コラム
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症例
猫の糖尿病を見逃さない!|初期症状と治療のポイント
猫の糖尿病は、インスリンが十分に働かないために血糖値のコントロールが難しくなる病気です。インスリンは膵臓から分泌され、体内の血糖値を調整する大切な役割を担っています。
通常、食事で摂取された糖は血液に取り込まれ、インスリンの働きによって細胞に吸収されてエネルギーとして使われます。しかし、インスリンの不足やインスリンが正常に分泌されても細胞が反応しにくい「抵抗性」がある場合、糖がうまく吸収されません。その結果、血糖値が高くなり、糖尿病が進行してしまうのです。
猫の糖尿病は、人間の2型糖尿病に似ており、特に肥満や高齢の猫に発症しやすい病気です。発症率は増加しており、猫全体の0.5〜1%が糖尿病を抱えていると推定されています。
今回は、猫の糖尿病について初期症状から治療法までを詳しく解説します。
症状|猫の糖尿病の初期症状を見逃さないために
・通常より多くの水を飲むようになる(多飲)
糖尿病により血糖値が高くなると、体は余分な糖を尿として排出しようとします。そのため、体内の水分が失われやすくなり、猫がいつもより頻繁に水を飲むようになります。
・排尿回数が増える(多尿)
血糖値が高くなると、腎臓は余分な糖を尿として排出しようとします。その結果、排尿回数が増え、尿の量も多くなります。
・食欲の増加(多食)
インスリンが不足すると、細胞がエネルギーをうまく取り込めなくなり、体が飢餓状態だと感じてしまいます。そのため、猫は普段以上に食事を欲しがるようになります。
・体重減少
猫がたくさん食べていても、インスリンが不足しているために体は十分なエネルギーを得られません。そこで、体は脂肪や筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとするため、結果として体重が減ってしまいます。
・倦怠感や元気の低下
糖尿病によってエネルギーがうまく細胞に行き渡らなくなるため、猫は疲れやすくなり、普段より元気がなくなって活動量が減ってしまいます。
・毛艶の悪化
糖尿病の影響で体の調子が悪くなると、被毛にも変化が現れます。毛がパサつき、艶がなくなってしまうことがあります。
・嘔吐や脱水症状
糖尿病が進行すると、嘔吐や脱水症状が見られることがあり、これらは緊急の対応が必要なサインです。
猫の糖尿病のリスク要因とは?|年齢や肥満が引き金に
・年齢(中年以上の猫)
猫の糖尿病は、中年以上の猫に多く見られます。年齢を重ねることでインスリンの分泌が減少し、糖尿病のリスクが高まると考えられています。
・肥満
肥満は、糖尿病の大きなリスク要因の一つです。肥満になるとインスリンに対する細胞の反応が鈍くなり、血糖値のコントロールが難しくなります。特に室内飼いの猫は運動不足になりやすいため、肥満により糖尿病を発症しやすくなる傾向があります。
・去勢・避妊
去勢や避妊手術を受けた猫は、ホルモンバランスの変化によって体重が増えやすくなり、糖尿病のリスクが高まることがあります。そのため、手術後の体重管理がとても重要です。
・品種
一部の猫種は、他の猫種に比べて糖尿病のリスクが高いとされています。特に、バーミーズは糖尿病にかかりやすい傾向があることが知られています。
・運動不足
運動不足は肥満を招き、インスリンに対する感受性が低下してしまいます。特に室内飼いの猫は運動量が少なくなりやすく、その結果、肥満や糖尿病のリスクが高まります。
猫の糖尿病の診断方法|血液検査や尿検査で確認
猫の糖尿病は、血液検査や尿検査をもとに診断されます。以下に一般的な診断方法をご紹介します。
・血糖値測定
血液を採取し、血糖値を測定します。糖尿病の猫は、インスリン不足やインスリンに対する反応が低下しているため、血糖値が通常よりも高くなります。
ただし、一時的なストレスでも血糖値が上昇することがあるため、血糖値測定だけでなく、他の検査結果も総合的に判断して診断が行われます。
・尿検査
尿検査では、尿中に糖(グルコース)やケトン体が含まれているかを調べます。糖尿病になると、血中の糖が過剰になり、腎臓で処理しきれずに尿に糖が漏れ出してしまいます。
また、ケトン体は、糖をエネルギー源として利用できない状態で脂肪が代謝された結果として現れるため、糖尿病の指標の一つです。
・フルクトサミン検査
フルクトサミン検査は、過去1〜2週間の平均血糖値を測定する検査です。この検査は、血糖値の一時的な上昇やストレスによる影響を避け、持続的な高血糖状態があったかどうかを確認できるため、より正確な糖尿病の診断に役立ちます。フルクトサミン値が高い場合、長期間にわたって血糖値が高かったことがわかります。
猫の糖尿病治療|インスリン治療と最新の経口薬センベルゴ
猫の糖尿病は、インスリン治療や経口薬、食事療法、運動療法など、さまざまな方法で管理されます。ここでは、特に2024年9月に発売された経口治療薬「センベルゴ」に焦点を当てて解説します。
<センベルゴ(経口投与薬)>
センベルゴは、従来のインスリン注射に代わる新しい経口治療薬です。その主な特徴とメリットは以下の通りです。
・経口投与
飼い主様が毎日インスリン注射を行う必要がないため、注射に抵抗がある猫や飼い主様にとって、ストレスが少ない治療法です。
・低血糖のリスクが少ない
インスリン注射に伴う低血糖症は非常に危険ですが、センベルゴはそのリスクが軽減されており、安全性が高いとされています。
・入院の必要がない
通院のみで治療を続けられるため、猫のストレスを軽減し、飼い主様の負担も軽くなります。
・センベルゴを使用する際の注意点
センベルゴを使用する場合は、定期的にケトン体の検査を行うことが推奨されています。ケトン体は、糖尿病の状態が悪化すると体内で増加する可能性があるため、これを確認することで糖尿病の管理がより安全に行えます。ケトン体の検査は、愛猫の健康をしっかりと見守るために大切なステップです。
<インスリン治療>
インスリン注射は、長年にわたり糖尿病治療の基本となっています。インスリンを注射することで、体内で不足しているホルモンを補い、血糖値を正常に保つことができます。
インスリン治療には毎日の注射が必要ですが、正確な量を調整することが大切です。
注射が苦手な猫にとってはストレスになることもあるため、飼い主様がサポートしてあげることが重要です。少しずつ慣れさせながら、猫にできるだけ負担をかけないように工夫していくことが大切です。
<食事療法>
糖尿病の猫には、低炭水化物食が推奨されています。炭水化物を減らすことで、インスリンが効率的に働き、必要なインスリン量を減らすことができます。療法食には糖尿病用のフードがあり、それを主食にすることで、血糖値を安定させる効果が期待できます。
<運動療法>
適度な運動は、糖尿病の管理にとても役立ちます。運動を通じて体重をコントロールし、インスリンの働きを助けることで、血糖値の安定に繋がります。ただし、過度な運動は血糖値の急激な変化を引き起こすことがあるため、獣医師と相談して、無理のない運動量を決めることが大切です。
猫の糖尿病を予防するための日常ケアと健康管理
糖尿病は一度発症すると管理が大変な病気ですが、日々のケアでリスクを大幅に減らすことができます。ここでは、猫の糖尿病を予防するための主な対策をご紹介します。
<適切な体重管理>
肥満予防は、糖尿病予防の中で最も重要なポイントです。猫が太りすぎると、インスリンの働きが鈍くなり、血糖値をコントロールする能力が低下します。
バランスの取れた食事と運動で、適切な体重を維持しましょう。特に室内飼育の猫は運動不足になりがちなので、キャットタワーやおもちゃを活用して運動量を確保することが大切です。
<バランスの取れた食事>
糖尿病の予防には、バランスの良い食事が欠かせません。猫には高品質なタンパク質が必要で、炭水化物の摂取はできるだけ控えるのが理想です。糖質が多いフードやおやつを避け、カロリーと栄養バランスに気を配りましょう。
<定期的な健康診断>
猫は糖尿病の初期段階で目立った症状を示さないことが多いため、定期健康診断が重要です。
1年に1回の血液検査や尿検査を受けることで、糖尿病の早期発見が可能になります。特に中高齢や肥満傾向のある猫は、定期的に診察を受けることをおすすめします。
<運動を取り入れる>
適度な運動は、糖尿病予防に役立ちます。日常的な遊びや運動を通じて体重を管理し、インスリンの働きを助けることができます。猫が楽しみながらできる運動を取り入れてあげることで、健康維持に繋がります。
まとめ
猫の糖尿病は、早期に発見して適切な治療を始めることで、長期的な健康を維持することができます。早期発見と治療が最も大切で、定期的な健康診断や日々の様子をしっかり観察することがその第一歩です。
特に肥満や加齢に伴うリスクが高い猫は、症状が見られないうちからしっかりとケアすることが重要です。定期的に獣医師の診察を受け、血糖値の測定や適切な食事、体重管理を心がけることで、糖尿病のリスクを抑えることができます。
愛猫が元気で長く健康に過ごせるように、少しでも気になる症状があれば、迷わず獣医師に相談することが大切です。
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症例
愛犬が下痢をする理由とは?元気でも見逃せないポイント
愛犬が下痢をしていても、元気や食欲がある場合、必ずしも深刻な病気というわけではありません。
犬の下痢は、消化不良やストレス、食事の変化などが原因で、一時的に起こることがよくあります。たとえば、新しい食材を試したときや、環境の変化によってストレスを感じたときに、短期間の下痢が見られることもあります。
しかし、油断は禁物です。元気そうに見えても、下痢が続くと脱水症状のリスクが高まるため、特に数日間にわたって下痢が続く場合は注意が必要です。下痢が長引くと、栄養の吸収が十分に行われず、体調に悪影響を及ぼすことがあります。
下痢が繰り返される場合や、他に気になる症状(嘔吐、血便、食欲の低下など)が見られるときは、早めに獣医師に相談することが大切です。
特に子犬の場合は、軽度の下痢でも体調への影響が大きくなることがありますので、慎重に対応することを心がけましょう。
今回は元気があるのに下痢をしてしまう原因と、動物病院への相談が必要なケース、下痢予防のための日常ケアについて解説します。
元気なのに下痢?犬が下痢をする意外な原因とは?
