コラム
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症例
犬の消化管内寄生虫について|愛犬を寄生虫から守るポイント
消化管内寄生虫とは、主に胃や小腸などの消化器官に潜む寄生虫のことを指します。特に犬においては、こうした寄生虫による感染がしばしば見られ、下痢をはじめとする様々な健康問題の原因になり得えます。
加えて、寄生虫の種類によっては消化器官だけでなく、他の部位にも寄生するので十分な注意が必要です。
今回は、犬の消化管内寄生虫について、原因や症状から、診断方法、治療方法、予防法などに至るまで詳しく解説します。
原因
犬の消化管内寄生虫感染の主な原因は、外部環境からの感染です。
もっとも多いのは寄生虫に感染した他の犬の糞と接触し、寄生虫の卵や幼虫を体内に取り込んでしまうケースです。特に、ブリーダーやペットショップなど、多くの犬が密集して生活している環境では、その場にいるすべての犬に感染が拡大する可能性があります。
また、母犬から子犬への感染も見られます。これは、寄生虫に感染している母犬が妊娠や出産をした際に、胎盤や母乳を介して子犬に感染します。
胎盤を通じた感染を「胎盤感染」、母乳を通じた感染を「経乳感染」や「乳汁感染」と呼びます。
寄生虫感染は、衛生管理が行き届いた環境でも起こり得ます。初期段階では症状が現れないことが多く、消化管内寄生虫はノミやマダニのように目で確認しにくいため、発見するのは難しいことがあります。さらに、寄生虫は人間にも感染することがあるため、動物への定期的な対策と駆虫が非常に重要です。
症状
消化管内寄生虫の感染による症状は様々ですが、一般的なものには下痢、嘔吐、食欲不振、体重減少、血便、呼吸器に関わる問題、そして毛並みの劣化などが挙げられます。
また、感染が進行すると脱水や栄養失調などの深刻な病態を引き起こすこともあります。
特に、免疫力が弱く体力のない子犬期に消化管内寄生虫に感染すると、重症化のリスクが高いため、注意が必要です。
消化管内部寄生虫のうち代表的なものとしては、回虫(かいちゅう)や鞭虫(べんちゅう)、原虫(げんちゅう)、糞線虫(ふんせんちゅう)、鉤虫(こうちゅう)が挙げられます。
それぞれの寄生虫の特徴や寄生して引き起こす症状について紹介します。
<回虫(かいちゅう)>
消化管内寄生虫の一つである「回虫」は、長さ4〜18cm程度に成長し、主に犬の腸内に寄生します。感染の一般的な兆候としては、糞便中に回虫が混じっていることが挙げられ、これを定期的にチェックすることで、感染を早期に発見することが可能です。
回虫の感染は多くの場合、無症状であることが一般的ですが、特に子犬が大量に寄生された場合には、軟便や下痢、嘔吐などの消化器系の症状を引き起こす可能性があります。さらに、栄養失調や体重の低下、貧血が進行し、重症化すると命を落とす危険もあります。成犬になると、回虫に対する抵抗性が高まるため、回虫が成虫に成長することは難しくなります。通常、犬の体内で回虫が成虫まで成長するのは子犬期の6ヶ月以内とされています。
なお、感染の経路は口からの直接感染だけではなく、妊娠中の母犬から胎盤を通じて子犬へと感染する母子感染の可能性もあります。
<鉤虫(こうちゅう)>
鉤虫は犬の小腸に寄生し、その細長い形状が特徴の寄生虫です。感染経路には、経口感染、母子感染、そして経皮感染があります。この寄生虫は、腸の壁に噛み付き血を吸うことで栄養を得るため、寄生された犬は貧血、下痢、血便などの症状を示すことがあります。
犬鉤虫症の症状には、生後わずか2週間の子犬に見られる甚急性型(じんきゅうせいがた)、幼齢犬に見られる急性型、そして成犬に見られる慢性型の3つのタイプが存在します。
特に甚急性型や急性型では、貧血や体重減少のほか、粘り気のある血便、食欲不振、腹痛などの症状が引き起こされます。子犬では特に犬鉤虫症が重症化しやすく、場合によっては生命を脅かす事態にも至るため、高い注意が必要です。
<糞線虫(ふんせんちゅう)>
糞線虫は、その成虫の体長が約2mmと非常に小さく、肉眼ではほぼ確認することが難しい寄生虫です。主に経口感染するほか、皮膚や粘膜を通じての感染もあり得るため、特に注意が必要です。
糞線虫は多くの犬が共に生活している環境で見つかることが多く、ブリーダーやペットショップで購入した犬の場合も注意が必要です。
寄生している場合、無症状なこともありますが、軟便や下痢といった症状が現れることもあります。特に授乳期の子犬では、母乳を通じての経乳感染が起こり得ることから、免疫力が未発達の子犬は重症化しやすく、非常に注意が必要です。
生後間もない子犬が感染した場合、急性出血性腸炎(腸に炎症が起きること)を引き起こすし、命に関わる場合もあります。
なお、糞線虫の大量感染によって未治療のまま放置されると、糞線虫はただ腸内に留まらず肺組織を貫通して移行し、寄生虫性肺炎を生じ呼吸器症状を引き起こす場合があります。
<鞭虫(べんちゅう)>
鞭虫は6cm程度の長さで、都市部よりも農村部に多く見られる寄生虫です。屋外で過ごすことが多い犬は、鞭虫に寄生されるリスクが高いと言えます。
犬の体内に侵入した鞭虫は、初期段階では盲腸に寄生しますが、その数が増加すると結腸(大腸)にも広がり、下痢を引き起こすことがあります。鞭虫が大量に寄生すると、下痢、血便、排便の際のしぶりなどが生じやすくなり、この状態は慢性化や再発の可能性もありますので、早めに動物病院を受診しましょう。
重症化すると最悪の場合、命を落とすこともあり得るため特に注意が必要です。
鞭虫に寄生されても無症状、あるいは軽度の症状であれば駆虫薬のみで治療が可能なこともあります。しかし、下痢などの消化器系の症状が伴う場合には、駆虫薬に加えて、それらの症状を緩和するための対症療法が必要になることがあります。
<原虫>
・ジアルジア
ジアルジアは非常に小さな原虫で犬の腸内に寄生します。この原虫は、感染した犬の糞やそれに汚染された水などを摂取することで感染します。
感染症の症状は無症状の場合もありますが、水のような下痢を引き起こし、それに伴い元気消失や食欲不振、体重が減少することがあります。
