれば、かかりつけの動物病院で相談しながら選ぶと安心です。
さらに、フィラリア予防に加え、ノミ・ダニ対策や腸内寄生虫の駆除も同時にできる予防薬を選ぶことで、より効率的に愛犬の健康管理がしやすくなります。
フィラリア予防のよくある質問と回答
Q.室内で飼っている場合も、フィラリア予防は必要ですか?
A.はい、室内飼いでも予防は必要です。
蚊は、窓の開閉や網戸のすき間、玄関の出入りなどを通じて、室内にも入り込んでくることがあります。
マンションの高層階でも蚊の侵入が確認されているため、「室内だから安心」と思わず、しっかりと予防を続けることが大切です。
Q.予防薬の投与を忘れてしまった場合はどうすればいいですか?
A.すぐに獣医師に相談しましょう。
1回の飲み忘れでも、体内に入ったフィラリアの幼虫が成長を始める可能性があります。
予防薬は単に“先延ばし”にして与えればよいというものではなく、投与のタイミングや検査の必要性を確認することが重要です。
忘れてしまったときは、できるだけ早く動物病院にご相談ください。
Q.予防期間中に蚊に刺されてしまった場合は大丈夫ですか?
A.予防薬を正しく使用していれば、問題ありません。
フィラリア予防薬は、蚊に刺されたあと、体内に侵入したフィラリアの幼虫を駆除するしくみです。
そのため、定期的に投薬していれば、蚊に刺されてもフィラリア症の発症は防ぐことができます。
忘れずに投薬を続けることが、何よりも大切です。
Q.猫にもフィラリア予防は必要ですか?
A.はい、猫にも予防を検討することをおすすめします。
犬ほどではありませんが、猫も蚊に刺されることでフィラリアに感染するリスクがあります。
しかも猫の場合、体内にごく少数のフィラリアがいるだけでも、重い症状を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
とくに蚊が多い地域では、猫用の予防薬を使った対策をかかりつけの獣医師と相談しながら進めましょう。
まとめ
フィラリア症は一度感染してしまうと治療が難しく、進行すると命に関わることもある怖い病気ですが、適切な時期に予防薬を使用することで、ほぼ100%予防することができます。
予防薬にはいくつか種類があり、与え方や効果の範囲もさまざまです。
愛犬の体質や生活スタイルに合った方法を選ぶためにも、かかりつけの動物病院で獣医師と相談しながら決めることが大切です。
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猫のFIPは早期発見がカギ!|最新治療で回復の可能性も
FIPは、特に子猫や若い猫で多く見られる深刻な病気です。発症すると短期間で急速に進行し、適切な治療をしなければ命に関わる可能性が高いため、早期発見と迅速な対応が愛猫の命を守るカギとなります。
かつては「不治の病」とされていましたが、近年の獣医学の進歩により治療の可能性が広がりつつあります。特に、新しい治療薬の登場により、FIPから回復する猫も増えてきました。
愛猫がFIPと診断された場合でも、諦めずにできることを考えていくことが大切です。
今回は、猫のFIPの原因や症状、治療法、日常のケアについて詳しく解説します。
FIPとは?