元気や食欲がある愛犬でも、時折下痢をすることがあります。
ここでは、比較的軽い原因について詳しく説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
・食事の変更
突然の食事変更は、愛犬の消化器に負担をかけてしまい、消化不良や下痢を引き起こすことがあります。新しいフードに切り替える際は、少しずつ慣れさせることが大切です。急に切り替えてしまうと、消化器がうまく適応できず、下痢の原因となることがあります。
・軽度の食あたり
普段食べ慣れていないものを食べた場合、軽度の食あたりで下痢を引き起こすことがあります。たとえば、人間の食べ物やゴミ、草などが消化不良を起こし、一時的に下痢になることがあります。
・ストレスによる下痢
環境の変化や家族構成の変化、旅行などで愛犬がストレスを感じると、腸の動きが乱れやすくなり、下痢を引き起こすことがあります。
・消化不良
愛犬が早食いや一度に大量の食べ物を食べた場合、消化不良を起こし、下痢をしてしまうことがあります。
・軽度の寄生虫感染
軽度の寄生虫感染(例:回虫や鉤虫)も下痢を引き起こすことがあります。この場合、駆虫薬の投与が必要になることもあります。
こんな症状に注意!|愛犬の下痢で見逃せないサイン
元気や食欲がある愛犬でも、下痢の内容によっては早めの対応が必要になることがあります。特に、次のような異常な便が見られた場合は、早めに獣医師に相談してください。
・血便
便に鮮血が混ざっている場合、消化管のどこかで出血が起きている可能性があります。
大腸や肛門に炎症が起きている場合や、感染症や傷が原因で出血することが多く、特に出血の量が多い場合は注意が必要です。
・黒色便
黒色の便(タール便)は、消化管の上部(胃や小腸)で出血が起きているサインです。これは、消化された血液が便に混ざって黒くなっている状態を示しており、消化器の潰瘍や出血性の疾患が疑われます。
・粘液便
便に粘液が多く含まれている場合は、腸内で炎症が起きている可能性があります。
ストレスや軽い感染症が原因となることもありますが、粘液便が長引く場合は腸炎などの病気が疑われます。
・長引く下痢
短期間の下痢であれば、一時的な消化不良で済むこともありますが、数日以上続く場合は脱水や栄養不足につながる恐れがあります。
慢性的な下痢は、消化器系の腫瘍やアレルギー、寄生虫感染が原因となっていることもあるため、注意が必要です。
・異常に強い臭いの便
便の異常な臭いも注意すべきサインです。ウイルス感染症や腸内細菌のバランスが崩れていることが原因で、臭いが強くなることがあります。
どのような場合に動物病院へ相談すべき?
家庭での対処を行っても愛犬の下痢が改善しない場合や、以下のような危険な症状が見られた際には、早めに動物病院に相談することが大切です。
・脱水症状
下痢が長引くと、体内の水分が急速に失われ、愛犬が脱水症状を引き起こすことがあります。口の乾きや皮膚の弾力が低下することが、脱水の主なサインです。
脱水は早急な治療が必要なので、放置せずに動物病院で輸液などの対応を受けることが重要です。
・発熱
下痢に加えて発熱が見られる場合は、感染症や体内の炎症が原因になっていることが考えられます。たとえ元気に見えても、発熱が確認できたら病気が進行している可能性があるため、早めに獣医師に相談することが大切です。
・嘔吐を伴う
嘔吐を伴う下痢は、腸や胃に大きなトラブルがある可能性があります。食べ物がうまく消化できない状態や、異物を誤って飲み込んでいることが考えられるため、早急な対応が必要です
・下痢が2~3日以上続く
軽度の下痢でも、2〜3日以上続く場合は慢性化する恐れがあります。特に、何らかの治療を試しても改善しない場合は、消化器系の疾患やアレルギーが原因である可能性が高いため、早めに獣医師に相談することが大切です。
・体重減少
下痢が続くと、栄養の吸収が十分に行われず、体重が減少してしまうことがあります。特に急激な体重減少が見られる場合、下痢以外の深刻な健康問題が隠れている可能性もあるため、早めに獣医師に相談することが大切です。
下痢の診断と治療法
<診断方法>
下痢の原因を特定するために、まず問診と身体検査が行われます。飼い主様には、食事内容や生活環境、下痢の期間や頻度について詳しくお聞きし、それを基に以下のような検査を行います。
・糞便検査
糞便を採取して、寄生虫や細菌、ウイルスの有無を確認します。特に寄生虫感染や細菌性の下痢の場合、糞便中にその兆候が見られることが多いです。
・血液検査
血液検査では、感染症や炎症、臓器の機能に異常がないかを確認します。たとえば、肝臓や腎臓の状態が下痢の原因となっている場合、血液検査でその兆候が確認されることがあります。
・X線や超音波検査
消化管の状態を詳しく調べるために、X線検査や超音波検査が行われることもあります。これにより、異物を誤飲していないか、腫瘍や腸閉塞などの重篤な原因がないかを確認します。
<治療法>
診断結果に基づき、下痢の原因に応じた治療が行われます。
・食事療法
一般的な治療として、消化に優しい療法食が処方されることが多いです。特に、消化不良が原因の場合は、消化しやすいフードに切り替えて腸を休めることで、症状の改善が期待できます。
・薬物療法
細菌感染や寄生虫感染が原因の場合、抗生物質や駆虫薬が処方されます。
また、症状に応じて、止瀉薬や痛み止め、吐き気を抑える薬なども使用され、対症療法が行われます。これにより、下痢の原因となる病原体を排除し、症状を和らげます。
・プロバイオティクス
腸内環境の改善を目的として、プロバイオティクスや消化酵素が処方されることもあります。善玉菌を増やして腸の働きを整え、下痢の改善に役立ちます。
・点滴治療
下痢が長引いて脱水症状が疑われる場合は、点滴治療が行われます。体内の水分と電解質のバランスを整えるために、輸液を行い、体調を回復させます。
・外科的処置
もし異物の誤飲や、腫瘍が原因で下痢が起こっている場合は、外科的な処置が必要になることがあります。
愛犬の下痢予防に必要な日常ケアと健康管理のポイント
<バランスの良い食事管理>
食事は、愛犬の健康を支える大切な要素です。栄養バランスの取れた食事を準備することで、消化器の健康を守ることができます。
新しいフードに変える際には、急に切り替えず、少しずつ進めていくことが大切です。愛犬の体に負担をかけないよう、ゆっくりと慣らしてあげましょう。
<規則正しい生活リズム>
毎日を規則正しく過ごすことも、愛犬の下痢予防に効果的です。決まった時間に食事をする習慣や、適度な運動を取り入れることで、消化器官のリズムが整いやすくなります。
また、ストレスや過度な運動は消化不良の原因になることもあるので、愛犬が無理せずリラックスできる環境を心がけましょう。
<ストレスを軽減する工夫>
犬は環境の変化や飼い主がいない時間が長いと、ストレスを感じやすくなります。そのストレスが下痢の原因になることもあります。新しい環境に慣れる時間をしっかりと確保し、安心して過ごせる場所を作るなど、日常的にストレスを軽減する工夫が必要です。
<定期的な健康チェック>
定期的に健康診断を受けることで、病気や体調不良を早期に発見できます。特に下痢が頻繁に見られる場合は、寄生虫感染や消化器系の病気が隠れている可能性も考えられるため、早めに獣医師に相談し、必要な検査を受けることが大切です。
<清潔な環境を保つ>
愛犬が暮らす環境を清潔に保つことも、下痢予防には欠かせません。食器やベッドをこまめに清掃し、トイレエリアを清潔に保つことで、感染や消化不良のリスクを減らすことができます。
こうした日常的なケアが、愛犬の健康維持に役立ち、下痢のリスクを最小限に抑えることにつながります。
まとめ
犬の下痢は一時的で軽度な場合もありますが、注意深く観察することが大切です。
下痢が数日以上続く、便に異常が見られる、または他の症状(嘔吐、脱水、発熱など)が併発する場合は、早めに獣医師に相談することが重要です。
適切な治療を受けることで、症状の悪化や、他の健康問題へ進行するのを防ぐことができます。
愛犬の健康を守るためには、普段からしっかりと観察し、気になる症状があれば迷わず動物病院に連絡するようにしましょう。
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・犬や猫の消化管間質腫瘍(GIST)について
・犬や猫の肛門周囲腫瘍について千葉県市原市の動物病院なら「姉ヶ崎どうぶつ病院」
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症例
犬と猫の健康診断の重要性について|気になる愛犬・愛猫の健康チェック!