無症状で感染しているケースが多いため、当院では子犬の初診時には鏡検とは別に検査キットを使って検出しています。また院内検査で下痢の原因が特定できない場合、便を用いたRealPCR検査による病原体の検出をご案内しています(外注検査)。
・トリコモナス
トリコモナスも小さな原虫の一種で、犬の腸内に寄生します。トリコモナスに感染した犬の糞やそれに汚染された水などを摂取することで感染します。
無症状の場合もありますが、長期間下痢を引き起こす場合があります。他にも、排便回数の増加、粘液や血が混じった下痢も見られます。
・コクシジウム
コクシジウムは特に子犬に感染しやすい原虫で、犬の小腸に寄生します。汚染された土壌、糞便、水から感染することが最も一般的です。
感染すると、泥状または水のような下痢を引き起こし、重症の場合には血便が出ることもあります。これにより衰弱し、最悪の場合には命を落とすこともあります。その他にも脱水、食欲不振、元気消失などの症状も見られます。
診断方法
消化管内寄生虫の診断には、主に糞便検査(検便)が行われます。検便は少量の便を顕微鏡で観察して寄生虫の卵や虫体を探し出します。
しかし、一度の検査では必ずしも寄生虫を検出できるとは限らないため、特に確実な診断を求める場合は、複数回にわたって検便を行うことが推奨されます。
特に子犬は寄生虫感染のリスクが高いため、複数回の検便が特に重要とされています。
新しく愛犬を迎えた際には、最初の診察時に糞便検査を行い、寄生虫感染の有無をチェックすることが大切です。
治療方法
消化管内寄生虫の治療は、駆虫薬の使用が一般的です。
これらの駆虫薬には様々な形状があり、スポットオンタイプ、スプレータイプ、錠剤タイプ、おやつタイプなど、多岐にわたります。
寄生虫の種類や犬の年齢、体重、健康状態に応じて、使用する薬剤は異なるため、治療の際は獣医師の指示に従って薬を使用しましょう。
予防法やご家庭での注意点
新しく愛犬をお家に迎えたら下痢などの症状がないかよく観察し、先住犬がいる場合は、しばらく隔離するようにしましょう。また全身の健康チェックも兼ねて、一度動物病院を受診し、検便をしておくと安心です。
消化管内寄生虫の予防には、感染源となり得る他の動物の糞便との接触を避けることが何よりも重要です。お散歩の際には、他の犬や野生動物の便を避け、愛犬がそれらに近づかないように注意しましょう。
回虫などの体内に寄生する内部寄生虫は、ある程度数が増えて症状が出てからでないとなかなか気がつかないため、気づいたときには症状が重症化している可能性もあります。
そのため、症状が現れる前に定期的に予防薬を投与し、寄生虫感染を予防することが非常に重要です。
まとめ
愛犬が寄生虫に感染した可能性がある場合、早めに動物病院に連れていき適切な治療を受けさせることが大切です。感染を放置すると犬の免疫力が低下し、他の病気にかかりやすくなる可能性があり、治療が長引いてしまうことがあります。
愛犬の健康を守るためには予防対策と早期の治療が鍵となります。
愛犬が健康で幸せな生活を送れるように、定期的な健康チェックと予防措置を行いましょう。
千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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症例
犬のアレルギー性皮膚炎|環境の管理や食事の見直しが重要
花粉、ハウスダスト、動物の毛など、人間にアレルギーを引き起こすさまざまな物質がありますが、実際には動物もこれらの物質に対してアレルギー反応を示すことがあります。
特に犬のアレルギー反応は主に皮膚に発生し「アレルギー性皮膚炎」と呼ばれます。
今回は犬のアレルギー性皮膚炎について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
原因
アレルギー性皮膚炎は、犬がアレルギー反応を起こす物質(アレルゲン)にさらされたときに、免疫が過剰に働くことで発生します。
なお、アレルゲンによって病名が以下のように分かれています。
・アトピー性皮膚炎:花粉やハウスダストといった環境中の物質を吸入することや皮膚から取り込むことで発症する。
・ノミアレルギー性皮膚炎:吸血時に体内に入るノミの唾液(タンパク質)が原因となり発症する。
・食物アレルギー:食物の中の成分が原因でアレルギー反応が引き起こされる。
アレルギー体質の発生には、遺伝や生後間もない時期の環境などが関係しているとされていますが、その詳細なメカニズムについてはまだ明確には解明されていません。
特に、以下の犬種で発症が多いといわれています。
・フレンチ・ブルドック
・柴犬
・トイプードル
・シー・ズー
・ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
・ワイヤー・フォックス・テリア
症状
主な症状には、皮膚のかゆみ、赤みや腫れ、湿疹、耳のかゆみや発赤、くしゃみや鼻水などが見られ、外耳炎や結膜炎などを引き起こすことがあります。
愛犬がしきりに皮膚を舐めたり掻きむしっていたり、耳を掻いたり頭を振ったりする行動が見られる場合、皮膚や耳に強いかゆみを感じているかもしれません。
また、皮膚の状態が悪化するとそのバリア機能が弱まり、他の皮膚疾患(膿皮症やマラセチア性皮膚炎など)の発生リスクが高まるので、注意が必要です。
診断方法
診断では、身体検査やアレルギー検査が行われます。
アレルギー検査には主に以下の方法があります。
・血液検査:犬の血液中に特定のアレルゲンに対する抗体が存在するかを調べます。これには、特定のアレルゲンに対するIgE抗体を測定する検査が含まれます。加えて、リンパ球反応検査も実施します。
・除去食試験、食物負荷試験:食物アレルギーの特定に用いられる方法で、アレルゲンを含まない食事を与えて症状が改善するかどうかを観察します。
治療方法
かゆみのコントロールや炎症を鎮静させるためには、抗アレルギー薬やステロイドを用いた薬物療法を行います。
また薬物療法と並行して、保湿や腸活、皮膚の常在菌の管理を行い、皮膚の健康状態を改善させることも重要です。