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫腸コロナウイルス(FECV)が体内で突然変異を起こし、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に変化することで発症します。
特に1歳未満の子猫に多く見られ、免疫システムの異常な反応が関与していると考えられています。
感染経路 は、主に糞便や唾液を介してウイルスが広がり、猫同士の密接な接触によって感染リスクが高まる とされています。多頭飼育環境などではウイルスが広まりやすく、感染の可能性が高くなるため注意が必要です。
ただし、FECVに感染したすべての猫がFIPを発症するわけではありません。 免疫力の低下、ストレス、遺伝的要因、生活環境などが発症リスクを高めると考えられています。
猫のFIP症状
FIPには大きく分けて、「ウェットタイプ(滲出型)」 と 「ドライタイプ(非滲出型)」、そして両方の特徴を持つ「混合タイプ」 があります。それぞれ症状や進行の仕方が異なるため、早めに兆候を見つけることが大切です。
<ウェットタイプ(滲出型)>
ウェットタイプは、体内に液体(腹水・胸水)が異常に溜まるのが特徴です。ドライタイプに比べて進行が早く、比較的短期間で重篤化する傾向があります
・お腹や胸に水が溜まる(腹水・胸水)
・呼吸が苦しくなる(胸水が溜まることで肺が圧迫されるため)
・食欲低下や体重減少
・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
・高熱が続く
<ドライタイプ(非滲出型)>
ドライタイプは、液体の貯留が少ないものの、ウイルスが全身の臓器に炎症を引き起こすのが特徴です。
・神経症状(ふらつき、痙攣など)
・目の炎症
・肝臓や腎臓などの臓器機能障害
・食欲低下や体重減少
・高熱が続く
<両方のタイプに共通する初期症状>
FIPの初期段階では、ウェットタイプ・ドライタイプに関わらず、以下のような症状が見られます。
・元気がなくなる
・食欲が落ちる
・発熱(治療に反応しない高熱)
・体重が減少する
最初のうちは「ちょっと元気がない」「食欲が落ちたかな?」といった軽い変化に見えることもありますが、FIPは短期間で急激に進行するため、早めに異変を察知することが重要です。
診断方法
FIPは確定診断が難しい病気の一つであり、単一の検査だけで判断することはできません。そのため、いくつかの検査を組み合わせて総合的に評価することが重要です。
<問診と身体検査>
これまでの健康状態や症状の経過を詳しく確認し、触診や聴診を行います。
特に、発熱が続いているか、お腹が膨らんでいないかなどをチェックします。
<画像診断(レントゲン、超音波検査)>
ウェットタイプでは、お腹や胸に液体が溜まっていることが多いため、レントゲンや超音波検査でその有無を確認します。
また、ドライタイプの場合は臓器に異常がないかを調べる目的でも行われます。
<血液検査>
血液検査では、貧血や炎症の有無、タンパク質のバランス(A/G比)などを確認します。
また、血液中のα1‐AGP(α1酸性糖タンパク)の濃度を測定することで、FIPの可能性を評価することもあります。
<必要に応じた特殊検査>
・抗体検査
猫腸コロナウイルス(FECV)に対する抗体の有無を調べます。ただし、抗体が検出されてもFIPを発症しているとは限らないため、参考程度の情報となります。
・遺伝子検査(PCR検査)
胸水や腹水、または血液からFIPウイルスの遺伝子を検出する検査です。特に胸水や腹水から陽性反応が出た場合、FIPの診断精度が高まります。
・胸水・腹水の検査
ウェットタイプの場合、体内に溜まった液体(胸水・腹水)を採取し、その成分を分析することでFIPの可能性を判断します。
FIPの治療方法
近年の医療の進歩により、FIPの治療は大きく前進し、希望を持てる選択肢が増えてきています。かつては「不治の病」とされていましたが、現在では適切な治療によって回復するケースも報告されています。
当院では、最新の研究成果に基づいた治療法を取り入れ、愛猫の状態に合わせた最適なケアを行っています。
<治療のポイント>
・早期発見・早期治療が重要
FIPは進行が速いため、できるだけ早く治療を開始することが回復のカギとなります。元気がない、食欲が落ちた、発熱が続くなどの異変に気づいたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
・愛猫に合った治療計画を立てる
FIPのタイプ(ウェットタイプ・ドライタイプ)や、現れている症状によって治療の方法は異なります。獣医師が愛猫の状態を詳しく確認し、最適な治療プランを立てます。
・定期的な経過観察が大切
治療中は、愛猫の体調や検査結果を細かくチェックし、必要に応じて治療を調整していきます。特に、新しい治療薬を使用する場合は、副作用の有無や効果を慎重に見極めることが大切です。
・状態に合わせた柔軟な治療の調整
治療の効果には個体差があるため、経過を見ながら薬の種類を変更したり、投与量を調整したりすることがあります。
FIPと診断されても、諦めずに愛猫のためにできることを一緒に考えていきましょう。最新の治療法についても、獣医師にお気軽にご相談ください。
FIPのリスクを減らすには?