最近、飼い主様の愛犬や愛猫の健康への意識が高まり、毎年健康診断を受ける方が増えています。
健康診断は、病気の早期発見・早期治療に役立つだけでなく、日頃の疑問や不安を獣医師に相談できるよい機会でもあります。
今回は犬と猫の健康診断の重要性について詳しく解説します。
健康診断の目的
健康診断の一番の目的は病気を早期に発見し、早期に治療することです。早期発見・早期治療は、愛犬や愛猫のQOL(生活の質)を向上させ、長期的には医療費の負担を減らすことにもつながります。
特に腫瘍や腎臓病などの病気は、症状が出るまで時間がかかることが多いため、健康診断で早めに見つけることが非常に大切です。
また、健康診断は予防医療の面でも大きな意味があります。飼い主様と獣医師がしっかりコミュニケーションをとることで、疑問や不安を解消し、適切な飼育環境を整え、肥満を予防することができます。これにより、愛犬や愛猫のQOLが向上し、病気の予防にもつながります。
「予防は治療に勝る」という言葉があるように、健康診断で病気を予防することは、早期発見・早期治療以上に多くのメリットをもたらします。
健康診断の頻度
健康診断の理想的な頻度については、獣医師によって多少の違いがありますが、基本的には年に1回を目安にしてください。7〜8歳を超えてシニア期に入ると、さまざまな病気のリスクが高まるため、半年に1回程度に増やすこともよいでしょう。
もちろん、基礎疾患や現在の健康状態によって適切な頻度は異なりますので、当院の獣医師にご相談ください。
犬と猫で推奨される健康診断の頻度は大きく変わりませんが、猫は病気の兆候に気づきにくいことが多い傾向があります。
特に加齢に伴い、猫では慢性腎臓病のリスクが高まるため、不安がある場合は健康診断の頻度を増やすことを検討してみましょう。
また、特定の品種に多く見られる疾患が心配な場合も、獣医師と相談しながら適切な健康診断の頻度を決めることをおすすめします。
健康診断の主な検査項目とその重要性
健康診断で行う主な項目は以下の通りです。
<問診>
飼い主様から、日頃の様子や気になる点についてお話を伺います。普段の生活で見られる小さな変化や、飼い主様だからこそ気づく異変を確認することで、病気の早期発見につながることがあります。
どんな些細なことでも構いませんので、気になることや不安に感じていることがあれば、ぜひお話しください。
<身体検査>
視診、触診、聴診などで全身を丁寧にチェックします。特に視診での口腔内疾患や白内障の確認、聴診での心雑音のチェックは重要です。
また、体重測定や体型の評価を行い、太りすぎや痩せすぎていないかを確認します。
「肥満は万病の元」という言葉もあるように、肥満は関節疾患や呼吸器疾患などさまざまな病気のリスクを高めるため、注意が必要です。
<血液検査>
全血球計算(CBC)では、赤血球や白血球、血小板の数を測定し、貧血や炎症の有無、白血病の兆候などを確認します。
さらに、血液生化学検査では血糖値や腎臓、肝臓に関連する数値、電解質バランスを調べ、腎臓病や肝臓病、糖尿病、脱水症状の早期発見や病状の確認が可能です。
また、甲状腺ホルモンやコルチゾールなどのホルモン検査で、甲状腺疾患などの内分泌疾患を評価することもあります。
<レントゲン検査>
胸部・腹部のレントゲン撮影は、健康診断において欠かせない検査です。
心臓や肺、腹部の臓器、骨、関節の状態を同時に確認でき、腫瘍や転移の早期発見にも役立ちます。さまざまな病気の診断に有効な検査です。
<エコー検査>
腹部エコー検査では、腎臓や肝臓、脾臓、膀胱、消化管、リンパ節などを詳しく観察します。エコーでは臓器の動きや大きさ、内部の状態をリアルタイムで確認できるため、腹腔内に発生した腫瘍の評価や尿路結石の位置や大きさなどの検査に役立ちます。
心臓エコーでは心臓内部や弁の動き、血流などを確認し、心臓の機能に問題がないか評価します。
<尿検査>
尿検査では持参いただいた尿や院内で採取した尿を使って、尿比重や尿タンパク、結晶、細菌などを調べます。
腎臓や膀胱の健康状態を確認するほか、糖尿病や尿路感染症の早期発見に有効です。
<糞便検査>
便の中に血液や寄生虫が混じっていないかを確認し、消化器系の健康をチェックします。
健康診断で発見される主な疾患
健康診断で発見されることが多い主な疾患は以下の通りです。
<犬>
・口腔内疾患
・僧帽弁閉鎖不全症
・短頭種気道症候群
・膝蓋骨脱臼
・関節疾患
・腫瘍性疾患 等
<猫>
・口腔内疾患
・肥大型心筋症
・甲状腺機能亢進症
・慢性腎臓病
・膀胱炎
・尿路結石
・腫瘍性疾患
・糖尿病
・関節疾患 等
姉ヶ崎どうぶつ病院の健康診断
当院では、Team HOPEおよびAAHA(アメリカ動物病院協会)が提唱する健康診断の項目をベースにした、信頼性の高い健康診断コースをご用意しています。
Team HOPE(公式サイト)は、動物医療の現場で広く支持されている健康診断の基準を策定しており、当院でもその項目をしっかりと取り入れています。また、AAHA(公式サイト)はアメリカで動物医療の基準を確立している団体で、世界中の動物病院に影響を与えています。
これらの基準に基づいた健康診断を通じて、早期発見や予防に力を入れており、飼い主様が安心して愛犬や愛猫の健康を守れるようサポートいたします。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
愛犬や愛猫の健康を守るために、定期的な健康診断は欠かせません。
飼い主様は毎日の生活の中で、誰よりも早く小さな変化に気づける存在です。だからこそ、日常の様子や体調の変化を見逃さずにチェックすることが大切です。
もし少しでも気になることがあったら、無理せずかかりつけの獣医師に相談してみましょう。大切な家族の健康を守るために、早めの対応が安心につながります。
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症例
犬と猫のてんかんについて|発作が起きたときに慌てないために
「てんかん」と聞くと、突然発作が起きて意識を失う病気というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実は犬や猫にもよく見られる神経疾患です。
てんかん発作は、脳の神経細胞の異常な興奮によって生じる、一時的なけいれんや意識障害、異常行動を指します。
今回は、犬や猫のてんかんの原因や症状、診断方法、治療方法について詳しく解説します。
てんかんの種類
てんかんは大きく分けて、「特発性てんかん」と「構造的てんかん(症候性てんかん)」の2種類があります。
また、低酸素や低カルシウム血症などが原因で発作が起こる「反応性発作」もありますが、これは厳密にはてんかん発作には含まれません。
<特発性てんかん>
発作の原因がはっきりしていないてんかんです。おそらく、遺伝子の異常が関与していると考えられています。
特発性てんかんは犬や猫に比較的よく見られるタイプで、犬では約100頭に1頭、猫では約100〜200頭に1頭がこのてんかんを持っていると考えられています。
<構造的てんかん (症候性てんかん)>
脳腫瘍や脳炎、脳外傷など、脳の病気や異常が原因で発作が起こるてんかんです。
原因
てんかんの原因はさまざまで、複数の要因が重なって発作が起こることもあります。
<特発性てんかん>
遺伝子以外のてんかんの原因がすべて否定されているため、遺伝的な要因が関与していると考えられています。
日本ではあまり見られない犬種ですが、ラゴット・ロマニョーロやローデシアン・リッジバックといった犬種で、てんかん発作に関連する遺伝子異常が報告されています。
<構造的てんかん>
大脳皮質の器質的な異常(脳腫瘍、脳炎、脳外傷、水頭症など)が原因となり、発作が起こります。
また、代謝異常による脳のダメージや、金属や薬物などの中毒が原因で発作が引き起こされることもあります。
症状
てんかんは、発作のタイプによって部分発作と全般発作に分類されます。これは脳の細胞が過剰に興奮することで引き起こされ、どの部分が影響を受けるかによって異なります。
部分発作は、脳の一部で電気的興奮が限局して起こるものです。
例えば、運動に関わる脳の部位に発作の焦点がある場合、顔面のけいれんや四肢がガクガクと震えるような症状が見られます。
視覚に関わる脳の部位に発作の焦点があると、フライバイト(ハエ追い行動)と呼ばれる、空中を見つめてハエなどの虫を追いかけるような行動や、幻覚を見ているかのような仕草が見られます。
一方、全般発作は、脳の一部で始まった電気的興奮が脳全体に広がるものです。
この場合、意識を失ったり、よだれが増えたり、失禁することが多く、全身がピンと突っ張ったり、ガタガタと震える強直間代性発作が見られることがあります。
発作の前兆として、突然落ち着きがなくなったり、不安そうな様子になったりすることがあります。また、発作後には、攻撃的な行動を取ったり、徘徊したり、意識がはっきりしない、運動がぎこちないといった発作後徴候が見られることがあります。
診断方法