さらに、アレルゲンを特定・除去することで、さらなるアレルゲンへの曝露を防ぐことも重要な治療の一環です。
このように当院では、薬物療法、スキンケア、アレルゲンの除外を治療の三本柱としています。
ご家庭での注意点
ご家庭の注意点としては、環境の管理や食事の見直しが重要です。アレルゲンがたまらないよう、こまめに部屋を掃除したり、空気清浄機を使用したり、ノミの駆虫を行うことも効果的です。
保湿ケアや腸の健康維持も大切なポイントです。
当院では、Dermoscentのアニマルスキンケア用品や、ファイナルアンサーのサプリメント、スキンケアスプレーなどを導入し、動物の肌の状態に合わせた適切なケアをご提案しています。
■ファイナルアンサー
ファイナルアンサーについてはこちらのお知らせをご覧ください
Dermoscentの製品については公式HPをご覧くださいまとめ
犬のアレルギー性皮膚炎はさまざまな要因によって引き起こされる疾患であり、適切な治療が必要です。
当院では、アレルギー性皮膚炎に悩む愛犬の健康を支えるために総合的なアプローチを採用しています。薬物療法、アレルゲンの除外、そしてスキンケアを組み合わせることで、皮膚の健康を保護し、愛犬が快適に生活できるようにサポートしています。
また、治療には日々の食事やスキンケアなどご家族の協力が不可欠なため、生活指導も行っています。皮膚の病気でお困りのことがあれば、当院までお気軽にご相談ください。
■皮膚に関する病気はこちらでも解説しています
・犬や猫の皮膚のできもの(体表腫瘤)について千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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症例
犬の慢性腎臓病について|静かに進行する病気
腎臓病は犬で発生の多い疾患です。特に、ゆっくりと時間をかけて進行していくものを「慢性腎臓病」と呼び、中〜高年齢の動物で多く発生します。
腎臓は体液中の老廃物を除去する働きを担っており、腎機能の維持は愛犬の健康維持のために非常に重要です。
今回は犬の慢性腎臓病について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
原因
慢性腎臓病に至る直接の原因は多岐にわたります。
・加齢による腎機能の自然な低下
・遺伝的要因
・細菌感染やウイルス感染による腎炎
・中毒物質の誤飲、腎臓の血流の低下
・尿路閉塞 等
特に、コッカー・スパニエル、サモエド、ドーベルマン、シー・ズー、ヨーキーなどで発症しやすいことが知られていますが、全ての犬種で慢性腎臓病にかかる可能性があります。
症状
慢性腎臓病は、進行状況によって症状が変化します。
初期の慢性腎臓病では、目立った症状が出ないことがほとんどです。
しかし病態が進行すると、水をたくさん飲み、尿をたくさん排泄する多飲多尿や元気ではあるものの痩せていくなどの症状が出始めます。
さらに症状が進行すると、通常は尿として体外に排出されるべき老廃物が血中に蓄積し尿毒症が起こり、食欲低下、元気消失、嘔吐、下痢、便秘などが見られます。
診断方法
慢性腎臓病の診断には、血液検査や尿検査、血圧検査、腹部超音波検査などの画像診断が行われます。特に腎数値や尿比重、尿中の蛋白質の検査を行うことで、腎臓の機能低下や損傷の程度を評価することが可能です。
腎機能が大きく損なわれると、リンやカリウムなどのミネラルのバランスが崩れます。リンやカリウムが体内に蓄積すると、腎臓やその他の臓器に悪影響が出るため、これらの値も調べておくことが重要です。
最近では、FGF23(線維芽細胞成長因子23)の検査も重要な要素となっています。FGF23は血液中のリンの濃度上昇と関連することがわかっているため、食事療法の開始時期の目安となります。
治療方法
慢性腎臓病を完治させる方法は、残念ながらありません。
そのため、慢性腎臓病の治療では食事療法や点滴などを行い、症状の緩和と腎臓の負担軽減が目的となります。吐き気や食欲不振などの症状が強い場合は、吐き気止めなどの薬物療法を行うこともあります。
また当院では、高カリウム血症治療薬であるロケルマを使用しています。カリウム値が高い場合、従来は点滴を行うしかありませんでしたが、ロケルマを使用することで効果的に管理できるようになりました。
加えて、腎機能が弱まっている中で老廃物の排出を促すには、可能な限りたくさん排尿させる必要があります。そのため、積極的な水分補給が重要です。
予防法やご家庭での注意点
慢性腎臓病の予防には、適切な食事管理やストレスの少ない環境づくりを心がけ、腎臓への負担を最小限にすることが重要です。また水は常に清潔なものを用意し、腎臓に悪影響を与えるような物質の誤飲には注意しましょう。
初期の慢性腎臓病では症状がほとんど出ないため、定期的に健康診断を受け、腎臓の健康状態を確認することも重要です。
まとめ
犬の慢性腎臓病は進行性の疾患であり、早期の発見と適切な管理が重要です。
当院では高カリウム結晶治療薬やFGF23の検査など最新の治療法を取り入れ、愛犬の健康をサポートしていますので、慢性腎臓病でお困りのことがあれば、当院までご相談ください。
■当院の泌尿器科に関連する病気はこちらで解説しています。
・犬の膀胱腫瘍
・猫の尿道閉塞について|尿が出なくなったら非常に危険千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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症例
猫の尿道閉塞について|尿が出なくなったら非常に危険
尿道閉塞とは、固形物(主に尿道栓子、膀胱の炎症によって産生される膿や粘液や結晶のこと)が尿道に詰まることで尿が正常に出なくなってしまう病気で、下部尿路疾患(膀胱炎)に関連して発症することが多く、オス猫ではよくみられます。
結石が尿とともに自然に外へと流れ出てくれればよいのですが、完全に詰まってしまうと急性腎障害や尿毒症といった病気に発展し、一刻を争う事態となってしまいます。
今回は猫の尿道閉塞について、当院での治療方針を中心にまとめました。
原因