FIPは完全に防ぐことが難しい病気ですが、日頃のケアや生活環境を整えることで発症リスクを下げることができます。愛猫が健康に過ごせるよう、以下のポイントを意識しましょう。
<環境管理 |清潔で快適な空間づくり>
・こまめな掃除で清潔を保つ(トイレや食器の定期的な洗浄)
・ウイルス対策として、猫がよく触れる場所を定期的に消毒する
<健康管理 |愛猫の体調を整える>
・定期的に健康診断を受け、早期発見・早期対処を心がける
・栄養バランスのとれた食事で免疫力をサポート
・適度な運動で体力を維持し、ストレスを減らす
<多頭飼育時の注意点 |感染リスクを減らすために>
・新しく迎えた猫は一定期間(約2週間)の検疫期間を設け、健康状態を確認する
・猫同士のストレスを避けるため、個別の生活空間を確保する
・トイレや食器、ベッドなどの共用品は清潔に保ち、定期的に消毒する
よくある質問
Q.FIPは必ず発症するのでしょうか?
A.いいえ、猫コロナウイルス(FECV)に感染しても、すべての猫がFIPを発症するわけではありません。
多くの猫は無症状のまま過ごしますが、免疫の異常などが引き金となり、ウイルスがFIPへと変異すると発症する可能性があります。
Q.発症後の生活で気をつけることは?
A.愛猫が少しでも快適に過ごせるよう、以下の点に注意しましょう。
・静かでストレスの少ない環境を整える(過度な刺激を避ける)
・消化の良い食事で栄養をしっかり摂る(食欲が落ちやすいため工夫が必要)
・獣医師の指示に従い、定期的に通院・検査を受ける
Q.他の猫への感染は心配ないですか?
A.FIPウイルス(FIPV)自体は、猫同士で直接感染することはありません。
ただし、FIPの元となる猫コロナウイルス(FECV)は、糞便や唾液を介して感染するため、多頭飼育の場合は注意が必要です。特にトイレや食器の共用を避け、清潔な環境を保つことが予防につながります。
まとめ
FIPは進行が早く、早期発見と適切な治療が非常に重要な病気です。特に 「元気がない」「高熱が続く」「お腹が膨らんでいる」「ふらつく」などの症状が見られた場合は、できるだけ早く獣医師に相談しましょう。
かつては「不治の病」とされていましたが、近年の治療法の進歩によりFIPと診断されても回復の可能性が広がっています。 早期に適切な治療を受けることで病気の進行を抑え、愛猫が快適に過ごせる時間を延ばせるケースも増えています。
愛猫の健康を守るためには、定期的な健康診断や日頃の体調チェックが欠かせません。 普段の様子をよく観察し、少しでも「いつもと違うかも?」と感じたら、迷わず動物病院へご相談ください。
愛猫が健やかに過ごせるよう、一緒にサポートしていきましょう。
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猫の口内炎について|口臭やよだれは要注意!早期発見のコツ
口内炎は、口内の舌や歯茎などに炎症が生じる病気で、人と異なり、重度の場合、猫では口内全体に激しい炎症が広がります。強い痛みを伴うため、食事や日常生活に大きな支障をもたらす可能性があります。
猫の口内炎はその治療が困難であることから、「難治性口内炎」とも呼ばれています。
今回は猫にとって一般的である口内炎について、原因や症状、診断方法、治療方法、そして予防法やご家庭での注意点について詳しく解説します。
原因
猫の口内炎の原因はさまざまですが、はっきりとした原因が特定されていない場合もあります。
主に考えられる原因としては以下の5つが挙げられます。
<ウイルス感染>
カリシウイルス、ヘルペスウイルス、猫エイズウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)など、さまざまなウイルス感染が口内炎の原因となることがあり、これらのウイルスは、猫の免疫システムに悪影響を与え、口内炎を引き起こすと言われています。
<免疫の過剰応答>
自己免疫疾患や他の免疫関連疾患が口内炎の原因となることがあります。本来なら体を守るべき免疫系が過剰に反応し、誤って自らの組織を攻撃してしまうことがあります。この過剰反応により、口腔内の健康な組織が損傷を受け、炎症や潰瘍を引き起こすことがあります。