てんかんの診断は、まずこれまでの発作の経過や発作時の様子を詳しく伺うことから始まります。もし、ご自宅で発作の様子を録画した動画があれば、診断に大変役立ちます。
てんかん発作に似た症状が、心臓病による低酸素や失神、中毒症状などでも現れることがあるため、まずは身体検査や血液検査、レントゲン検査、心電図検査などで全身の健康状態を確認します。その後、脳や脊髄など中枢神経系の状態を調べるために神経学的検査を行います。さらに、脳腫瘍や脳炎などが原因で発作が起きていないか確認するため、CT検査やMRI検査、脳脊髄液検査(脳脊髄液を採取して検査する方法)を行い、脳の状態や脳脊髄液の性状を確認します(外部の専門機関をご紹介します)。
これらすべての検査で異常が見つからなくても発作が続く場合は、特発性てんかんと診断されます。
逆に、MRIやCT検査で脳に炎症や腫瘍が認められた場合は、それらが原因のてんかんと診断されます。
特発性てんかんの診断は通常、MRI検査や脳脊髄液検査で他の病気を除外して行いますが、脳波検査でてんかんに特有の波形が確認できれば、さらに信頼性の高い診断を行うことが可能です。
治療方法
てんかんの治療の基本は、抗てんかん薬(フェノバルビタール、臭化カリウム、レベチラセタム、ゾニサミドなど)という、てんかんの発作頻度を抑える薬を服用します。
また、補助的な治療として、食事療法やサプリメントの使用が稀に行われることもあります。例えば、医療用大麻由来のカンナビジオール(CBD)が一部で使用されるケースもあります。
最近では、てんかん外科と呼ばれる脳外科手術によって、難治性のてんかんを治療する試みも始まっており、国内でも試験的に行われています。
通常、てんかん発作は安静にしていれば5分程度で治まりますが、5分以上続く場合はてんかん重積と呼ばれ、緊急の治療が必要です。
この場合、ジアゼパムやミダゾラムなどの強力な抗けいれん薬を使用して、速やかに発作を抑えます。
予後
一般的に、抗てんかん薬を使用した場合、発作がうまくコントロールできる割合は60〜70%ほどと言われています。しかし、残りの30〜40%は難治性てんかんと呼ばれ、薬でのコントロールが難しいケースです。このような場合は、食事療法やサプリメント治療、てんかん外科などを検討します。
てんかん発作は、犬や猫の生活の質(QOL)に大きな影響を与えるため、早期に治療を開始し、発作をできる限りコントロールすることが非常に重要です。
てんかんは完治する病気ではないため、基本的には一生抗てんかん薬を服用しながら病気と向き合う必要があります。
発作の頻度に応じて薬の量を調整することはありますが、長期的な管理が必要であることを理解していただければと思います。
ご家庭での注意点
てんかん発作は基本的に自然に治まることが多いため、発作が始まったらなるべく刺激しないことが大切です。発作が起きたら、できるだけ周囲に危険なものがない安全な場所で発作が治まるのを静かに見守りましょう。
このとき、発作の様子の録画や時間を測っておくと、診断や治療に役立ちます。また、発作が起きた日時、発作の様子、持続時間、その後の状態などを記録しておくことも重要です。
処方された薬は、必ず獣医師の指示通りに服用し、定期的に動物病院で検査を受けるようにしてください。運動や食事については、特別な指示がなければ通常通りで問題ありません。
さらに、発作時に物にぶつかって怪我をしないよう、部屋を整理整頓しておくことや、ストレスをできるだけ減らすよう心がけることも大切です。
まとめ
てんかんはQOLに大きく影響を与えるため、早期診断と早期治療が非常に重要です。もし、てんかん発作を疑うような症状が見られた場合は、まずは獣医師に相談してください。
てんかんの治療は基本的に生涯にわたって続くため、信頼できる獣医師と飼い主様が連携しながら治療を進めることが大切です。
また、発作が30分以上続くと脳に後遺症が残る可能性があり、5分以上続く場合は発作が長引くリスクが高まります。5分以上発作が続く場合は、様子を見ずにすぐにかかりつけの動物病院や夜間救急病院を受診してください。
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症例
犬と猫の誤嚥性肺炎|年を取って飲み込む力が弱まっているとなりやすい?
誤嚥性肺炎とは、食べ物や液体が本来入るべき食道ではなく、誤って気管に入ることで発生する肺炎のことです。
通常、嚥下機能(食べ物を咀嚼して食道に送り込む機能)が正常に働くことで、食べ物や液体が誤って気管に入ることは防がれていますが、何らかの原因で嚥下機能が低下すると、誤嚥が発生しやすくなります。
犬や猫ではそれほど頻繁に見られる病気ではありませんが、嚥下機能が低下するシニア期に入り嚥下機能が低下した場合や、強制給餌を行っている場合、または巨大食道症(食道が拡張する病気)で頻繁に吐き戻しをしていると、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
今回は、犬と猫の誤嚥性肺炎について、その原因や症状、診断法、治療法を詳しく解説します。
原因
口の中には無数の細菌が存在しており、咀嚼した食べ物にも多くの細菌が付着しています。通常、食べ物は嚥下によって食道に送られて気管には入らないため、気管や肺は無菌の状態が保たれています。
しかし、嚥下機能が低下して食べ物や異物が誤って気管に入ると、それに付着した細菌や物理的な刺激によって炎症が起こり、肺炎が引き起こされます。これが誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎の主な原因は以下の通りです。
・加齢による嚥下機能の低下・巨大食道症による吐き戻し
・意識レベルの低下時、麻酔中、または麻酔から覚める際の嘔吐
・誤った強制給餌や投薬
特に、嚥下機能が低下しているシニア期やフードを早食いする癖がある犬は注意が必要です。さらに、フレンチ・ブルドッグやパグなどの短頭犬種、巨大食道症や喉頭麻痺の既往歴がある場合も、誤嚥性肺炎のリスク因子となるため注意してください。
よくある誤嚥のケース
通常、嚥下機能が正常であれば誤嚥はほとんど起こりません。しかし、頻繁に誤嚥が見られる場合、何らかの原因で嚥下機能が低下している可能性があります。
また、誤嚥の発生には以下のようないくつか共通するパターンがあります。
・巨大食道症や喉頭麻痺の子が、うまく吐き出せずに誤嚥してしまうことがある
・高齢の犬や猫が横になったまま物を飲み込もうとする
・強制給餌を行って誤嚥してしまう
・年を取って飲み込む力が弱まり、誤嚥してしまう
・呼吸器疾患で咳をしながら飲み込むことで誤嚥してしまう
・フードを急いで食べ過ぎて誤嚥してしまう
これらのケースに当てはまる場合は、誤嚥性肺炎のリスクが高くなるため、特に注意が必要です。
症状
誤嚥性肺炎には、大きく分けて3つのステージがあります。
1、気道反応:誤嚥の初期には、気管や気管支に浮腫や収縮が見られます。
2、炎症反応:炎症細胞である好中球やマクロファージが炎症部位に集まり、肺血管の透過性が亢進します。炎症が強い場合は肺水腫(肺に血液の液体成分が溜まり、呼吸困難になる状態)になることがあります。
3、二次感染:細菌の二次感染により、細菌性肺炎が生じ、重症化します。
これらのステージによって症状は異なり、初期には咳や発熱などが見られますが、進行すると呼吸困難や元気・食欲の低下、ぐったりして動かないといった全身的な症状が現れます。
犬と猫で症状に大きな差はありませんが、猫の方が症状がはっきりしないことが多いです。進行しても咳や呼吸困難といった症状に気づきにくいため、特に注意が必要です。
誤嚥性肺炎に限らず、猫は体調が悪くなると隠れたり、元気や食欲が低下したりする傾向が強いので、これらのサインを見逃さないようにしてください。
診断方法
誤嚥性肺炎の診断は、以下の方法で行います。
・身体検査:発熱や咳があるか、呼吸数や肺音に異常がないかを確認します。
・血液検査:白血球数やCRP、SAAなどの炎症マーカー(炎症時に上昇する項目)に異常がないかを調べ、全身の状態を把握します。
・レントゲン検査:誤嚥性肺炎の場合、レントゲンで肺が白く映ります。特に右中葉、右前葉、左前葉後部に炎症が起こりやすいです。また、肺水腫の有無も確認します。
・超音波検査:肺炎に特徴的な所見や、吐出や嘔吐の原因となる疾患が腹部臓器にないかを確認します。
まれに、より正確に炎症部位の把握や、誤嚥性肺炎を引き起こす原因疾患を特定するために、全身麻酔をかけてCT検査を行うこともあります。
治療方法
誤嚥性肺炎は呼吸に直接影響し、命に関わるため、入院して集中的な治療を行うことが多いです。
主な治療方法は以下の通りです。
・酸素療法:呼吸状態が悪い場合に行います。
・抗菌薬の投与:細菌の二次感染を予防・治療するために必要です。
・輸液療法:体液の補充を行いますが、過剰な輸液は肺水腫を引き起こし、呼吸状態をさらに悪化させる可能性があるため、慎重に行います。
入院中はこれらの治療を行いながら、体力の回復を待ちます。
予防法
誤嚥性肺炎は飼い主様の工夫次第である程度予防することが可能です。