尿の元は腎臓で作られて、尿管、膀胱、尿道を経て排尿されます。尿道閉塞は、その中の尿道という尿を体外に排泄する管が詰まってしまうことで引き起こされます。
一般的には尿道栓子が詰まることが多く、特にオスはメスよりも尿道が細いため、発生しやすいといわれています。
また、稀ではありますが、それ以外にも膀胱に腫瘍があると、その一部が尿道に移動して詰まることもあります。
症状
尿道閉塞になるとほとんど尿が出なくなるため、非常に危険です。そのため、
・頻繁にトイレに行くものの尿が出ない
・尿に血が混じる
・尿がぽたぽたとしか出ない
といった尿に関する症状が現れます。
また、尿を出したいのに出せないため、苦しさや痛みからウロウロとして落ち着かない、元気・食欲がない、といった様子もみられます。
こうした状態が続くと、急性腎障害や尿毒症にまで発展してしまいます。
急速に全身の状態が悪化することで、最終的に発作や不整脈を起こして命を落としてしまう危険性もあります。
診断方法
問診、身体検査、血液検査やエコー、レントゲン、尿検査などを組み合わせて診断します。
治療方法
治療には内科療法と外科療法がありますが、尿道閉塞の猫は生死をさまよっているケースも多いため、まずは緊急の処置として尿道にカテーテルを挿入し、排尿を促す必要があります。
その後、内科療法を選択する場合は、状態に応じて入院下での治療を行い、状態が安定したら自宅で再発を予防する治療(尿路結石用の療法食を与えるなど)、といった方法で管理します。
ただし、こうした治療をしても尿道閉塞を何度も繰り返す場合は、手術が必要になる場合が多いです。
当院では2〜3回、尿道閉塞を繰り返すようであれば手術による治療をお勧めしています。その術式は会陰尿道造瘻術と呼ばれるもので、この手術を行うことで尿道閉塞が再発しづらくなりますが、尿道が陰茎を通らずに皮膚へと開口するため、術後は細菌性膀胱炎を始めとする合併症が起こりやすくなることが知られており、およそ2割で発症し、再発も多いといわれています。
ご家庭での注意点と予防法
具体的な対策としては、新鮮な水を常に飲める状態にしておく、食事中の水分を多くする、トイレは猫の頭数プラス1台用意する、トイレを清潔に保つ、トイレの形状や砂の材質などをお気に入りのものに変えてみる、といったことが挙げられます。
まとめ
尿道閉塞は特にオス猫に多くみられ、放置すると腎障害や尿毒症に進行する恐れがあります。
今回ご紹介したような様子がみられたら、早めに動物病院を受診しましょう。
■当院の関連する病気はこちらで解説しています
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<参考文献>
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症例
猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)とは|かつて治療法が無かった病気だが薬で治る可能性がある
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、特に若い猫に多く見られる深刻な疾患です。この病気は猫伝染性腹膜炎ウイルスによって引き起こされるもので、猫の免疫システムの異常な反応が発症の原因となります。
従来、FIPは治療が難しいとされてきましたが、近年の研究により、治癒する可能性があることが明らかになってきました。
今回は猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
原因
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫腸コロナウイルス(FECV)が変異して生じる猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)によって引き起こされる病気です。
このウイルスはすべての年齢で発症する可能性がありますが、特に1歳未満の子猫に多い傾向が見られます。感染の詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、猫の免疫システムの異常な反応が関与しているとされています。
また、ウイルスは糞便や唾液を介して感染し、猫同士の密接な接触は感染リスクを高めることが知られています。症状
FIPには、滲出型(ウェットタイプ)、非滲出型(ドライタイプ)、そして両方の特徴を持つ混合タイプが存在します。
症状は猫によって異なるものの、発熱、食欲不振、体重減少などが共通して見られます。ウェットタイプの場合、胸水や腹水が溜まり、呼吸困難や黄疸を引き起こすことがあります。
一方、ドライタイプでは臓器への影響が顕著で、神経症状や目の病変が生じやすい傾向があります。どちらのタイプでも病気が進行すると、急速に健康状態が悪化する傾向にあります。診断方法
FIPの診断は複雑で、慎重な判断が必要になります。
初めに、問診と身体検査によって症状を評価し、その後、画像検査や血液検査、時には腹水や胸水の検査を行います。
特にFIPが疑われる場合は、抗体検査やPCR検査による遺伝子検査が多く実施されますが、これらの検査結果だけでは決定的な診断を下すことは困難です。
そのため、獣医師はこれらの検査結果を総合して、猫の症状、臨床所見、検査結果を基に診断を行います。また、血液中のα1‐AGP(α1酸性糖タンパク)という急性期タンパクの濃度を測定することにより、FIPの可能性を評価することもあります。
治療方法
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療における最近の進展は、大いに注目されています。かつて効果的な治療法が存在しなかったFIPですが、現在では新たな治療薬が登場し、治療の可能性が広がっています。
また治療過程では、飼い主様との綿密なコミュニケーションが非常に重要となります。治療には時間がかかることもあり、定期的な健康チェックや症状のモニタリングが必要です。