自己免疫疾患による口内炎は治療が特に困難で、症状の管理のために長期的なアプローチが必要になる場合があります。
<歯石の蓄積や歯周病>
猫の口腔内の衛生状態が悪いと歯石の蓄積や歯周病の発生につながり、これらは口内炎を引き起こすリスク因子となります。3歳以上の猫の大半が、様々な程度の歯周病を抱えていると言われています。
<内科的疾患>
腎臓病や糖尿病などの内科的疾患が間接的に口内炎の原因となることがあります。これらの疾患が猫の免疫システムの機能を低下させ、老廃物の蓄積が粘膜障害につながり、口内炎が引き起こされやすくなります。
<栄養不良>
栄養不足は、免疫力の機能低下につながります。栄養素が不足している状態では体の自然な回復能力も低下するため、病気からの回復が遅れます。
また、猫エイズウイルス(FIV)や、猫白血病ウイルス(FeLV)が原因で口内炎を発症しているケースや、元々の体質が原因で免疫が過剰に働いてしまっているケースが見られます。
症状
口内炎では、以下のような症状が見られます。
・過剰によだれが出る
・痛みによる食欲不振
・物を食べづらそうにする
・口臭の悪化
・口からの出血
・口を気にする仕草
来院のきっかけとして多いものは、口臭の悪化や口を痛がってご飯を食べなくなってしまったなどが挙げられます。
診断方法
まず、飼い主様からの問診を通して症状の詳細、食欲や活動レベルの変化、症状が現れ始めた時期などを確認します。
次に、口腔内を直接観察し、歯肉の状態や潰瘍の有無、歯石の蓄積程度、その他の異常をチェックします。
また、全身状態の把握のため、血液検査を行い、腎臓病や糖尿病など、口内炎を引き起こす可能性のある他の疾患を検出します。
さらに、ウイルス感染の可能性を除外するために、猫エイズウイルス、猫白血病ウイルスの感染の有無を確認します。
口内炎の原因となる歯周病や歯の問題を詳しく調べるために、歯科レントゲン検査が実施されることもあります。この検査によって、目に見えない歯周組織の問題を明らかにします。
治療方法
猫の口内炎の治療は、その原因や症状の重さに応じて多様なアプローチ方法があります。
歯周病が原因で口内炎が発生している場合、治療にはインターベリーなどの歯周病治療薬の使用や、歯石除去、必要に応じて抜歯を行います。これらの処置により、症状の改善が期待できます。
症状が特に重篤な場合は、猫の過剰な免疫応答を抑える目的でステロイド剤や免疫抑制剤の使用を検討することがあります。
また、猫の口内炎は、安定している時期にも定期的な口腔内のチェックとケアが非常に重要です。
さらに、基礎疾患が原因の口内炎の場合は、猫の健康状態に合わせた食事の調整と疾患に対する治療も必要となる場合があります。
予防法やご家庭での注意点
口内炎の予防には、歯磨きなどの口腔ケアを日常的に行うことが重要です。歯磨きを嫌がる猫も多くいますが、愛猫に合った口腔ケアグッズを選び、なるべく定期的にケアするようにしましょう。
歯磨きを通じて口内を観察することで、口内炎の早期発見にも繋がります。
また、血液を用いたウイルス検査を行うことで、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスへの感染の有無を事前に確認できます。特に、保護猫や外で暮らしたことのある猫の場合、これらのウイルスに感染している可能性も十分に考えられるため、事前に調べておくとよいでしょう。
まとめ
猫の口内炎は痛みを伴う疾患であり、猫の生活の質を著しく下げる原因となります。日々の口腔ケアを通じて、口内炎の予防および早期発見に努めましょう。
また、口臭やよだれの増加、食欲不振など、口内炎を疑うような症状が見られた場合は、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。
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