具体的には、横になったまま強制給餌を行わないようにすること、早食いを防ぐために専用の食器を使うこと、フードを少量ずつ与えることが挙げられます。また、定期的に健康診断を受けることも重要です。
さらに、巨大食道症や喉頭麻痺などの既往歴がある場合には、適切な治療を継続することが必要です。
これらの適切な食事管理や定期的な健康チェックが、誤嚥性肺炎の予防に繋がります。
まとめ
誤嚥性肺炎の多くは1週間程度で回復しますが、シニアの場合や治療が遅れた場合には重症化して命に関わることもあるため、決して油断はできません。
誤嚥性肺炎は呼吸に直接影響するため、早期発見と早期治療が治療成績に大きく影響します。もし、愛犬や愛猫の呼吸や普段の様子に違和感があれば、すぐに動物病院を受診してください。
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症例
犬と猫の血小板減少症|皮膚のあざや粘膜の点状出血が見られたら要注意
血小板減少症とは、何らかの原因で止血の役割を持つ血小板が減少してしまい、さまざまな症状が現れる病気です。
この病気は、犬と猫の両方に見られますが、猫よりも犬での発生が多いと言われています。特にプードルやシー・ズー、マルチーズ、コッカー・スパニエルなどの一部の小型犬に多く見られることが知られています。
今回は、犬と猫の血小板減少症の原因や症状、診断法、治療法などについて詳しく解説します。
血小板の役割と正常値
血小板は赤血球や白血球と同様に、血液中に含まれる重要な成分です。出血が起きたときには、血小板が速やかに出血部位に集まり、止血の役割を果たします。
そのため、血小板が正常値より減少すると、体内で出血を止めることが難しくなってしまいます。
血液検査における血小板の正常値は、犬では15〜45万/μL、猫では15〜40万/μLとされています(各検査機関によって若干の違いがあります)。
ただし、キャバリア犬の場合、健康な状態でも生まれつき血小板数が少ないことがあり、これは血小板減少症とは異なります。
血小板数が基準値を下回ったからといって、すぐに血小板減少症と診断されるわけではありません。血小板数の推移や臨床症状を総合的に考慮して診断が行われます。
また、採血にかかる時間や手技によっても血小板数は大きく変動し、1回の血液検査だけでは判断できないため、正確に把握するためには複数回の検査や継続的な観察が必要です。
原因
血小板が減少する理由は複数考えられますが、よくある原因としては以下のものが挙げられます。
・免疫介在性血小板減少症(自己の免疫が血小板を攻撃してしまう)
・過度の出血
・播種性血管内凝固症候群
・骨髄疾患
・腫瘍
・その他の原因(感染症や中毒など)
犬と猫の血小板減少症は、その原因によって免疫介在性と続発性に分けることができます。
特に多いのが犬の免疫介在性血小板減少症で、体の防御機能である免疫機能が誤って自分の血小板を攻撃してしまうことで、血小板数が減少します。
一方、続発性血小板減少症とは、骨髄疾患、腫瘍、感染症、薬剤などの影響を受けて、二次的に発生するものです。
猫の場合、ウイルス感染症の後に血小板が減少することがありますが、その因果関係やなぜウイルス感染の後に血小板が減少するのかについては、まだ不明な部分も多いです。症状
血小板減少症の代表的な症状として、皮膚のあざ (紫斑)や粘膜の点状出血などの内出血が挙げられます。これは体内で常に起こっている微小な出血を、血小板が十分に止血できないために生じるものです。
特に、おなかや脇、股など皮膚が薄い部分や、歯茎の粘膜に現れることが多いですが、毛をかき分けて観察しないと気づきにくいこともあります。
さらに、症状が進行すると、元気や食欲がなくなり、嘔吐、血尿、血便などの症状が見られることがあります。
犬と猫で大きな症状の違いはありませんが、猫の場合は症状が見つけにくいことが多いです。元気がなくなって隠れがちになったり、食欲が低下したりすることがよくあります。
診断方法
内出血の兆候などから血小板減少症が疑われる場合、まずは血液検査を行い、赤血球や白血球を含む全ての血球成分の数を確認します。
また、血球の形に異常がないかを調べるために、少量の血液を薄く広げて顕微鏡で観察する血液塗抹検査を行います。さらに、レントゲン検査やエコー検査を行い、血小板減少症を引き起こす可能性のある他の病気が隠れていないかを確認します。
骨髄検査は全身麻酔をかけて太い骨に針を刺し、骨髄成分を取り出して評価する検査ですが、体への負担が大きいため、必ずしも行うわけではありません。骨髄の病気が疑われる場合や、血小板減少症の原因が特定できない場合に行うことが多いです。
また、必要に応じて血液の凝固機能検査や感染症の検査を行うこともあります。
治療方法
血小板減少症の治療は原因によって異なります。例えば、特定の病気が原因であれば、その病気を治療することで血小板減少も改善されることが多いです。
自己免疫が原因の場合は、ステロイドなどの免疫抑制剤を使用して、免疫の過剰反応を抑えます。免疫介在性溶血性貧血(免疫が赤血球を攻撃して貧血になる病気)の併発や、症状が重い場合は、入院して集中治療や輸血が必要になることもあります。
また、再発を繰り返す場合や、ステロイドが効かない場合は、脾臓を摘出する手術を検討することもあります。脾臓摘出は、血小板を破壊する主な場所を取り除くことで、血小板数の回復を目指す方法です。
予後と管理
残念ながら、血小板減少症を予防する確実な方法はありません。
予後は症例によって異なりますが、原因となる病気の治療がうまくいったり、免疫抑制剤が効果的に作用したりすれば、良い結果が期待できます。しかし、免疫抑制剤に効果がなく、免疫介在性溶血性貧血を併発した場合には、症状が悪化して最悪の場合、命を落とすこともあります。
免疫が関与している場合には、免疫抑制剤を継続的に使用することが非常に重要です。症状が良くなったからといって、自己判断で薬を中断したり通院をやめたりすると、再発して症状がさらに悪化することが多いので、自己判断での薬の中断は避けましょう。
*血小板数の推移を確認するために、継続的な通院が必要となることをご理解ください。
また自宅では、皮膚に内出血の症状が出ていないか、怪我の原因となるものがないかを定期的に確認しましょう。さらに、緊急時に備えて、近くの夜間救急病院やかかりつけ医が夜間対応をしているかどうかを事前に調べておくことも大切です。
まとめ
血小板減少症は、治療が遅れると命にかかわる危険な病気ですが、早期に免疫抑制剤などで適切に治療すれば、その後は安定した生活を送ることができます。
皮膚や粘膜に内出血や点状出血の兆候が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
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症例
犬と猫の熱中症について|暑い夏を安全に過ごすために!
日本の夏は高温多湿で、人間だけでなく動物も熱中症になる危険があります。
熱中症は重症化すると、多臓器不全や脳へのダメージによる後遺症など、命に関わる深刻な結果を招くことがあるため、治療よりもまず熱中症を予防することが非常に重要です。
今回は、犬と猫の熱中症の症状や原因、治療法、予防法などについて詳しく解説します。
熱中症とは
熱中症とは、高温の環境にいることで体温が急激に上昇し、重要な臓器が高温にさらされることによって発症する障害の総称です。
犬や猫の平均体温は38℃程度で人間よりも高いですが、熱中症になると40〜42℃まで体温が上がることがあります。
一度茹でた卵が、冷蔵庫で冷やしても元に戻らないように、熱中症で受けた細胞のダメージも不可逆的(治すことができない)です。そのため、治療よりも予防がとても重要なのです。
犬と猫は人間のように汗をかいて体温を下げることができません。また、全身が毛で覆われているため、熱中症になりやすいと言われています。
このような特徴を持つ愛犬や愛猫のために、しっかりとした予防策を講じることが必要です。
熱中症の症状
犬や猫の熱中症の主な症状は以下の通りです。
<初期症状>
・呼吸が荒くなる(犬の場合は舌を出して、ハッハッと呼吸をしている)
・よだれを多く垂らしている
・不安げな様子が見られる
特に犬は体温が上がると、汗をかく代わりにパンティングと呼ばれる「ハッハッ」と激しい口呼吸をします。これは暑がっているサインであり、熱中症の初期症状でもあるため、十分に注意してください。
<進行した時の症状>
・下痢や嘔吐
・めまい(ふらつき)
・虚脱(ショックの一種で、血圧低下、頻脈、チアノーゼなどが見られる状態)
<重度の症状>
・意識レベルの低下(呼びかけに反応しないなど)
・全身のけいれん
夏の散歩の後や車内に放置した後にこれらの症状が見られたら、熱中症の可能性が極めて高いです。
なお、車内に冷房をかけていても熱中症は発生しますので、愛犬や愛猫を車内に残すことは絶対に避けましょう。
熱中症の原因と危険因子
熱中症の主な原因は、高温多湿の環境にあります。