症状が重篤化すると治療が難しくなるため、早期の対応が求められます。他の治療法としては、免疫抑制剤や抗炎症薬の使用、サポートケアなどがありますが、これらは病気の進行を遅らせることはできても、根本的な治癒にはつながりにくいのが現実です。
総じて、FIPの治療は複雑で難しいものですが、進行中の研究と新しい治療法の開発により、希望が見え始めています。予防法やご家庭での注意点
猫伝染性腹膜炎(FIP)予防には、猫の健康維持と感染リスク軽減が重要です。室内飼育を徹底し、他の猫との直接接触を避けることでFIPV(猫伝染性腹膜炎ウイルス)の感染リスクを低く保つことができます。特に多頭飼いでは、新たに迎える猫の感染状態や他の猫への感染リスクを慎重に判断する必要があります。
また、免疫力強化にはバランスの取れた食事が必要で、獣医師の指導のもと栄養補助食品を与えることも有効です。ストレスの管理も大切で、快適な休憩スペースの提供、適切な運動や遊び、そして飼い主様とのスキンシップなどが役立ちます。
そして定期的な健康診断は、特に若い猫や免疫力が弱い猫においてFIP予防に欠かせないものです。早期の異常検出が重要であり、定期健診はFIPだけでなく他の病気の早期発見にもつながります。
まとめ
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、特に若い猫に多く見られる重篤な病気です。しかし、最近では特定の薬剤を用いた治療例が増えています。
愛猫を守るためには、室内での飼育をしっかりと行い、定期的に健康診断を受けることが大切です。早期発見と適切な治療が、愛猫の健康を守る鍵になります。千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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症例
犬や猫の子宮蓄膿症について|避妊手術による予防が有効
子宮蓄膿症とは、陰部から細菌が侵入し子宮内で増殖することで、子宮に膿が溜まる疾患です。多くが発情後2か月以内の黄体期と呼ばれる期間に発症します。9歳以上の未避妊のメス犬では発生率が66%と言われており、非常に多く見られる疾患です。
一方、猫では発症率は高くありませんが、未避妊であれば発症リスクがあります。今回は、そんな犬や猫の子宮蓄膿症の原因や予防法について詳しく解説していきます。
原因
発情後に分泌されるプロゲステロンという性ホルモンは、子宮内膜の増殖や子宮内の免疫低下など、細菌の増殖に適した環境を作ってしまいます。そのため、肛門や陰部付近に存在する大腸菌が子宮内に侵入し感染することで、本疾患を発症します。原因菌は他にもサルモネラ菌やブドウ球菌のこともあります。
症状
子宮蓄膿症の症状は下記が挙げられます。
・元気消失
・食欲低下や食欲喪失
・陰部から血膿のようなものが出る
・多飲多尿
・発熱
・虚脱 など
陰部からおりものや膿が出ている開放型の場合は気がつきやすいものの、閉鎖型といって子宮から膿を排出できない病態の場合、発見は困難です。
また、開放型でも、排出された膿を犬猫が舐め取ってしまい何もないように見えることもあります。しきりに陰部付近を舐めている場合は注意しましょう。
診断方法
エコー検査で膿が貯留している子宮を確認し診断されます。
あわせて、全身状態の把握のために血液検査やレントゲン検査を行います。
血液検査では多くの場合、白血球数や炎症性マーカーの上昇が見られます。
治療方法
子宮蓄膿症の治療は、内科治療と外科治療の2つがあります。
抗生剤を中心とした内科的治療が選択される場合もありますが、一時的に状態が改善しても再発することが多く、根本的な解決にはなりません。
外科治療では、膿の溜まっている子宮と卵巣を摘出します。
子宮を取るので再発することはなく、根本的な完治が望めますが、早期に手術を行ってもその後の死亡率は5~8%とされています。発見が遅れると手術を行ったとしても救命率が下がりますので、早期発見、早期治療が重要です。
予防法や注意点
子宮蓄膿症の確実な予防方法は、避妊手術を行うことです。
健康で若い体にメスを入れることに躊躇する飼い主様も多いですが、病気になってから手術を行うよりも低リスクで、体への負担も軽度です。
また、早期の避妊手術により、子宮蓄膿症だけでなく乳腺腫瘍の発症率を下げることもできます。
まとめ
子宮蓄膿症は、子宮内の細菌由来の毒素が全身に回り敗血症を起こしたり、膿の貯留により子宮が破裂したりと、緊急性が高い病気です。大切なペットの命を危険に晒さないためにも、病気になる前に避妊手術を受ける選択を検討することをお勧めします。
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症例
犬の喉頭腫瘍について|原因や症状、治療法について解説
喉頭は口の奥の気管の入り口で、食べたものが気管に入らないように蓋をする役目の部分です。この喉頭に腫瘍が生じると、喉頭内腔が狭くなり、呼吸困難などの症状を引き起こします。
今回は、犬の喉頭腫瘍の原因や予防法について詳しく解説していきます。
原因
犬の原発性喉頭腫瘍は稀で、扁平上皮癌といわれる悪性腫瘍が最も多いといわれています。原発性ではなく、全身性あるいは転移性の腫瘍が喉頭に発生することもあります。
症状
喉頭腫瘍の症状としては、鳴き声が変わる、食べ物を飲み込む際に辛そうにするといった嚥下障害などの症状が見られます。
さらに進行すると、喘鳴や努力性呼吸、呼吸困難(酸欠からチアノーゼ)、意識喪失などがみられるようになります。
急性の呼吸困難を引き起こし、最悪の場合は死に至るケースもあります。診断方法
喉頭腫瘍は主にX線、超音波検査 、CT検査により、喉頭部分に腫瘍が存在することを画像上で確認することにより診断されます。
また、場合によっては内視鏡検査が必要になるケースもあります。
さらに、腫瘍が良性か悪性か、悪性度などを確認するには、病理組織診断が必要です。治療方法
治療方法は主に外科治療であり、喉頭全摘出術により喉頭を丸ごと除去するか、腫瘍のみを取り除く手術が選択されます。
しかし、良性腫瘍であれば、このような外科的治療により根治が可能ですが、悪性腫瘍では多くの場合症状を緩和する目的で行われます。予防法や注意点