体温が急激に上昇しやすく、パンティングをしても効率的に体温を下げることができないため、熱中症になってしまいます。
さらに、高温多湿に加えて、夏場の激しい運動や興奮による活動量の増加、水分不足、肥満、高齢、健康問題を抱えていることも、熱中症の危険因子となります。
特に肥満や短頭種気道症候群、気管虚脱などの問題を抱えている場合、高温環境下で呼吸状態が悪化し熱中症にかかりやすくなりますので、これらの犬や猫には特に注意が必要です。
熱中症の予防法
熱中症を予防する最も効果的な方法は、高温多湿の環境をできるだけ避け、十分な水分補給を行うことです。
夏場は早朝や夜の涼しい時間帯に散歩をさせ、直射日光を避けるようにしてください。絶対に太陽が照りつける日中に散歩をさせることは避けましょう。
特に気温が高い日は、不必要な外出や運動を避け、散歩は最低限に留めましょう。外にいる時は、なるべく日陰を歩き、こまめに休憩を取り、水分補給を行ってください。
また、愛犬や愛猫の呼吸が荒い、よだれを多く垂らしている、不安げな様子が見られる場合は、熱中症の初期症状の可能性があります。その際は、速やかに涼しい場所へ移動し、動物病院を受診しましょう。
熱中症が疑われる場合の対処法
熱中症が疑われたら、まずは速やかに屋内や日陰などの涼しい場所へ移動させましょう。これ以上体温を上げないことが何よりも大切です。
次に、濡れタオルで体を拭いたり、水を体にかけて風を当てたりして体を冷やしてください。氷嚢がある場合はタオルで包み、首や太ももの内側に挟むと効果的です。
また、水を飲める場合はしっかりと水分補給をさせることも大切です。ただし、水を飲もうとしない場合は無理に飲ませないでください。
これらの応急処置が済んだら、速やかにかかりつけの動物病院または救急病院に事前に連絡し、獣医師の指示と診察を受けてください。
飼い主様ができる準備と対策
普段から愛犬や愛猫の様子を注意深く観察し、栄養バランスの取れた食事と十分な水分補給、そしてしっかりとした休息を徹底しましょう。
熱中症対策グッズの使用(クールマット、ペット用の冷却ベスト、小型扇風機など)や、エアコンを適切に使うことを意識してください。飼い主様が我慢できる暑さでも、愛犬や愛猫には危険な暑さになることがありますので、夏場はエアコンを常につけておくことをおすすめします。
また、犬の熱中症は車内に放置されることで発生するパターンが多いため、短い時間であっても車内に置き去りにせず、運転中も常にエアコンをつけましょう。
万が一に備えて、かかりつけ動物病院の診療時間や近くの救急病院の場所を調べておき、熱中症になった際にもすぐに獣医師と連携できる体制を整えておくことが大切です。
まとめ
熱中症は重症化すると命に関わることがあり、重篤な後遺症が残る恐ろしい病気です。しかし、飼い主様の行動次第で防ぐことができるため、予防が何よりも大切です。
熱中症予防は飼い主様の大きな責任であるとご認識いただき、夏場はエアコンを適切に使用し、早朝や夜の涼しい時間帯に散歩に行くなどして、愛犬や愛猫と共に快適で安全な夏を過ごしましょう。
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症例
犬と猫の白内障と核硬化症の違いについて|どちらも目が白く濁る病気
白内障は、水晶体のタンパク質が遺伝的な要因や後天的な原因(外傷性、代謝性、加齢性、続発性)で元に戻せないほど変性し、目が白く濁る疾患です。
核硬化症は、水晶体の中心にある水晶体核が加齢に伴って硬くなり、青みを帯びて白く見える状態です。核硬化症は白内障と見た目が似ていますが、これは加齢による変化であり病気ではありません。
今回は、犬と猫の白内障と核硬化症の違いについて詳しく解説します。
白内障について
正常な水晶体は透明で、目に入った光を屈折させてピントを調節し、網膜上に像を結ぶカメラのレンズのような機能を持っています。
水晶体のタンパク質が加齢、遺伝、糖尿病などの基礎疾患による影響で不可逆的に変性し、白濁化します。
白内障の初期症状としては、以下が挙げられます。
・急に段差や階段を踏み外すようになる
・光に敏感になる
・前足で目を擦るような行動が増える
・暗い場所での行動に躊躇するようになる
白内障は文字通り目が白く濁りますが、初期段階では水晶体の一部のみが白濁化するため、視覚への影響はほとんどなく、痛みや不快感もありません。
しかし、進行すると「成熟白内障」や「過熱白内障」の段階に移行します。
・成熟白内障:この段階では、水晶体のほぼ全体が白く濁り、正常に見ることが困難になります。
・過熟白内障:さらに進行した段階で、水晶体が融解し、脱臼することもあります。この状態では、水晶体タンパク質が溶け出してぶどう膜炎を引き起こすことがあり、痛みを伴うこともあります。
白内障の進行に伴い、いくつかの続発性疾患のリスクが高まります。
特に注意すべきなのは、緑内障、ぶどう膜炎、水晶体脱臼です。緑内障は眼圧の上昇により視神経が障害される深刻な疾患で、白内障の進行や手術後に発症するリスクがあります。ぶどう膜炎は先述の通り過熟白内障で起こりやすく、水晶体脱臼も白内障の進行に伴って発生する可能性があります。これらの続発性疾患は早期発見と適切な治療が重要です。
白内障の診断には、まず身体検査や対光反射、威嚇瞬目反応、綿球落下試験などの神経学的検査を行い、視覚の状態を確認します。その後、散瞳剤を使用して瞳孔を広げ、スリットランプを用いて水晶体の白濁の度合いを評価します。
治療方法としては、以下のものがあります。
・薬物療法:ピレノキシン点眼薬を使用します。これは初期段階での進行を遅らせるために有効です。
・外科治療:角膜を切開して超音波乳化吸引装置を用いて白く濁った水晶体を吸引し、水晶体嚢内に人工の犬用眼内レンズを挿入します。
基本的に白濁化した水晶体を元の状態に戻すことはできないため、白内障が成熟白内障や過熱白内障まで進行し視力を失った場合は、外科手術が唯一の治療法となります。
※場合によっては外科手術が非適応になるケースもあります
核硬化症について
核硬化症とは、水晶体の中心にある水晶体核が加齢に伴って変性し硬くなり、青みを帯びて白く見える状態です。名前に「症」という漢字が含まれているため、病気と思われがちですが、これは加齢による自然な変化であり、厳密には病気ではありません。
白内障とは異なり、核硬化症では水晶体の透過性は低下しないため、視力を失うことはありません。そのため、主な症状は飼い主様が、目が白いことに気が付く程度です。
核硬化症の診断は、見た目だけでは白内障と核硬化症の区別が難しいため、スリットランプ検査が必要です。スリットランプ検査とは、スリット光という細い光で眼球の各部を照らし、それを顕微鏡で拡大して観察する検査です。
核硬化症で白くなった水晶体核を元に戻す治療法はありませんが、そもそも加齢性の変化であるため治療は必要ありません。
白内障と核硬化症の違い
白内障と核硬化症は、どちらも目が白く見える症状を引き起こしますが、その原因と影響は大きく異なります。
白内障 核硬化症 原因 ・水晶体タンパク質の不可逆的な変性と混濁により発生 ・加齢に伴う水晶体核の変性により発生 症状 ・進行すると水晶体の大部分が白濁し、視覚を失うことがある ・水晶体タンパク質の溶解によりぶどう膜炎を引き起こすことがある
・加齢に伴って水晶体核が白濁するが、視覚を失うことはない ・ぶどう膜炎などの合併症は起こらない
診断方法 ・身体検査と神経学的検査で視覚確認 ・スリットランプ検査で水晶体の光透過性や境界を確認
治療方法 ・点眼薬や外科治療を行う ・治療はせず経過観察が主な対応 予後 ・適切な治療を受ければ良好 ・放置すると視力喪失や重度の組織変性を引き起こし、最終的には眼球癆に至る可能性がある
・非常に良好で、特別な治療は不要、経過観察で問題なし 予防と早期発見の重要性
白内障と核硬化症を飼い主様が判断することは難しいため、動物病院での眼科検診を含む全身的な健康診断を定期的に受けることが何よりも大切です。
白内障は初期に発見し治療を開始できれば、点眼薬や抗酸化作用のあるサプリメントの使用により、進行を遅らせる可能性があります。
※ただし、効果には個体差があり、全ての症例で効果が見られるわけではありません。
普段から愛犬や愛猫の目の状態を注意深く観察し、目が少しでも白く濁っていると感じたり、目を引っ掻いたり壁や床に擦り付ける様子が見られれば、すぐに獣医師に相談してください。
まとめ
白内障は加齢や遺伝的な要因、糖尿病などによって水晶体が白く濁る病気です。
一方、核硬化症は水晶体核が加齢に伴い変性する自然な加齢性変化であり、厳密には病気ではありません。これが最も重要なポイントです。
白内障は放置すると失明の恐れがあるため、動物病院で適切な治療を早期に受けることが大切です。
眼の病気は軽視されがちですが、眼は生活の質に大きく影響する非常に大切な器官なので、普段から定期的に健康診断を受け、愛犬や愛猫の眼の健康を維持しましょう。
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症例
犬の会陰ヘルニアについて|お尻の周りが腫れている?
「ヘルニア」と聞くと、椎間板ヘルニアをイメージする方が多いと思いますが、「ヘルニア」という言葉自体は臓器が本来の正しい場所から飛び出ている状態を指します。
会陰ヘルニアは、会陰部と呼ばれる肛門周囲の筋肉が萎縮して隙間ができ、その隙間に直腸や膀胱、前立腺などの臓器が飛び出してしまう病気です。
今回は犬の会陰ヘルニアの原因や症状、診断法、治療法などについて詳しく解説します。
原因
会陰ヘルニアは、肛門周囲の筋肉の構造異常によって発生します。正常な状態では、これらの筋肉は密接に連携して肛門の構造を支えていますが、何らかの理由でこれらの筋肉が萎縮し、縮んで薄くなると、筋肉同士の間に隙間が生じます。
この隙間から臓器や脂肪が突出し、肛門の周囲が膨らむことで会陰ヘルニアが形成されます。
会陰ヘルニアの直接的な原因はまだ明確には解明されていませんが、未去勢の中高齢のオス犬に多く見られることから、男性ホルモンが発症に関与していると考えられています。
特にミニチュアダックスフンド、ポメラニアン、コーギーなどの小型犬が好発犬種とされています。
また、慢性的な咳や吠え癖のある犬は腹圧が高まりやすく、お尻に力を入れやすい状態を引き起こすため、会陰ヘルニアの発症リスクが高くなるとされています。
症状
一般的にヘルニア孔から腸管が飛び出すことが多くありますが、飛び出す臓器によって症状は様々です。
<腸管が飛び出した場合の症状>
・便秘やしぶり(排便困難):腸管の一部が飛び出してしまうと、腸の動きが妨げられ、便秘や排便時の困難が生じます。
・肛門周囲の膨らみ:ヘルニア孔から腸管が飛び出し、お尻が膨らんで見えることがあります。これにより、しっぽや肛門の位置が異常になることもあります。
・直腸憩室の形成:ヘルニアが進行すると、直腸の一部が袋状に拡張し、そこに便が溜まるようになります。
・直腸破裂:溜まった便が原因で直腸が破裂すると、便に含まれる細菌が血流に入り、敗血症を引き起こし、最悪の場合死に至る危険性があります。
<膀胱が飛び出した場合の症状>
・排尿障害:膀胱が部分的にヘルニア孔から突出すると、尿の排出が困難になります。これが続くと膀胱の機能が低下し、排尿時の痛みや不快感が生じることがあります。
・腎不全:排尿障害が長引くと尿が膀胱に逆流し、腎臓に負担をかけることがあります。これが原因で腎不全に進行することもあります。
尿が出ないなどの症状がある場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
診断方法
会陰ヘルニアはその特徴的な見た目からある程度視診や触診で診断することが可能です。
一方で、身体検査だけでどの臓器が飛び出しているか正確に判断することはできないので、レントゲン検査やエコー検査を実施します。
膀胱や腸管が飛び出している場合は、それぞれ腎不全や敗血症になっていないか確認するために血液検査を行うこともあります。
治療方法
会陰ヘルニアの治療においては、根本的な解決を目指す場合、外科手術が最も効果的な方法とされています。
内科的治療は溜まった便をかき出したり、便を柔らかくする薬を用いたりすることがありますが、病気自体を治すわけではないため、以下の手法が一般的に採用されます。
・外科手術
手術では、飛び出した臓器を元の正しい位置に戻し、筋肉の隙間を塞ぎます。
・去勢手術
会陰ヘルニアの発症に男性ホルモンが影響している可能性があるため、未去勢のオス犬に対しては、再発防止のためにヘルニアの手術と同時に去勢手術を行います。
会陰ヘルニアは、研究ごとに数値に幅はあるものの、約30%のケースで術後に再発することが報告されています。
また、会陰ヘルニアは両側性疾患であるため、一方の筋肉を修復した後、もう一方の筋肉が緩むことで新たなヘルニアが形成されることがあります。
再発を防ぐため、当院ではヘルニア孔の閉鎖だけでなく、精管と結腸の腹壁固定を含む手術を必要に応じて実施しています。
予防法やご家庭での注意点
去勢手術を早期に行うことは、会陰ヘルニアや前立腺肥大などの病気の予防につながります。
また、慢性的な咳や吠え癖があると腹圧が高まり、会陰ヘルニアを発症することがあるため、これらの症状が見られる場合は早めに獣医師にご相談ください。
まとめ
会陰ヘルニアは、会陰部と呼ばれる肛門周囲の筋肉が萎縮して隙間ができ、その隙間に直腸や膀胱、前立腺などの臓器が飛び出してしまう病気です。男性ホルモンの関与が疑われており、早期の去勢手術が予防に効果的だと考えられています。
外科手術が基本となりますが、再発の可能性もありますので、手術後は愛犬の排便や排尿の様子をこまめに観察し、適切なケアを心がけましょう。
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症例
犬と猫の歯周病について|ご自宅での歯磨きが大切
歯周病は犬や猫の疾患の中でも特に頻繁に見られる疾患で、実際に犬では約80%が、猫では約70%が3歳までに歯周病を発症しています。
歯周病が進行すると心臓や脳、腎臓など全身の臓器に悪影響を及ぼすため、歯周病予防は極めて重要です。
今回は犬と猫の歯周病の原因や症状、診断法、治療法などについて詳しく解説します。
原因
口腔内には数多くの細菌が生息しており、特に歯周病の原因となるのは歯周病原性細菌です。
歯磨きが不十分だと、食べかすが歯の表面に付着し、その中で細菌が繁殖して歯垢となります。この繁殖した歯周病原性細菌が分泌する酵素により、歯周組織は徐々に破壊されていきます。
歯周病の発症には、細菌因子だけでなく、宿主因子(犬や猫の免疫機能など)や環境因子(栄養状態やストレスなど)も関わっており、これらが互いに影響し合って病気が進行します。
歯が痛くなると歯磨きを余計に嫌がり、歯周病の悪化へとつながるため、日頃から歯磨きを行い、歯周病の発症を予防することが大切です。
症状
歯周病は大きく分けて、歯肉炎と歯周炎の2つのステージに分類されます。
歯肉炎は、歯周病の初期段階であり、主に歯肉に炎症が生じた状態を指します。
代表的な歯肉炎の症状として、以下が挙げられます。
・歯肉の炎症 (赤みや腫れ、痛み)
・歯肉から出血しやすくなる
・口臭がする
多くの飼い主様は、この初期の段階では症状に気付かないことがありますが、放置すると病状は確実に進行し、歯肉炎はより深刻な歯周炎へと進展します。
歯周炎は炎症が歯肉だけでなく、歯槽骨やその周囲の組織にも及びます。
代表的な歯周炎の症状は、以下の通りです。
・歯肉の強い腫れ
・歯肉から黄色や白色の膿が出る
・強い口臭がする
・口の痛みによる食欲不振
・歯のぐらつきや抜け落ち
・口周辺の顔が腫れる (歯周炎による炎症が顔にまで及ぶため)
重度の歯周病では、歯槽骨という歯の土台となる骨が溶け、骨髄炎や顎骨の骨折といったさらに深刻な問題へと進行することがあります。
診断方法
歯周病は歯の表面の汚れに関するものだけではなく、歯とその周囲の組織全体を巻き込む病気です。
そのため、診断には歯肉や歯根膜、さらには歯周ポケットの深さなど、複数の要素を総合的に評価する必要があります。
肉眼で見ることができるのは歯の表面と歯肉の状態に限られるため、より正確な診断を行うためには全身麻酔下での詳細な口腔検査が必要となります。
口腔検査では、主に以下の項目を実施・確認します。
・歯垢と歯石の付着状態
・歯肉の炎症の程度
・歯のぐらつき程度
・歯周組織の破壊程度
・歯周ポケットの深さ
・口腔内X線検査
外見上は歯が綺麗に見えることもありますが、実際には歯周組織の状態、歯のぐらつき具合、歯周ポケットの深さなどを確認した結果、抜歯せざるをえないケースもあります。
治療方法
歯周病治療の基本は全身麻酔下での超音波スケーリングによって付着した歯垢・歯石を除去することと、ハンドスケーリングによって歯周ポケットの汚れ(歯垢と歯石)を除去することです。
無麻酔でのスケーリングは表面的な汚れしか取ることができない上に、動物に強い痛みと恐怖感を与えるため推奨されていません。
基本的には歯を温存するように治療を行いますが、歯槽骨に炎症が及び、歯がぐらついている場合は抜歯の必要があります。
スケーリングの手順は、以下の通りです。
①全身麻酔をかける前に、血液検査や身体検査を行います。
②体調に問題がなければ、全身麻酔をかけます。
③口腔内のレントゲン検査を行った上で歯周プローブを用いて、歯槽骨の吸収状態を確認し、抜歯が必要な歯を特定します。
④超音波スケーラーという特殊な機械を用いて、歯垢や歯石を除去します。
⑤必要に応じて抜歯を行います。
⑥残った歯に対して、キュレットスケーラーという機械を用いてルートプレーニングを行い、歯周ポケットの汚れを除去します。
⑦最後に、歯の表面を滑らかにして歯垢が再び付着しづらくなるために、歯面研磨(ポリッシング)を行います。
スケーリング後は飼い主様への歯磨き指導を行い、ご自宅でも適切な口腔ケアを行っていただきます。
また、インターベリーという薬を使用することで、免疫担当細胞を活性化し、歯周病原細菌を減らして歯肉炎を改善します。
予防法やご家庭での注意点
歯周病を予防するためには、家庭での日常的な歯磨きが非常に重要です。
特に、幼い頃から歯磨きの習慣をつけることで、愛犬や愛猫がデンタルケアに慣れ、日々のお手入れが格段にやりやすくなります。
もし歯磨きをどうしても嫌がる場合は、まずは口や歯に触られることに慣れさせることから始めましょう。
口や歯に触らせてくれたら、大好きなおやつを少しあげて思いっきり褒めることで、ポジティブな印象を持たせることができます。
当院では歯磨きのやり方についてのパンフレットや歯ブラシのご用意もありますのでお気軽にご相談ください。
また、ドライフードやデンタルガムを使用することも、歯に付着した歯垢を自然に落とすのに役立ちます。これらの製品は噛むことで歯垢が落ちやすくなるため、獣医師と相談の上、愛犬や愛猫に適したドライフードへの切り替えやデンタルガムの導入を検討してみるのもおすすめです。
まとめ
歯周病は犬と猫で一般的な疾患ですが、正しい口腔ケアによって予防することが可能です。
毎日の歯磨きを習慣化し、定期的な健康診断を受けることで、口腔環境を常に清潔に保つことが重要です。これは、歯周病の予防だけでなく、全身の健康状態を維持することにもつながります。
歯磨きに関してご不安なことがありましたら、当院にご相談ください。
また、当院では2024年6月1日から8月31日までスケーリング(歯石除去)キャンペーンを実施いたします。
通常の費用より20%割引でスケーリングを受けることが可能ですので、この機会にぜひご検討ください。
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症例