喉頭腫瘍に予防法はありません。
犬の喉頭腫瘍は緩やかに進行するため、早期発見が難しく、進行して重度な呼吸困難などが生じた段階で気付くケースが大半です。
そのため、日頃から愛犬をしっかり観察し、気になる様子があれば早めに動物病院を受診するようにしましょう。まとめ
喉頭腫瘍などの腫瘍は、早期発見で治療やその後の経過も良好になる可能性が高くなります。
日常的に愛犬をしっかり観察し、早期発見・早期治療に努めましょう。千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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症例
犬や猫の皮膚のできもの(体表腫瘤)について
犬や猫の身体に体表腫瘤ができている場合には、要注意です。
本記事では、当院でも症例がある、犬や猫の体表腫瘤の症状、診断・治療方法について詳しく解説していきます。
犬や猫の体表腫瘤の症状
犬や猫の体表腫瘤では、腫瘤の種類によってさまざまな症状がみられます。
脂肪腫や組織球腫のような良性の腫瘍では、無症状のケースも多くみられますが、悪性腫瘍の場合、自壊により化膿したり、痛みを伴ったりすることもあります。
良性腫瘍でもあまりにも大きすぎると、生活に支障が出ることもあるので注意が必要です。
犬や猫の体表腫瘤の種類
犬や猫の体表にできる腫瘤には、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
ここからは、良性腫瘍と悪性腫瘍に分けて詳しく解説していきます。
【良性腫瘍】
犬や猫の良性腫瘍には以下のような腫瘍が考えられます。
・脂肪腫
脂肪組織の良性腫瘍であり、中高齢の犬の体表に良くみられる腫瘤です。
ほとんどが無症状であり、生活にも支障をきたさないため経過観察をとることが多いものの、大きくなりすぎると外科手術を行い取り除く必要があります。
・組織球腫
組織球腫は、若齢の犬でよくみられる良性の腫瘍です。
赤く腫れた丸い腫瘤を体表に作り、急速に大きくなることもあります。
ほとんどの組織球腫は1〜2ヶ月ほどで自然に退縮していきます。
【悪性腫瘍】
悪性腫瘍では、以下のような腫瘍が考えられます。
・軟部組織肉腫
繊維肉腫や脂肪肉腫、末梢神経肉腫、血管周皮腫などの軟部組織肉腫と呼ばれる悪性腫瘍は、皮下に硬く触れる腫瘤として発見されるケースが多いと考えられます。
手術によって切除することが推奨されますが、筋肉に腫瘍細胞が固着している場合もあり、再発や転移が起きることもあります。
・乳腺腫瘍
中高齢の未避妊メスでは、乳腺腫瘍に気をつけなければいけません。
乳腺にできる腫瘤のうち、犬では約5割、猫ではほとんどが悪性の乳腺腫瘍であると言われています。転移も起こりやすい腫瘍であるため早期の対処が必要です。
・肥満細胞腫
体表に赤いしこりを見つけた場合には、肥満細胞腫を疑う必要があります。
特にパグやフレンチ・ブルドックといった犬種では好発する腫瘍であるため注意が必要です。生検を行い悪性度に合わせた治療が適用されます。
・肛門嚢腺癌
肛門にできる悪性腫瘍としては、肛門嚢腺癌があります。
体内のリンパ節に転移し便秘や嘔吐などの消化器症状を引き起こす場合や、自壊することもあるため早期の対処が必要な腫瘍です。
犬や猫の体表腫瘤の診断方法
体表腫瘤を診断する場合には、針を使っての生検や手術による切除生検を行う必要があります。
それぞれの診断方法の特徴は以下の通りです。
・針生検
腫瘤に針を刺すことにより細胞を採取する。無麻酔下で行える。
・切除生検
麻酔をかけて腫瘤を切除し組織を採取する。小さな腫瘤ならば全て切除可能。
針生検は無麻酔下でも行えますが、細胞が採取できない場合もある点がデメリットです。
切除生検は、細胞を採取することは可能ですが、麻酔リスクなどもあるため術前検査が必要です。
犬や猫の体表腫瘤の治療方法
犬や猫の体表腫瘤の治療方法は、腫瘤の種類や転移の有無などによってさまざまです。
悪性腫瘍では、手術後も再発や転移防止のために化学療法や放射線治療が適応となることもあります。
また、すでに他の臓器へ転移している場合は手術が適応とならない場合もあるため、術前検査時の画像検査(レントゲン、エコー)や麻酔下CT検査での判定が重要です。
まとめ
犬や猫の体表腫瘤は、良性腫瘍と悪性腫瘍があり、治療も腫瘍の種類や転移の有無などの状態によってさまざまですので、それぞれの個体に合った治療方法を選択していく必要があります。
悪性腫瘍の場合には、転移する前に早めに対処する必要があるでしょう。
体表腫瘤がある犬を診察する際には、しっかりと検査を行い適切な治療を行うようにしてください。
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姉ヶ崎どうぶつ病院は1.5次診療施設で質の高いジェネラリストを目指し、地域獣医師医療を担う動物病院です。
獣医師、動物看護師ともに育成プログラムが充実しており、「獣医師や動物看護師として経験を積んで成長しやすい環境」が整っています。
目の前の課題に対し、しっかり取り組む方、誠意をもってコミュニケーションを取る方、
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症例
犬や猫の口腔内腫瘍について
犬や猫の口の中にできものができている場合には、口腔内腫瘍の可能性も考えなければなりません。
悪性腫瘍である場合には、積極的な治療を行わないと動物の生活の質(QOL)を著しく低下させます。
本記事では、当院でも症例がある、犬や猫の口腔内腫瘍の症状、診断方法、治療・予防方法について解説します。
口腔内腫瘍の症状
犬や猫の口腔内腫瘍でよくみられる症状は以下の通りです。
・よだれ
・顔面の腫脹
・出血
・潰瘍
・口臭
・食欲不振
口内炎や歯周病の症状とも似ているため、獣医師はしっかりと口腔内を確認して腫瘍を見逃さないようにしなければなりません。
腫瘍が大きくなると、食欲不振だけでなく、呼吸困難などの症状もみられる場合もあるため、進行する前に早期の対処が必要です。
また腫瘍が大きくなってくると、採食ができなくなる以外にも呼吸困難を引き起こす症例も存在します。
口腔内腫瘍の種類
悪性の口腔内腫瘍として、以下のような腫瘍が多くみられます。
・悪性黒色腫
・扁平上皮癌
・線維肉腫
・棘細胞性エナメル上皮腫
猫においては、口の中にできる腫瘍の悪性度は高く、扁平上皮癌が特に多くみられます。
良性の腫瘍も存在しますが、悪性腫瘍の場合には局所浸潤や他の臓器への転移を引き起こすため、注意が必要です。
口腔内腫瘍の診断方法
犬や猫の口腔内腫瘍の診断方法には、基本的に生検が必要です。
口腔内腫瘍に対して無麻酔で針生検を行うのは困難なため、麻酔や鎮静下の安全な状況で、パンチ生検や切除生検を行う必要があります。
見た目での判定は難しく、悪性黒色腫は、黒いカリフラワー状のしこりのように見えることが多いとされていますが、黒色の色素を持たない悪性黒色腫も存在します。また良性腫瘍でも同様の見た目のものが存在します。
猫で多い扁平上皮癌は、赤いカリフラワー状、繊維肉腫は硬く膨らんでくるように増殖するのが特徴ですが、その限りではありません。
犬や猫の口腔内腫瘍の治療方法
犬や猫の口腔内腫瘍の治療は、主に外科手術による腫瘍の切除です。
積極的な外科手術は骨を削るような侵襲性の強い手術(実施の場合は紹介となります)になることも多いため、術後の見た目の変化、動物への負担、術後のケアについて、手術前にご家族と獣医師がよく話し合うことが重要です。
進行して外科適応とならない症例や、術後悪性腫瘍が判明した場合、進行を遅くしたり、再発や転移防止を目的とした化学療法や放射線治療が適応になることもあります。
また転移の有無は予後の判定や治療方針を決定するために重要です。
術前検査時の画像検査(レントゲン、エコー)や麻酔下CT検査、転移が疑われる組織の細胞診、組織診断にて相対的に評価します。
犬や猫の口腔内腫瘍の予防方法
犬や猫の口腔内腫瘍に対する予防方法は、残念ながらありません。
しかし歯肉炎や歯周病からくる炎症が腫瘍の発生に関与しているという見方もあり、日常的なデンタルケアや口腔内のチェックをこまめに行うことが腫瘍の早期発見・早期治療につながります。
まとめ
本記事では、犬や猫の口腔内腫瘍の症状、診断方法、治療方法について解説してきました。
犬や猫の口腔内腫瘍は、進行して大きくなるとさまざまな症状を引き起こしQOLの低下につながります。
早期に発見治療を行うことが大切です。診察においても口腔内のチェックをしっかりと行うようにしましょう。
日常的なデンタルケアと、早期発見・早期治療が大切です。
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症例
犬や猫の肛門周囲腫瘍について
犬猫の肛門周囲腫瘍は、良性のものから悪性のものまでさまざまです。
それぞれ病態や治療方法も変わってくるため、しっかりと病気について理解する必要があるでしょう。
本記事では、当院でも症例がある、犬猫の肛門周囲腫瘍の症状、診断・治療方法について解説します。
肛門周囲腫瘍の種類
肛門周囲の腫瘍は主に以下の3つが考えられます。
・肛門周囲腺腫
・肛門周囲腺癌
・肛門嚢アポクリン腺癌
肛門周囲腺腫は、良性腫瘍です。
肛門周囲腺癌や肛門嚢アポクリン腺癌は悪性腫瘍であり遠隔転移や周辺臓器、リンパ節への浸潤が見られます。
猫では、肛門周囲腺が存在していないため、肛門周囲の腫瘍は稀です。
肛門周囲腫瘍の症状
肛門周囲腫瘍の症状は、以下の通りです。
・お尻にしこりができる
・腫瘍から出血する
・お尻を地面に擦り付ける
・便秘
・食欲不振
・嘔吐
初期段階では、お尻にしこりができているだけで無症状のケースも多く見られます。
病状が進行すると、腫瘍から出血したり便秘が見られたりします。
肛門周囲腫瘍の診断方法
肛門周囲腫瘍の診断方法は、以下の通りです。
・身体検査
・血液検査
・画像検査(レントゲン、エコー、CT検査)
・FNA検査、生検
身体検査では、肛門周囲の腫瘤を確認します。
また、リンパ節への転移や便秘の状態を調べるために直腸検査を行う必要もあります。
血液検査では、高カルシウム血症の有無を確認します。
肛門嚢アポクリン腺癌では、腫瘍随伴症候群として、高カルシウム血症を示すことがあるので、腫瘍の鑑別に有効です。
そのほか、転移や浸潤を確認するために、画像検査を行います。
腫瘍をより高精度に診断するためにFNA検査や生検を行うことも必要でしょう。
肛門周囲腫瘍の治療方法
肛門周囲腫瘍の治療は、腫瘍の種類によって変わります。
【肛門周囲腺腫】
性ホルモンが関与しており、去勢手術により腫瘍の縮小化が期待できます。
縮小後に手術により腫瘤を摘出したり、手術が必要ないほどのサイズになったりすることもあります。
縮小しないものや再発したものに関しても外科的処置が必要になるでしょう。
【肛門周囲腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌】
外科的手術を行い、腫瘍や浸潤したリンパ節の切除を行う必要があります。
再発や転移することも多い腫瘍であるため、手術後の抗がん剤や放射線治療などの治療を行うことも必要です。
肛門周囲腫瘍の予防法
肛門周囲腺腫は去勢手術により予防可能です。
その他の肛門周囲腫瘍については、原因がはっきりわかっていないため、予防することは困難です。
腫瘍の早期発見・治療が大切になるため、身体検査をしっかり行う必要があります。
まとめ
本記事では、犬の肛門周囲腫瘍の症状、治療・予防法について解説してきました。
肛門周囲腫瘍には、良性や悪性のものがあり、治療方法もさまざまです。
正確な診断を行い、適切な治療方法を選択するようにしましょう。
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症例
犬や猫の消化管間質腫瘍(GIST)について
犬猫の消化管間質腫瘍は、消化管筋層の細胞が腫瘍化した腫瘍です。
症状としては、嘔吐や食欲不振、体重減少が認められます。
本記事では、犬猫の消化管間質腫瘍の原因、症状、診断・治療方法について解説します。
消化管間質腫瘍とは
消化管間質腫瘍は、GISTとも呼ばれ、消化管腫瘍の1つです。