犬の僧帽弁閉鎖不全症について|愛犬が咳や息切れをしていたら要注意
僧帽弁とは心臓の左心房と左心室を隔てる弁で、心臓内で血液の逆流を防ぐ役割を担っています。
しかし、何らかの原因で僧帽弁が厚く変形したり、僧帽弁を支える組織に異常が起きたりすると、血液が逆流してしまい、この状態を「僧帽弁閉鎖不全」と呼びます。
今回は犬の僧帽弁閉鎖不全症の原因や症状、診断法、治療法などについて詳しく解説します。
原因
犬の僧帽弁閉鎖不全症は、加齢などで僧帽弁に変性が起こり、その動きが鈍くなることが原因と言われています。
僧帽弁閉鎖不全症の全ての原因は完全には解明されていないものの、チワワ、プードル、ポメラニアン、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどの小型犬種で頻繁に発症することから、遺伝的な要因が関与している可能性が高いとも考えられています。
症状
僧帽弁が正常に機能しなくなり心臓内で血液が逆流すると、左心房は肺から送り込まれる血液と逆流してきた血液の両方を受け入れることになり、過剰な血液によって容量オーバーの状態となります。
この結果、左心房は負荷により拡大します。
初期段階では、心臓は心拍数を増やすことで拡大した左心房の負担に対抗し、心拍出量の低下を補おうとしますが、病状が進むと心臓はこの負荷に耐えられなくなり、心不全を引き起こします。
アメリカ獣医内科学会 (ACVIM)は、犬の僧帽弁閉鎖不全症の進行具合を以下の5つの段階に分類しています。
・Stage A:現時点で心臓に異常はないが、今後僧帽弁閉鎖不全症になるリスクの高い犬種。
・Stage B1:心雑音、僧帽弁の変性、僧帽弁逆流が認められるが、心拡大を認めないもの。
・Stage B2:心雑音、僧帽弁の変性、僧帽弁逆流が認められ、心拡大を認めるもの。
・Stage C:咳や息切れなどの臨床症状があり、鬱血性心不全徴候(肺水腫)があるもの。
・Stage D:標準的な治療に反応しない難治性心不全を示すもの。
ステージA、B1、B2の初期段階では咳や息切れといった特徴的な症状を示さず、ほとんどが無症状です。
しかし病気が進行すると、拡大した心臓が気管を下から押し上げるため、咳や息切れといった最初の症状が見られます。
病状がさらに進行すると、息苦しさ、運動不耐性(少しの運動で疲れやすくなる)元気消失、肺水腫による呼吸困難、失神といった症状が現れます。
診断方法
僧帽弁閉鎖不全症の診断は聴診、レントゲン検査、超音波検査など、複数の方法で行われます。
聴診で心音の確認をする際に、僧帽弁の機能が低下して血液の逆流が起きると特徴的な心雑音が聴取されます。
レントゲン検査では心臓の形や大きさ、さらには肺水腫の有無などを確認します。
さらに、超音波検査では僧帽弁の動き、僧帽弁の厚さ、血液逆流の有無など、より詳細な情報をリアルタイムで確認します。
これらの検査結果を総合的に判断し、症状の程度や進行具合に応じた診断とステージ分類を行います。
当院では心雑音が確認された場合、心臓のどの部分から雑音が出ているのかを特定し、定期的に診断を受けてもらうようお勧めしております。
また、循環器専門の獣医師が定期的に診察を行っているため、専門的な診療が可能なのに加えて、院内でも定期的にセミナーを実施し、病院全体で循環器診療の方針を定めております。
そのため、循環器専門医が不在のタイミングでも、他の獣医師が診察を行える体制を整えており、循環器疾患でお困りの場合はいつでもご相談いただけます。
治療方法
僧帽弁閉鎖不全症の治療は病状の進行度に応じて異なり、一般的にはStage B2の段階で治療を開始します。各ステージでのアプローチは以下の通りです。
・Stage A:現時点で心臓に異常はないため、治療の必要はありません。1年に1回は心臓の定期検査を受けましょう。
・Stage B1:薬による治療は行わず、経過観察を行います。定期的にレントゲン検査や超音波検査を実施してステージが進行していないか確認します。
・Stage B2:ピモベンダンという強心薬を用いて内科的治療を開始します。Stage B2からピモベンダンの内服を開始することで、肺水腫を発症するまでの期間を遅らせることができると報告されています。
・Stage C:強心薬に加えて、肺水腫治療のために利尿剤を併用します。肺水腫による呼吸困難が見られる場合は酸素投与による呼吸管理も実施します。
・Stage D:高用量の利尿剤、ピモベンダン、降圧剤などを用いてQOLの改善を狙いますが、十分な治療効果が得られないことがほとんどです。緩和ケアが治療選択肢として考慮されることもあります。
これらの内科治療は症状の進行を遅らせるためのものであり、完治させる治療ではありません。
腱索再建や弁輪縫縮などの外科手術により、僧帽弁を再建すれば完治できる可能性がありますが、外科手術にはリスクが伴い、適応症例も限られています。外科手術を検討する場合は、まず循環器の専門医と相談することが大切です。
予防法やご家庭での注意点
僧帽弁閉鎖不全症に対する有効な予防法は確立されていないため、心臓の状態を早期に把握して病気の進行を遅らせるためには、定期的な健康診断が非常に重要です。
また、肥満は心臓に負担をかけるため、適切な食事と適量の運動によって太らせないことを心がけてください。特に好発犬種や中高齢の犬は僧帽弁閉鎖不全症のリスクが高いため注意しましょう。
まとめ
僧帽弁閉鎖不全症は犬における循環器疾患の中で特に一般的なもので、僧帽弁の機能障害により心臓内で血液が逆流する状態が生じます。この病状を早期に発見し治療を始めることで、病気の進行を遅らせることが可能です。それにより、愛犬の健康寿命を伸ばすことができます。
ご家庭では、日頃から愛犬の呼吸の状態や普段の様子を観察して、少しでも異変を感じたら獣医師にご相談ください。
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症例
犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)について
副腎皮質機能亢進症、別名クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンが過剰に産生される疾患です。
副腎皮質ホルモンは、肝臓での糖新生や筋肉でのたんぱく質代謝を促進し、抗炎症・免疫抑制などの作用があり、生命を維持するために重要な役割を果たしています。
そして、体内で副腎皮質ホルモン、特にコルチゾールのレベルが異常に高くなることによって様々な症状が現れます。
今回は、犬の副腎皮質機能亢進症の原因や症状、診断方法、治療法などについて詳しく解説します。
原因
副腎からのコルチゾール分泌量は、下垂体という脳の一部の器官から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)によって調節されています。しかし、調節機構が異常をきたすと、過剰なコルチゾール分泌を引き起こします。
副腎皮質機能亢進症の原因は大きく3種類に分けられます。
・脳の下垂体腫瘍によるもの(下垂体性副腎皮質機能亢進症)
下垂体に発生した腫瘍がACTHを過剰に分泌することで、副腎が過剰にコルチゾールを産生します。
・副腎の腫瘍によるもの(副腎性副腎皮質機能亢進症)
副腎自体に発生した腫瘍が直接的にコルチゾールを過剰に産生します。
・ステロイド製剤によるもの(医原性副腎皮質機能亢進症)
コルチゾールと同様の働きをするステロイド薬(プレドニゾロンなど)を長期的に服用することで生じます。
副腎皮質機能亢進症は特に中齢から高齢の犬に多く見られる疾患であり、早期発見と適切な治療が症状の管理と健康維持に非常に重要です。
症状
副腎皮質機能亢進症の主な症状は以下の通りです。
・多飲多尿
・お腹の周りが膨らむ(お腹の筋肉が痩せて脂肪がつきやすくなり、肝臓も肥大するため)
・皮膚や毛が薄くなる
・抜け毛が増える
・皮膚の石灰沈着
・傷が治りにくくなる
・呼吸が荒くなる
特に下垂体性副腎皮質機能亢進症では、下垂体の腫瘍が成長して中枢神経に影響を及ぼすことがあり、その結果、神経症状が現れる場合があります。
一方で、副腎性副腎皮質機能亢進症では、副腎の腫瘍が大きくなり過ぎると周囲の太い動脈を巻き込む危険があり、これが腹腔内出血や突然死のリスクを高めることがあります。
診断方法
診断は、問診・身体検査・血液検査・尿検査・超音波検査などを用いて総合的に行います。
・問診:多飲多尿など、症状の有無を確認します。
・身体検査:お腹の周りの膨らみ具合や皮膚、毛並みの状態などを確認します。
・血液検査:ACTH刺激試験、デキサメタゾン抑制試験などで血中のホルモン濃度を測定します。
・尿検査:尿比重や尿中コルチゾール/クレアチニン比などを測定します。
・超音波検査:副腎の形や大きさを確認します。
下垂体性を疑う場合は脳のCT検査やMRI検査を、副腎性を疑う場合は腫瘍の浸潤具合の評価や手術計画を立てるために追加で腹部のCT検査やMRI検査を行うことがあります。
治療方法
治療は種類によって異なります。
・下垂体性副腎皮質機能亢進症の場合
外科手術、内科治療、放射線治療などが選択肢としてあげられますが、当院では主に内科治療を中心としています。
具体的には、副腎皮質ホルモン合成阻害剤であるトリロスタンを使用し、症状の改善を図ります。
・副腎性副腎皮質機能亢進症の場合
腫瘍の転移が見られない場合は、腫瘍化した副腎を取り除く外科手術が最も効果的な治療方法とされています。下垂体性の治療と同様、トリロスタンを用いて内科治療も同時に行います。
治療方針に関しては、飼い主様とご相談のうえ決定していきます。
予防法とご家庭での注意点
医原性の場合を除き、副腎皮質機能亢進症に有効な予防法は存在しないため、病気の早期発見と早期治療が非常に重要です。
この病気は肝臓、心臓、腎臓など、様々な臓器に影響を及ぼす可能性が高いため、未治療のまま放置すると愛犬の健康状態を損なうことに繋がります。
まとめ
副腎皮質機能亢進症は、副腎からコルチゾールが過剰に産生される疾患です。
この疾患の原因は、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、医原性の3つに分けられ、多飲多尿・お腹の周りの膨らみ・皮膚や毛が薄くなるなど様々な症状が現れます。
有効な予防法はないため、かかりつけの動物病院で定期的に健康診断を受診し、病気の早期発見・早期治療を心がけましょう。
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