犬猫の消化管間質腫瘍は、盲腸、小腸、胃などに発生し巨大な腹腔内腫瘍を形成します。
猫での発生は稀であり、犬によく認められる疾患です・
転移率は報告されていませんが、腹腔内に播種したり術後に再発したりする場合もあります。
消化管間質腫瘍の原因
消化管間質腫瘍は、消化管筋層に存在するカハール介在細胞が腫瘍化したものです。
遺伝子の突然変異が原因として考えらえており、特にc-kit遺伝子の変異が関与していると考えられています。
消化管間質腫瘍の症状
消化管間質腫瘍の症状は以下の通りです。
・嘔吐
・下痢
・食欲不振
・体重減少
初期段階では、無症状であるケースも多く見られます。
進行すると腸穿孔による腹膜炎、腫瘍からの出血などが見られる場合もあります。
消化管間質腫瘍の診断方法
消化管間質腫瘍の診断方法は、以下の通りです。
・血液検査
・画像検査(レントゲン、エコー、CT検査)
・切除生検
消化管腫瘍の場合には、低アルブミン血症になっている場合も多く血液検査で、全身状態を把握しておくことが必要です。
画像検査では、腫瘍の大きさと位置や転移の有無を確認します。
消化管間質腫瘍は切除した組織で病理学的検査を行い確定診断していきます。
FNA検査を行う場合もありますが、腫瘍からの出血や消化管穿孔のリスクがあることに留意しておかなければなりません。
消化管間質腫瘍の治療方法
消化管間質腫瘍の治療方法は、外科手術で腫瘍を切除することが第一選択です。
※全身状態の把握と術前検査を目的に、血液検査や画像検査等が必要です。
転移している場合や再発予防のために、手術後に分子標的薬のイマチニブを使用することもあります。
消化管間質腫瘍の予後
消化管間質腫瘍の予後は明確になっていない部分が多いものの、完全切除し転移もない状態ならば、予後は良い傾向にあります。
しかし、転移があったり、腫瘍の悪性度が高かったりすると術後に死に至る可能性もあるため注意が必要です。
まとめ
本記事では、犬猫の消化管間質腫瘍の原因や症状、診断・治療法について解説してきました。
消化管間質腫瘍は、放置していると腹膜炎や消化管穿孔を引き起こし死に至る場合もあります。
消化器症状や体重減少など非特異的な症状として現れることが多いため、当院ではこういった所見がある犬猫を診察する際には慎重に検査を進めています。
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獣医内科学p209
犬と猫の治療ガイドp851-853続きを読む > -
症例
犬や猫の前十字靭帯断裂について
膝関節内に存在する前十字靭帯断裂が損傷した状態を、前十字靭帯損傷と呼びます。特に中年齢以降の犬において非常に一般的な跛行の原因疾患です。
本記事では、犬や猫の前十字靭帯損傷の原因、症状、診断方法、治療方法について解説します。
犬や猫の前十字靭帯断裂の原因
犬の前十字靭帯損傷の背景には、加齢等に伴う靭帯の変性(劣化)が存在することがほとんどです。人のように、交通事故や運動などで急性に靭帯が断裂することは比較的稀です。
靭帯変性が生じる原因は解明されておらず、大型犬から小型犬まで、ありとあらゆる犬種で前十字靭帯の損傷が生じ得ます。
猫の前十字靭帯損傷の原因はよくわかっていませんが、犬同様に靭帯の変性は先行している可能性が指摘されています。
犬や猫の前十字靭帯断裂の症状
前十字靭帯の症状は以下の通りです。
・患肢の挙上
・患肢の負重性跛行
犬や猫の前十字靭帯の診断方法
前十字靭帯損傷の確定診断は関節鏡もしくは関節切開での前十字靭帯の確認となりますが、ほとんどの場合は触診やレントゲン検査で臨床診断することが可能です。
情報量を増やすために、超音波検査や関節液検査が有用であることもあります。
触診では、関節液の増量を示唆する膝の腫脹を確認した上で、膝を伸ばしたときの痛み(過伸展痛)や、大腿脛関節の不安定を検出する試験(脛骨圧迫試験や脛骨前方引き出し試験)を行います。
レントゲン検査では、脛骨と大腿骨の位置関係や、骨関節炎の程度を確認します。
また、関節内の液体貯留により膝蓋下脂肪体が圧排される所見である「ファットパッドサイン」も前十字靭帯損傷の早期から認められる所見です。
ただし、炎症性関節疾患や腫瘍などが併発していることもありますので、これらの除外診断には関節液検査やCT検査、組織検査などの追加検査が必要となることもあります。
犬や猫の前十字靭帯断裂の治療方法
前十字靭帯断裂の治療方法は、主に「内科療法」と「外科手術」の2つの治療方法が考えられます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
内科療法
内科療法では、痛み止めの内服と一定期間の安静管理を指示します。
体重の軽い小型犬や猫の場合には、明らかな跛行が消失することもありますが、関節のズレは改善しないことも多く、長期的な骨関節炎の進行などには注意を要します。体重15kg以上の大型犬では、内科治療が功をそうする可能性は低いとされています。
外科治療
これまで様々な手術方法が考案されていますが、近年は脛骨を半円形に骨切りし、関節の角度を矯正することで機能的に膝を安定化させる、TPLO法と言われる手技が犬では広く選択されています。猫に最適な外科治療の手技については未だ議論があります。
まとめ
本記事では、犬と猫の前十字靭帯断裂の原因、症状、治療方法について解説しました。
前十字靭帯断裂は膝蓋骨脱臼と並んで本法で最も遭遇しやすい整形外科疾患の一つですので、よく理解しておくことが重要です。
姉ヶ崎どうぶつ病院は一緒に働く仲間を募集しています
姉ヶ崎どうぶつ病院は1.5次診療施設で質の高いジェネラリストを目指し、地域獣医師医療を担う動物病院です。
獣医師、動物看護師ともに育成プログラムが充実しており、「獣医師や動物看護師として経験を積んで成長しやすい環境」が整っています。
目の前の課題に対し、しっかり取り組む方、誠意をもってコミュニケーションを取る方、そして動物はもちろん、飼い主様やスタッフ同士の気持ちを理解しようと努力する方の応募を心からお待ちしています。
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